日本食塩製造事件(最二小判昭和50.4.25民集29巻4号456頁)
審判:最高裁判所
裁判所名:最高裁判所第二小法廷
事件番号:昭和43年(オ)499号
裁判年月日:昭和50年4月25日
裁判区分:判決
1.事件の概要
XはY社の従業員で組織するA組合の執行役員であった。昭和38年よりY社とA組合との間で紛争が生じたが、昭和40年に労働委員会において和解が成立した。
和解の条件は、和解成立の日にXが退職することであったが、XはA組合の説得によっても退職しなかったため、A組合はXを離籍処分とした。Y社は、Aとの間で締結した「会社は組合を脱退しまたは除名された者を解雇する」とのユニオン・ショップ協定(使用者に採用された後、労働組合に加入しない者、労働組合から脱退しもしくは除名された者の解雇を使用者に義務づける協定に基づいて、Xを解雇した。Xは解雇の無効を求めて提訴し、地裁(横浜地判昭和42.3.1民集29巻4号468頁)は請求を認容したが、高裁(東京高判昭和43.2.23判夕222号200頁)が棄却した。そこで、Xが最高裁に上告したのが本件である。
2.判決の要旨
使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になると解するのが相当である。・・(中略)・・労働組合から除名された労働者に対しユニオン・ショップ協定に基づく労働組合に対する義務の履行として使用者が行なう解雇は、ユニオン・ショップ協定によって使用者に解雇義務が発生している場合にかぎり、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当なものとして是認することができるのであり、右除名が無効な場合には、・・(中略)・・使用者に解雇義務が生じないから、かかる場合には、客観的に合理的な理由を欠き社会的に相当なものとして是認することはできず、他に解雇の合理性を裏づける特段の事由がないかぎり、解雇権の濫用として無効であるといわなければならない。
3.解説
現在では、労働契約法16条により実体法化されている「解雇権濫用法理」が、初めて最高裁判所で用いられた判例。
労働契約法第16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
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