社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



【雇止め】近畿コカ・コーラボトリング事件 大阪地判平成17.1.13労判893号150頁

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近畿コカ・コーラボトリング事件 大阪地判平成17.1.13労判893号150頁

1.事件の概要

 Xら3名は、清涼飲料水の製造販売などを営むY社にパートとして平成元年ないし平成5年に雇用され、自動販売機のメンテナンスなどの業務に従事してきた。XらとY社間の当初の雇用契約における期間の定めの有無は不明確であったが、平成7年に1年の雇用期間の定めのあるパートナー社員労働契約書が作成された。そして、その中に契約期間を更新しないとする旨の規定はなく、その後、厳格な更新手続もなく更新が繰り返された。ところが、平成14年1月以降、経営構造改革の一環として、Xらの従事する業務を子会社に委託するという事情の変化の下で、平成14年1月1日から12月末までのパートナー労働契約書では、「本契約期間については、更新しないものとする。」との条項(以下、「不更新条項」という)が付加されており、Xらは、この契約書に署名押印するとともに、確認印も押印した。そして、Y社は、Xらに、平成14年12月末をもって雇止めする旨の意思表示をしたので、従業員としての地位にあることの確認などを求めて訴えを提起した。

 

2.判決の概要

 XらとY社との間においては、平成14年12月末日をもって本件各雇用契約を終了させる旨の合意が成立していたというべきであり、これを覆すに足りる証拠はない。
なお、Xらは、1年後に退職する旨の明確かつ客観的な意思表示がないなどと主張するが、Y社は、前記のとおり、事前に説明会を開催して説明した上で、不更新条項の記載のある本件各契約書をXらに交付し、Xらはこれに署名押印した上、確認印も押印しているのであるから、その意思表示は明確かつ客観的なものというべきである
また、Xらは、不更新条項について、公序良俗に反して無効である旨を主張するが、これを無効とする根拠はなく、Xらの主張を採用することはできない。
よって、本件各雇用契約は、これを終了させる旨のY社とXらの間の合意に基づき、平成14年12月末日をもって終了したというべきである。
また、Xらがかかる合意をしたことにかんがみれば、本件各契約書の作成後については、本件雇用契約について、その継続が期待されていたということはできないから、解雇に関する法理を類推適用する余地はなく、この点からも、本件各雇用契約は、期間満了により、平成14年12月末日をもって終了したというべきである。

 

3.解説

 有期契約を締結する場合、あらかじめ契約の更新をしない合意をすることは可能であるが、契約の当初ではなく、何回も更新をしてきた後に改めて更新しない旨の条項を含む有期契約を締結し、期間の満了を理由に雇止めをする場合についても、同様に雇止めを認めたのが本件判決である。
同様に扱った点が疑問であるが、不更新条項について事前に説明会を開催したこと、Xらが契約書に署名・押印していること等から,労働者の真意に基づいた不更新条項への合意の存在を認め、このような合意をしていることから雇用継続への期待も否定されている。

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