社会保険労務士川口正倫のブログ

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【整理解雇】ナショナル・ウエンストミンスター銀行(三次仮処分)事件 東京地決平成12.1.21労判782号23頁

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ナショナル・ウエンストミンスター銀行(三次仮処分)事件 東京地決平成12.1.21労判782号23頁

参照法条 : 労働基準法89条1項3号、民法1条3項
裁判年月日 : 2000年1月21日
裁判所名 : 東京地
裁判形式 : 決定
事件番号 : 平成11年 (ヨ) 21217 

1.事件の概要

 Xは、昭和58年に、外資系銀行のY銀行に入行し、貿易業務を担当していた。平成9年当時、Y銀行は経営方針転換により、貿易業務から撤退し、その統括部門であるGTBS(グローバル・トレード・バンキング・サービス)部門の閉鎖を決定した。同部門の閉鎖により、Xのポジションが消滅するが、Y銀行は、Xを配転させ得るポジションは存在しないとして、Xに対し一定額の金銭の支給及び再就職活動の支援を内容とする退職条件を提示し、雇用契約の合意解約を申し入れた。しかし、Xはこれを拒否し、Y銀行での雇用の継続を望んだため、Y銀行は他部署のクラークのポジションを提案したが、Xはこれも受け入れなかった。そこで、Y銀行はXに対し、普通解雇する旨の意思表示を行なった。これに対し、Xが地位保全仮処分を申請したところ、第一次申請・第二次申請が認容され、第三次申請に至ったのが本件である。

2.判決の概要

 いわゆる整理解雇の四要件は、整理解雇の範疇に属すると考えられる解雇について解雇権の濫用に当たるかどうかを判断する際の考慮要素を類型化したものであって、各々の要件が存在しなければ法律効果が発生しないという意味での法律要件ではなく、解雇権濫用の判断は、本来事案ごとの個別具体的な事情を総合考慮して行うほかないものである。Y銀行としては、Xとの雇用契約を従前の賃金水準を維持したまま他のポジションに配転させることができなかったのであるから、Xとの雇用契約を継続することは、現実的には、不可能であったということができ、従って、Xとの雇用契約を解消することには、合理的な理由があるものと認められる。Xとの雇用契約を解消することには合理的な理由があり、Y銀行は、Xの当面の生活維持及び再就職の便宜のために相応の配慮を行い、かつ雇用契約を解消せざるを得ない理由についてもXに繰り返し説明するなど、誠意をもった対応をしていること等の諸事情を併せ考慮すれば、未だ本件解雇をもって解雇権の濫用であるとはいえない。

3.解説

 本判例は、整理解雇の4つの基準を「四要件」ではなく、「四要素」と位置づけた判決である。
四要件説:4つの基準の全てを満たさないと当該解雇は解雇権の濫用となる。
四要素説:4つの基準に当てはめて、総合考慮により解雇権の濫用となるか判断する。

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