社会保険労務士川口正倫のブログ

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【雇止め】安川電機八幡工場(パート解雇)事件 福岡高決平成14.9.18労判840号52頁

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安川電機八幡工場(パート解雇)事件 福岡高決平成14.9.18労判840号52頁

 

参照法条 : 労働基準法2章、民法628条、民法1条3項
裁判年月日 : 2002年9月18日
裁判所名 : 福岡高
裁判形式 : 決定
事件番号 : 平成14年 (ラ) 124

1.事件の概要

 X1、X2はY社に雇用契約3か月とするパートタイマーとして雇用され、それぞれ14年間、17年間、同様の労働契約が更新されてきた。パートタイマーの就業規則9条には、「事業の縮小その他やむを得ない事由が発生したとき」、「契約期間中といえども解雇する」旨の定めがあった。ところが、Y社は、世界的半導体不況を理由に、雇用関係中にX1、X2を解雇したので、地位保全の仮処分を申し立てたところ、地裁で却下されたので、抗告したのが本件である。

 

2.判決の概要

 期間の定めのある労働契約の場合は、民法628条により、原則として解除はできず、やむことを得ない事由がある時に限り、期間内解除(ただし、労働基準法20、21条による予告が必要)ができるに止まる。したがって、就業規則9条の解雇事由の解釈にあたっても、当該解雇が、3か月の雇用期間の中途でなされなければならないほどの、やむを得ない事由の発生が必要であるというべきである。ところで、・・(中略)・・人員整理の必要性があったことは認められるが、本件解雇により解雇されたパートタイマー従業員は、合計31名であり、残りの雇用期間は約2か月、抗告人らの平均給与は月額12万円から14万5千円程度であったことや相手方の企業規模などからすると、どんなに、相手方の業績悪化が急激であったとしても、労働契約締結からわずか5日後に、3か月間の契約期間の終了を待つことなく解雇しなければならないほどの予想外かつやむをえない事態が発生したと認めるに足りる疎明資料はない。相手方の立場からすれば、抗告人らとの間の労働契約を更新したこと自体が判断の誤りであったのかもしれないが、労働契約も契約である以上、相手方は、抗告人らとの間で期間3か月の労働契約を更新したことについての責任を負わなければならないというべきである。したがって、本件解雇は無効であるというべきである。

 

3.解説

 労働契約に期間の定めがある場合、労使それぞれがその期間に拘束されるのが原則である。しかし、民法628条では、「やむを得ない事由」がある場合に即時解約を認めている。そして、労働契約法17条では、特に使用者側から中途解約をする場合について、「やむを得ない事由」がある場合でなければ解雇することができない旨を定めている。
本判決は、下級審ながら「やむを得ない事由」の意味を、「期間を定めているにも関わらず中途で解約しなければならない程のやむを得ない事由」とし、通常よりも解雇できる条件を厳しくするものと解している。

民法第628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。 

 

労働契約法17条
使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
2 使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。

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