社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



職域接種に関するQ&A(令和3年7月8日版)

職域接種に関するQ&A(令和3年7月8日版)

https://www.mhlw.go.jp/content/000796969.pdf

1.対象

Q1-1.職域接種の対象を教えてください。(6月10日更新)
A. 企業であれば自社の従業員の他に、関連企業など、大学であれば学生なども対象にしていただいてかまいません。

Q1-2.日本国内に居住し、住民基本台帳に登録されている外国人労働者は、接種の対象になりますか?(6月10日更新)
A.新型コロナワクチンの接種は、住民基本台帳に記録されている方が対象となります。

Q1-3.接種券が届いていない人も接種できますか?(6月10日更新)
A. 接種券を受け取っていない方も職域接種の対象です。接種券が届いていない方の場合、予診票に記載した住所・氏名・生年月日等を本人確認書類により確認し、予診票は後日被接種者が接種券を持参するまで企業・接種医療機関等において保管してください。

Q1-4.近隣住民も接種対象に含めてもいいですか?(6月17日更新)
A. ①企業・大学等が個人情報を管理する必要があること②企業・大学等が接種対象者の2回目接種まで実施できる体制を整備する必要があること、などを踏まえて、接種対象者について慎重に検討して下さい。

Q1-5.自社が職域接種を始めた場合、従業員は必ず接種をしないといけないのですか?(6月15日更新)
A. 接種に当たっては、本人の意思を確認するとともに、接種を強制するようなことがないよう留意して下さい。

Q1-6.独立行政法人や公務員も職域接種の対象範囲となりますか?(6月17日更新)
A. 職種による対象範囲の制限はございません。

2.接種会場

Q2-1.ワクチンやフリーザーはどこに届きますか?(6月10日更新)
A.申請フォームに記入していただいた接種会場に配送いたします。

Q2-2.接種会場レイアウトの事前チェックやアドバイスはありますか。模擬訓練は行っていただけますか?(6月10日更新)
A. レイアウトの事前チェック等は行っておりません。また、接種のリハーサル、動線確認等は企業側で行ってください。

Q2-3.保管冷凍庫から会場まで距離がある場合、接種会場に冷蔵庫をおいてワクチンを管理しても大丈夫ですか?(6月23日更新)
A. 冷凍庫は接種会場に設置することが前提です。保管冷凍庫から接種会場へのワクチンの運搬はできません。

Q2-4.自治体が実施する大規模接種でモデルナ社のワクチンを取り扱っている医療機関が職域接種を行おうとする場合、大規模接種用のワクチンを使用して職域接種を始めることは可能ですか?(6月23日更新)
A. 大規模接種用と職域接種用のワクチンを相互に融通することは認められません。大規模接種では、大規模接種用に届いたワクチンを、職域接種では、職域接種用に届いたワクチンを使用してください。

3.医療従事者について

Q3-1.接種に必要な医師や看護師などの人員は、企業側で確保しないといけませんか?(6月10日更新)
A.接種に必要な医師や看護師などの人員は企業で確保してください。

Q3-2.接種担当の医師について、人数の指定や制限はありますか?(6月11日更新)
A. 接種方法や会場の数、開設時間の設定により必要な医師数や期間が異なることから、実情に合わせて必要な医療従事者数を算定してください。

Q3-3.予診は医師が行わなければなりませんか?(6月16日更新)
A. 医師以外のスタッフが、予め聞き取りを行ったり予診票を確認したりできますが、その上で、医師が予診を行い接種を判断する必要があります。

Q3-4.ワクチンの職域接種のための医療機関を確保し、職域接種の申請をしたが、医療従事者が足りない場合、Key-Netを利用することはできますか?(6月17日)
A. ご利用いただけます。利用規約をご確認のうえ、下記URLから登録フォーマットに必要事項をご入力ください。
https://healthcare.job-support-mhlw.jp/jobfind-pc/


Q3-5.ワクチンの職域接種を申請したいが、そのための医療機関がみつかりません。Key-Netを利用することは可能ですか?(6月18日更新)
A. ご利用いただくことはできません。Key-Netをご利用いただくためには、まず医療機関を確保してください。医療機関が確保できれば、職域接種の申請前であっても実施医療機関において、募集情報を登録することは可能です。

4.申請

Q4-1.1会場あたりの接種人数に制限はありますか?(6月10日更新)
A.1,000人以上×2回の規模の接種を前提に受付を行っております。1,000人未満の企業の場合は、商工会議所等による取りまとめや複数社による連携等により、1,000人×2回の接種体制をご検討ください。

Q4-2.申請は誰がしますか?また、どうやって申請をすればいいですか?(6月17日更新)
A. 申請は企業・大学等が行うことを想定しております。下記URLにてオンラインで申請を受け付けております。
専用WEB入力フォーム:https://ova.gbiz.go.jp/

Q4-3.申請後、実際にワクチンが配布されるのはいつぐらいですか?(7月6日更新)
A. 申請を確認してから、概ね2~3週間を要します。申請いただいても確認が必要な事項があった場合、ご希望通りの予定で配送することをお約束できるものではありません。

Q4-5.申請後、連絡などは来ますか?(6月14日更新)
A. 申請が確認された際に厚生労働省から確認メールが届きます。申請に不備があった場合には厚生労働省からご連絡をいたします。

Q4-6.申請を取り下げる場合はどうしたらよいですか?(6月15日更新)
A. 厚生労働省または接種会場が所在する都道府県へご連絡ください。

Q4-7.申請内容は変更出来ますか?(7月6日更新)
A. 接種開始予定週が近づいている場合、手続きが開始されているため、確認後の申請内容の変更は原則としてできません。

Q4-8.接種希望人数が正確に決まっていないため、必要ワクチン量を多めに見積もって申請してもよいですか?(6月23日更新)
A. ワクチン量には限りがあり、また配送後未使用分は返品や他会場へ移動することは認められないため、余剰が出ないよう、しっかりとした接種計画を立ててから申請を行ってください。

Q4-9.一つの申請に対して、二つの医療機関を登録することはできますか?(7月6日更新)
A. 職域接種においては、1会場において、1つの医療機関を指定して申請をいただいております。集合契約、医療機関コードの付与は1会場当たり1つです。

5.費用

Q5-1.接種にかかる費用について教えてください。(6月17日更新)
A. 新型コロナワクチンの接種に係る費用は、全国統一の単価とし、接種1回目、接種2回目とも共通の2,070円(税込2,277円)としています。会場等の費用がこの費用でまかなえない場合は企業・大学等の負担となっております。

Q5-2.ワクチンの費用請求や振り込みはどのように行われますか?(6月14日更新)
A. V-SYSへ接種実績を登録した後、接種券の情報をVRSに登録し、接種券を貼付した予診票を市町村もしくは国保連に提出します。その後、登録した口座に費用が振り込まれます。

Q5-3.職域接種にあたり、従業員から費用を徴収してもよいですか?(6月17日更新)
A. 予防接種法に基づく臨時接種である今回の接種では、被接種者等から実費を徴収することはできません。職域接種では、企業・大学等が接種に必要な医療従事者や会場等を自らで確保することとしており、被接種者である従業員等に一部の費用を負担させることは適切ではありません。なお、従業員等に対する接種に必要な費用の一部を、職域接種を行う企業・大学等が負担することは差し支えありません。複数の企業・大学等が共同で実施する場合には、企業・大学等間で負担割合を調整することも考えられます。

Q5-4.職域接種の手引き15ページに接種単価が示されていますが、企業が診療所を開設した場合、時間外・休日の定義はどうなりますか?仮に土日を診療日として企業が接種会場を開設した場合、時間外・休日に派遣される医師の派遣元の医療機関への財政的支援は適用されますか?(6月17日更新)
A. 接種費用(2070円)についての時間外・休日の加算については、対象となります。外部医療機関からの派遣に関する派遣元への財政支援については対象となりません。

Q5-5.職域接種における休日、時間外の考え方について教えて下さい。(7月6日更新)
A. 接種実施医療機関の性質により判断いただく必要がありますが、具体的には下記の通りです。

https://www.mhlw.go.jp/content/000797478.pdf

○外部医療機関に出向いて実施
当該外部医療機関の診療時間による

○企業内の診療所で実施
○外部医療機関が企業に出張して実施
○外部医療機関に出向いて実施(平時に診療時間を定めていない保険医療機関ではない医療機関(健診医療機関など)で実施する場合)
リンク中の「(例3)平素に明確な診療時間が定められていない医療機関」と同じ取扱い(8時までと17時以降は時間外、土曜と休日は休日)

6.ワクチン

Q6-1.ワクチンの解凍方法、解凍時間を教えてください。(6月16日更新)
A. モデルナ社ワクチンの解凍方法は、①冷蔵庫(2~8℃)で2時間半静置、②常温(15-25℃)で1時間静置の2種類です。

Q6-2.2回目の接種のタイミングはいつですか?(6月16日更新)
A. 1回目の接種後、通常、4週間の間隔で2回目の接種を受けてください。4週間を超えた場合は、上限はありませんが、できるだけ速やかに2回目の接種を受けてください。

Q6-3.ファイザー社のワクチンを使用して市町村の予防接種事業を行っている医療機関が、その接種体制の余力を使って、武田/モデルナ社のワクチンを使用して職域接種を行うことはできますか?(6月23日更新)
A. ワクチンごとに接種間隔や管理方法等が異なるため、一つの接種実施医療機関では1種類のワクチンのみを用いることが原則です。ただし、職域接種を実施する間は、それぞれのワクチンで接種や管理を明確に区分することを条件として、ファイザー社のワクチンで接種を行っている医療機関で、モデルナ社ワクチンを一時的に併用することを認めることとしています。明確に区分する方法についてはこちらをご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000795858.pdf

Q6-4.未開封のモデルナワクチンが余った場合、後日返却したり、別の会場に移送して使用するのは可能ですか?>(7月6日更新)
A. モデルナワクチンは配送された施設で使用することとされており、返却や移送は認められないこととされています。仮に余剰となった場合には、決して無駄が生じることのないよう、予約のない人や、翌日以降に予約のある人を含め接種をお願いします。

7.副反応

Q7-1.副反応の対応に必要な医療機器、薬剤等は支給されるのでしょうか?(6月10日更新)
A. 企業で用意する必要があります。薬剤購入等に関しては予め医療機関等と協議の上、物品や薬剤の準備を行うとともに、常時対応が可能となるよう、救急処置用品について適切な管理を行ってください。

Q7-2.令和3年2月25日付厚労省事務連絡「予防接種会場での救急対応に用いるアドレナリン製剤の供給等について」の2.に記載された、製造販売業者から自治体への無償提供は、職域接種においても有効ですか?(6月18日更新)
A. 職域接種は当該無償提供の対象となりません。

8.その他

Q8-1.会場に届いたワクチンを各事業所等に配布しても大丈夫ですか?(6月10日更新)
A. 保管・トレーサビリティーの観点から、会場に届いたワクチンを別の場所に移動させることはできません。

Q8-2.手引き等の資料はどこにありますか?(6月11日更新)
A. 厚生労働省HPの新型コロナワクチンについて-職域接種に関するお知らせのページに載っております。
https://www.mhlw.go.jp/content/000789452.pdf

Q8-3.ワクチン、針・シリンジ等が届き、接種の準備が整えば申請した接種開始予定日より早く接種を開始してもよいですか?(6月14日更新)
A. 差し支えありません。

Q8-4.配送されたディープフリーザー、VRS用タブレットは接種終了後返却しますか。(6月15日更新)
A. 返却になります。

Q8-5.予診票を事前に従業員へ配布してもいいですか?(6月16日更新)
A.申請主体である企業・大学等に判断いただいております。

Q8-6.予診票を企業ごとにわかりやすく分ける方法はありますか?(6月17日更新)
A. 予診票を企業・大学等ごとに色分けしたり、欄外に企業名を記載するなど、予診票の様式に影響を与えない範囲で工夫をして差し支えありません。

Q8-7.接種券を持たない人に接種を行った場合、VRSへの入力はどのように行えばよいですか?(6月18日更新)
A. 接種券を持たない人に接種を行った場合は、接種券が届いてからVRSへの登録を行っていただきます。接種を受けた方の接種券が届くまでは、予診票を保管しておき、接種券が届いたのちに企業等においてVRSへの登録をお願い致します。なお、詳細については、内閣官房IT総合戦略室にて開催したオンライン説明会やその動画及びその資料をご確認ください。
https://cio.go.jp/vrs_vsite

年次有給休暇の取得に関するアンケート調査

年次有給休暇の取得に関するアンケート調査

独立行政法人労働政策研究・研修機構より行われた「年次有給休暇の取得に関するアンケート調査」結果が公表されています。
3年前の調査と比較して41.5%の人が年次有給休暇の取得日数が増加しており、また、年次有給休暇の取りやすさに対する認識でも、「取りやすくなった」が52.1%と半数を占めています。
働き方改革の効果か表れているものと思われます。

下記に概要を抜粋します。詳細はリンクをご確認ください。
https://www.jil.go.jp/institute/research/2021/211.html


(結果概要)
・企業調査の年休の計画的付与制度の導入状況によれば、「導入されている」とする企業割合は42.8%となっている。
・企業調査では、年休取得率や年休取得日数などの目標設定について、「年休取得日数の目標のみを設定している」で53.6%と半数を占め、「年休取得率の目標のみを設定している」が4.3%、「年休取得率及び取得日数双方について目標を設定している」が4.1%、「上記以外の目標を設定している」が0.9%となっている。その一方で、「何らの目標も設定していない」は34.9%だった。
・労働者調査の2018年度の年次有給休暇の取得日数の3年前と比べての増減状況では、「変化しなかった」が46.4%を占めるが、「増加」(「5日以上増えた」「3~4日増えた」「1~2日増えた」の合計)も41.5%となっている。「減少」(「5日以上減った」「3~4日減った」「1~2日減った」の合計)は4.4%とわずかである。「増加」と回答した者の年次有給休暇の取得日数が増えた理由(複数回答)は、「会社の取組みにより取りやすい就業環境になったから」が37.6%ともっとも高く、次いで、「個人的理由により、有給休暇が必要になったから」(31.3%)、「上司に有給休暇を取得するよう勧められたから」(21.0%)、「法律等の影響もあり年休を取りやすい環境ができた」(20.7%)などとなっている。
・労働者調査の年次有給休暇を取り残す理由では、各項目の肯定割合(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計)では、「急な用事のために残しておく必要があるから」が74.1%でもっとも高く、次いで、「病気のために残しておく必要があるから」(70.5%)、「休むと職場の他の人に迷惑になるから」(51.7%)、「休みの間仕事を引き継いでくれる人がいないから」(39.7%)、「仕事の量が多すぎて休んでいる余裕がないから」(38.5%)、「現在の休暇日数で十分だから」(28.2%)、「職場の周囲の人が取らないので年休を取りにくいから」(25.6%)などとなっている。
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年次有給休暇の年5日の取得義務化についての理解度では、企業調査において、「内容を十分に理解している」が64.4%ともっとも割合が高く、次いで、「ある程度理解している」(31.1%)となっており、「聞いたことがある」(3.1%)、「知らない」(0.6%)はわずかである。一方、労働者調査では、年次有給休暇の年5日の取得義務化の認知度について、「内容を含め知っている」が54.9%ともっとも割合が高く、次いで、「聞いたことがある」(29.5%)、「知らない」(14.3%)となっている。
・労働者調査において、3年前と比べての年次有給休暇の取りやすさに対する認識では、「取りやすくなった」(「かなり取りやすくなった」「やや取りやすくなった」の合計)は52.1%と半数を占め、「どちらともいえない」が35.9%であり、「取りにくくなった」(「かなり取りにくくなった」「やや取りにくくなった」の合計)は3.7%と少数である。「取りやすくなった」者の取りやすくなった理由(複数回答)は、「年休の年5日の取得義務化の施行」の割合が67.8%ともっとも高く、次いで、「会社や上司などからの年休取得への積極的な働きかけ」(44.2%)、「自分で積極的に取得するよう心掛けた」(31.4%)、「仕事の内容、進め方の見直し(仕事の効率化等)」(23.2%)、「年休取得のための目標設定(取得率、取得日数等)」(14.6%)、「年休の計画的付与制度の導入・定着」(13.9%)などが続く。
・企業調査での時間単位年休取得制度の導入状況では、「導入している」が22.0%となっている。企業における時間単位年休取得制度の導入理由(複数回答)では、「日単位・半日単位に満たない時間の取得が可能で便利」(70.0%)がもっとも高く、次いで、「個人的な事情に対応した休暇取得が可能になる」(57.3%)、「年休の取得促進のため」(56.5%)、「育児、介護の支援」(49.0%)、「仕事と治療の両立支援」(42.1%)などとなっている。
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・時間単位年休取得制度を導入していない理由(複数回答)は、「勤怠管理が煩雑になる」が50.3%ともっとも高く、次いで、「すでに半日単位の年休取得制度がある」(46.8%)、「給与計算が複雑になる」(39.3%)、「変形労働時間制等のため時間単位の代替要員確保困難」(31.4%)、「導入可能と不可能部署があり平等性から導入しづらい」(29.4%)などとなっている。
・企業調査では、年間を通じて、時間単位で取得できる年次有給休暇(限度日数)は、法定上限日数の「5日」がもっとも割合が高い。時間単位年休の取得できる最小の単位は、「1時間」の割合がもっとも高い。
・労働者調査での時間単位年休取得制度の導入・適用状況では、「時間単位年休制度が導入されており対象労働者である」が22.3%、「時間単位年休制度が導入されてるが対象労働者でない」が1.8%となっており、両者を合わせて、時間単位年休取得制度導入割合をみると、24.1%となっている。一方、「そもそも時間単位年休制度が導入されていない」が39.3%、「わからない」が34.9%となっている。時間単位年休取得制度が適用・導入されていない者(「わからない」を含む)で、勤務先での時間単位年休取得制度の「導入・適用してほしい」とする割合は50.6%となっている。
・労働者調査において、時間単位年休の取得経験については、「取得したことがある」が56.7%となっている。取得者の取得した時間単位年休の総日数は、「2日分以上~3日分未満」が29.1%ともっとも割合が高く、次いで、「1日分未満」(24.1%)、「1日分以上~2日分未満」(15.9%)、「5日分すべて」(9.5%)、「4日分以上~5日分未満」(8.0%)、「3日分以上~4日分未満」(7.6%)となっている。取得者の時間単位年休の用途(複数回答)については、「自身の病気などの通院」をあげる割合が63.7%ともっとも高く、次いで、「家事・育児・子供の行事参加」(32.7%)、「銀行や役所等の手続」(26.1%)、「介護や看護」(13.5%)などとなっている。
・労働者調査において、時間単位年休取得制度取得の満足度は、「満足・計」(「たいへん満足している」「まあ満足している」の合計)の割合は65.4%である一方、「不満・計」(「あまり満足していない」「まったく満足していない」の合計)の割合は4.9%となっている。時間単位年休の取得経験別にみると、「取得したことがない」に比べて「取得したことがある」者の方が「満足・計」の割合が高い。

日本アイ・ビー・エム(会社分割事件)(最二小判平22.7.12民集64巻5号1333頁)

日本アイ・ビー・エム(会社分割事件)(最二小判平22.7.12民集64巻5号1333頁)

1.事件の概要

本件は,Y社が、商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。以下同じ。)に基づき、新設分割の方法により、その事業部門の一部につき会社の分割をしたところ、これによってY社との間の労働契約が上記分割により設立された会社に承継されるとされたXらが、上記労働契約は,その承継手続に瑕疵があるので上記会社に承継されず、上記分割はXらに対する不法行為に当たるなどと主張して、Y社に対し、労働契約上の地位確認及び損害賠償を求めている事案である。
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2.判決の概要

事実関係

(1) 平成14年4月ころ、Y社の親会社であるA社とB社(以下「B社」という。)は、ハードディスク事業(以下「HDD事業」という。)に特化した合弁会社を設立する旨の合意をし、その後、当該合意に基づく事業再編計画の一環として、Y社が、新設分割の方法により、そのHDD事業部門につき会社の分割(以下「本件会社分割」という。)をし、これによって設立される会社(後記(4)の設立時の商号はC社。以下「C社」という。)を上記合弁会社の子会社にする一方で、B社もまた、吸収分割の方法により、そのHDD事業部門につき会社の分割をし、これをC社に承継させることとした。そして、本件会社分割に伴い、Y社のHDD事業部門の従業員との間の労働契約もC社に承継させる方針が定められた。

(2) Y社は、平成14年9月3日、イントラネット上で、HDD事業部門に関連する従業員向けに本件会社分割の内容及び雇用関係等に係る情報提供を開始するとともに、質問受付窓口を開設し、主な質問とそれに対する回答を掲載するなどした。また、Y社は、その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がなかったことから、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成17年法律第87号による改正前のもの。なお、同改正前の法律の題名は「会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」。以下「承継法」という。)7条に定める労働者の理解と協力を得るよう努める措置(以下「7条措置」という。)を行うため、各事業場ごとに従業員代表者を選出させ、当該代表者70人を4グループに分けて、同月27日以降、各グループに対して本件会社分割の背景と目的、C社の事業の概要、承継対象となる部署と今後の日程、承継される従業員のC社における処遇、承継される営業に主として従事する労働者か否かの判断基準、労使間で問題が生じた場合の問題解決の方法等について説明し、C社の債務の履行の見込みに係る質問への回答も行った。そして、Y社は、各種資料をまとめたデータベースをイントラネット上に設置して、従業員代表者がこれを閲覧できるようにした。
さらに、Y社は、C社の中核となることが予定されるD事業所の従業員代表者との間で、個別的にも協議を行い、同年11月中旬までに、同代表者から3回にわたり出された要望書に対し、回答書を送付するなどした。当該協議の際、上記事業所の従業員代表者からは、C社設立後の経営見通し、C社への在籍出向によることの可否、承継後の労働条件等についての質問が出され、Y社は、C社が承継する資産等を含む経営見通しに関係する事情を説明したほか、在籍出向は考えていないこと、労働条件はそのまま維持されることなどを回答した。

(3) Y社は、平成14年10月1日、HDD事業部門のライン専門職に対し、商法等の一部を改正する法律(平成12年法律第90号。平成17年法律第87号による改正前のもの。以下「商法等改正法」という。)附則5条1項に定める労働契約の承継に関する労働者との協議(以下「5条協議」という。)のための資料として、C社の就業規則案や上記従業員代表者への説明時に使用した説明資料を送付した。その上で、Y社は、ライン専門職に対し、同月4日、5条協議として、同月30日までにライン従業員にこれらの資料を示すなどして説明した上で労働契約の承継に関する意向を確認すること、承継に納得しない従業員に対しては最低3回の協議を行うこと、各従業員の状況をY社に報告することを指示した。
ライン専門職は、この指示に従って説明会を開き、多くの従業員は承継に同意した。
他方、✕らは、いずれもY社のHDD事業に主として従事していた者であるところ、その所属する労働組合支部(以下「支部」という。)を代理人として5条協議をすることとし、その結果支部とY社との間で7回にわたり協議がされるとともに、3回にわたる書面のやり取りがされた。この協議の中で、Y社は、支部に対し、C社の事業の概要にかかわる事情やXらが承継される営業に主として従事しているとの判断結果等について説明した。もっとも、Y社は、一部の事項につき、支部が求めた形では回答せず、C社の経営見通しについては、これに係る数値等は経営に係る機密事項であるから答えられないが、現状では同業他社と同様にHDD事業部門の売上げは低迷しているものの合弁の強みを生かすことでメリットが得られるなどとし、C社における将来の労働条件については、労働者保護法理の適用がある中でC社が判断することであるなどと回答した。また、Y社は、Xらを在籍出向又はY社内での配置転換にしてほしいとの支部の求めには、応じられないとした。
Xらは、同年11月11日、Y社から十分な説明がされず、協議も不誠実であるなどとして、Y社に対し、✕らに係る労働契約の承継につき異議を申し立てる※旨の書面を提出した。

※承継される事業に主として従事する労働者が、分割計画上承継の対象として記載されているにも関わらず異議を申し出ているため、承継法4条(承継排除の防止)また5条(承継強制の防止)の異議申し出のいずれでもありません。

(4) Y社は、平成14年11月27日、本件会社分割に係る分割計画書を本店に備え置いた。これに添付された書面には、Xらの雇用契約も承継される旨記載されており、また、債務の履行の見込みがあることに関しては、C社が承継する資産と負債の簿価が、それぞれ114億8500万円と3億9000万円である旨の記載がされていた。そして、同年12月25日に会社分割の登記がされ、C社が資本金50億円で設立された。

裁判所の判断

(1) 新設分割の方法による会社の分割は、会社がその営業の全部又は一部を設立する会社に承継させるものである(商法373条。以下、会社の分割を行う会社を「分割会社」、新設分割によって設立される会社を「設立会社」という。)。
これは、営業を単位として行われる設立会社への権利義務の包括承継であるが、個々の労働者の労働契約の承継については、分割会社が作成する分割計画書への記載の有無によって基本的に定められる(商法374条)。そして、承継対象となる営業に主として従事する労働者が上記記載をされたときには当然に労働契約承継の効力が生じ(承継法3条)、当該労働者が上記記載をされないときには異議を申し出ることによって労働契約承継の効力が生じる(承継法4条)。また、上記営業に主として従事する労働者以外の労働者が上記記載をされたときには、異議を申し出ることによって労働契約の承継から免れるものとされている(承継法5条)。

(2) 法は、労働契約の承継につき以上のように定める一方で、5条協議として、会社の分割に伴う労働契約の承継に関し、分割計画書等を本店に備え置くべき日までに労働者と協議をすることを分割会社に求めている(商法等改正法附則5条1項)。これは、上記労働契約の承継のいかんが労働者の地位に重大な変更をもたらし得るものであることから、分割会社が分割計画書を作成して個々の労働者の労働契約の承継について決定するに先立ち、承継される営業に従事する個々の労働者との間で協議を行わせ、当該労働者の希望等をも踏まえつつ分割会社に承継の判断をさせることによって、労働者の保護を図ろうとする趣旨に出たものと解される。
ところで、承継法3条所定の場合には労働者はその労働契約の承継に係る分割会社の決定に対して異議を申し出ることができない立場にあるが、上記のような5条協議の趣旨からすると、承継法3条は適正に5条協議が行われ当該労働者の保護が図られていることを当然の前提としているものと解される。この点に照らすと、上記立場にある特定の労働者との関係において5条協議が全く行われなかったときには、当該労働者は承継法3条の定める労働契約承継の効力を争うことができるものと解するのが相当である。
また、5条協議が行われた場合であっても、その際の分割会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため、法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には、分割会社に5条協議義務の違反があったと評価してよく、当該労働者は承継法3条の定める労働契約承継の効力を争うことができるというべきである。

(3) 他方、分割会社は、7条措置として、会社の分割に当たり、その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるものとされているが(承継法7条)、これは分割会社に対して努力義務を課したものと解され、これに違反したこと自体は労働契約承継の効力を左右する事由になるものではない。7条措置において十分な情報提供等がされなかったがために5条協議がその実質を欠くことになったといった特段の事情がある場合に、5条協議義務違反の有無を判断する一事情として7条措置のいかんが問題になるにとどまるものというべきである。

(4) なお、7条措置や5条協議において分割会社が説明等をすべき内容等については、「分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針」(平成12年労働省告示第127号。平成18年厚生労働省告示第343号による改正前のもの。なお、同改正前の表題は「分割会社及び設立会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針」。以下「指針」という。)が定めている。指針は、7条措置において労働者の理解と協力を得るべき事項として、会社の分割の背景及び理由並びに労働者が承継される営業に主として従事するか否かの判断基準等を挙げ、また5条協議においては、承継される営業に従事する労働者に対して、当該分割後に当該労働者が勤務する会社の概要や当該労働者が上記営業に主として従事する労働者に該当するか否かを説明し、その希望を聴取した上で、当該労働者に係る労働契約の承継の有無や就業形態等につき協議をすべきものと定めているが、その定めるところは、以上説示したところに照らして基本的に合理性を有するものであり、個別の事案において行われた7条措置や5条協議が法の求める趣旨を満たすか否かを判断するに当たっては、それが指針に沿って行われたものであるか否かも十分に考慮されるべきである。

これを本件についてみると、前記事実関係によれば、Y社は、7条措置として、前記のとおり本件会社分割の目的と背景及び承継される労働契約の判断基準等について従業員代表者に説明等を行い、情報共有のためのデータベース等をイントラネット上に設置したほか、C社の中核となることが予定されるD事業所の従業員代表者と別途協議を行い、その要望書に対して書面での回答もしたというのである。これは、7条措置の対象事項を前記のとおり挙げた指針の趣旨にもかなうものというべきであり、Y社が行った7条措置が不十分であったとはいえない。

次に5条協議についてみると、前記事実関係によれば、Y社は、従業員代表者への上記説明に用いた資料等を使って、ライン専門職に各ライン従業員への説明や承継に納得しない従業員に対しての最低3回の協議を行わせ、多くの従業員が承継に同意する意向を示したのであり、また、Y社は、Xらに対する関係では、これを代理する支部との間で7回にわたり協議を持つとともに書面のやり取りも行うなどし、C社の概要やXらの労働契約が承継されるとの判別結果を伝え、在籍出向等の要求には応じられないと回答したというのである。
そこでは、前記のとおり、分割後に勤務するC社の概要やXらが承継対象営業に主として従事する者に該当することが説明されているが、これは5条協議における説明事項を前記のとおり定めた指針の趣旨にかなうものというべきであり、他にY社の説明が不十分であったがためにXらが適切に意向等を述べることができなかったような事情もうかがわれない。
なお、Y社は、C社の経営見通しなどにつきXらが求めた形での回答には応じず、Xらを在籍出向等にしてほしいという要求にも応じていないが、Y社が上記回答に応じなかったのはC社の将来の経営判断に係る事情等であるからであり、また、在籍出向等の要求に応じなかったことについては、本件会社分割の目的が合弁事業実施の一環として新設分割を行うことにあり、分割計画がこれを前提に従業員の労働契約をC社に承継させるというものであったことや、前記の本件会社分割に係るその他の諸事情にも照らすと、相応の理由があったというべきである。そうすると、本件における5条協議に際してのY社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため、法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかであるとはいえない。

以上によれば、Y社の5条協議が不十分であるとはいえず、XらのC社への労働契約承継の効力が生じないということはできない。また、5条協議等の不十分を理由とする不法行為が成立するともいえない。

3.解説

会社分割は、事業に関する権利義務の全部または一部を他の会社に承継させる会社法上の制度です(会社法2条29号・30号、757条以下)。会社分割には、他の会社に事業を承継させる吸収分割(会社法757条以下)と、新たに会社を設立すると同時に承継の相手方とする新設分割(会社法762条以下)の2通りがありますが、本件は新設分割に関するものです。
新設分割の場合には分割計画(763条)の定めに従い、労働契約を含む権利義務の承継が決定されるのが原則です。(承継法3条)

(承継される事業に主として従事する労働者に係る労働契約の承継)
第3条 前条第一項第一号に掲げる労働者が分割会社との間で締結している労働契約であって、分割契約等に承継会社等が承継する旨の定めがあるものは、当該分割契約等に係る分割の効力が生じた日に、当該承継会社等に承継されるものとする。

労働者の同意なく権利義務が承継されるので「包括承継」とされ、その承継の範囲が分割計画に定められた部分に限定されるため「部分的包括承継」とも呼ばれます。

ただし、会社の恣意的な選別によって労働者が不利益を被ることを防ぐため、次のような異議申し立てが認められています。

①承継される事業に主として従事する労働者が、分割計画上承継の対象として記載されていない場合には、異議を申し出て承継を効果を発生させることができます。(承継法4条。承継排除の防止)

②承継される事業に主として従事していない労働者が、分割計画上承継対象に含まれている場合は、異議を申し出て承継の効果を免れることができます。(承継法5条。承継強制の防止)

第4条1項 第二条第一項第一号に掲げる労働者であって、分割契約等にその者が分割会社との間で締結している労働契約を承継会社等が承継する旨の定めがないものは、同項の通知がされた日から異議申出期限日までの間に、当該分割会社に対し、当該労働契約が当該承継会社等に承継されないことについて、書面により、異議を申し出ることができる。

第5条1項 第二条第一項第二号に掲げる労働者は、同項の通知がされた日から前条第三項に規定する異議申出期限日までの間に、分割会社に対し、当該労働者が当該分割会社との間で締結している労働契約が承継会社等に承継されることについて、書面により、異議を申し出ることができる。

さらに、会社分割に際しては、まず、①すべての事業場において過半数組合(それがなければ過半数代表者)と協議をして労働者の理解と協力を得るよう努力し(承継法7条・7条措置)、次に、承継される事業に従事している労働者と労働契約の承継について協議し(商法等改正法附則5条1項・5条協議)、さらに通知期限(分割計画を承認する株主総会の2週間前の前日等)までに、承継される事業に主として従事している労働者、主として従事していないが承継対象とされた労働者、及び労働協約を締結している労働組合に対して、所定の事項を書面により通知する義務を負っている(承継法2条)

(労働者の理解と協力)
第7条 分割会社は、当該分割に当たり、厚生労働大臣の定めるところにより、その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるものとする。

 (労働契約の取扱いに関する措置)
第5条 会社法(平成十七年法律第八十六号)の規定に基づく会社分割に伴う労働契約の承継等に関しては、会社分割をする会社は、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成十二年法律第百三号)第二条第一項の規定による通知をすべき日までに、労働者と協議をするものとする。

(労働者等への通知)
第2条1項 会社(株式会社及び合同会社をいう。以下同じ。)は、会社法第五編第三章及び第五章の規定による分割(吸収分割又は新設分割をいう。以下同じ。)をするときは、次に掲げる労働者に対し、通知期限日までに、当該分割に関し、当該会社が当該労働者との間で締結している労働契約を当該分割に係る承継会社等(吸収分割にあっては同法第七百五十七条に規定する吸収分割承継会社、新設分割にあっては同法第七百六十三条第一項に規定する新設分割設立会社をいう。以下同じ。)が承継する旨の分割契約等(吸収分割にあっては吸収分割契約(同法第七百五十七条の吸収分割契約をいう。以下同じ。)、新設分割にあっては新設分割計画(同法第七百六十二条第一項の新設分割計画をいう。以下同じ。)をいう。以下同じ。)における定めの有無、第四条第三項に規定する異議申出期限日その他厚生労働省令で定める事項を書面により通知しなければならない。
一 当該会社が雇用する労働者であって、承継会社等に承継される事業に主として従事するものとして厚生労働省令で定めるもの
二 当該会社が雇用する労働者(前号に掲げる労働者を除く。)であって、当該分割契約等にその者が当該会社との間で締結している労働契約を承継会社等が承継する旨の定めがあるもの


本件において、✕は承継される事業に主として従事する労働者であり、分割計画の対象として記載されているにも関わらず、異議を申し出ています。
これに対して、裁判例は、承継法3条所定の場合はその労働契約の承継に係る分割会社の決定に対して異議を申し出ることができない立場にあるが、5条協議の趣旨からすると、承継法3条は適正に5条協議が行われ当該労働者の保護が図られていることを当然の前提としているものと解される。この点に照らすと、承継の対象となっている特定の労働者との間で、5条協議が全く行われなかったときには、当該労働者は承継法3条の定める労働契約承継の効力を争うことができるものと解するのが相当としています。

従って、承継される事業に主として従事する労働者は、承継されることの異議申し出はできませんが、5条協議が全く行われなかったときには、当該労働者は承継法3条の定める労働契約承継の効力を争うことができるものとしています。

さらに、5条協議が行われた場合であっても、その際の分割会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため、法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には、分割会社に5条協議義務の違反があったと評価してよく、当該労働者は承継法3条の定める労働契約承継の効力を争うことができるともしています。

これに対して7条措置については、条文どおり努力義務として課したものでそれ自体は労働承継の効力を左右するものではなく、5条協議義務違反を有無を判断する一事情にとどまるとされました。

職場における積極的な検査等の実施手順(第2版)

職場における積極的な検査等の実施手順(第2版)

https://www.mhlw.go.jp/content/000798697.pdf

別紙3 抗原簡易キットを使用した検査実施体制に関する確認書
https://drive.google.com/file/d/1h_331eldBI4HTrU3royzZUDhf2J7UxsG/view?usp=sharing

1.事業所内に診療所が所在する場合

(1) 利用に向けた事前準備

・事業所内の診療所や健康管理部門が連携し、検査実施のための体制・環境を予め整備する。
※ただし、職域におけるワクチン接種に協力している事業所についてはその限りではない。
・体調が悪い場合には出勤せず、自宅療養する社内ルールを徹底する。
・事業所内の診療所が、民間流通により抗原簡易検査キットを購入する。事業所内の診療所において適切な保管・管理を行いつつ、事業所内及び管轄保健所との対応フローを整理する。
・事業所は、各職場の取組状況等に応じ、毎日の健康状態を把握するための健康観察アプリ(※)の導入を検討したうえで、利用するアプリを選定し、従業員に対して、毎日の利用を要請する。
(※)典型的な事例として「健康観察CHAT」の概要を例示として添付しますのでご参照ください。
また、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室HPにおいても、民間事業者等が開発・提供している健康観察アプリを紹介しておりますので、併せてご参照ください。
https://corona.go.jp/health/
・従業員は端末に各自アプリをインストール・活用するなどし、健康情報を毎日登録する。

(2) 検査の実施

・出勤後、健康観察アプリ等を通じて具合の悪い従業員が見出された場合、または従業員が発熱、せき、のどの痛み等軽度の体調不良を訴えた場合は、その従業員に対し、社内診療所等において、医療従事者の管理下で抗原定性検査等(※)を実施する。
※検査方式はPCR検査でも可能。

(3-1) 陽性判明時

・現場の医師が確定診断まで行う場合には、患者と診断されれば、保健所に届出を行う。
・現場の医師が確定診断を行わない場合には、PCR 等検査を用いて確定診断を行える医療機関を紹介する。当該医療機関で患者と診断されれば、保健所に届出を行う。
・いずれの場合でも、当該陽性判明者は帰宅・出勤停止し、医師による診断で感染性がないとされ、症状が軽快するまで療養を行う。
・更に、その後の積極的疫学調査の円滑な実施に資するよう、事業所で行動歴を把握する。

(3-2) 陰性判明時

・医師による診断で感染性がないとされ、症状が軽快するまで療養を行う。

(4) 陽性判明時:接触者の特定から隔離・検査

・所属部局が中心となって、確定診断までに時間を要する場合には確定診断を待たず、同時並行で、当該従業員の「初動対応における接触者」を自主的に特定する。特定に当たっての基準は別紙1のとおりとする。
・上記「初動対応における接触者」に対し、感染拡大防止の観点から、以下のとおり感染拡大防止策を講じる。

① 速やかに帰宅させたうえで、自宅勤務を指示する(発症日2日前又は最終接触日の遅い方から2週間を目安)。事業所内で最初に検査結果が陽性となった者が医師の診断により感染していないとされた場合又は保健所から濃厚接触者として特定されなかった場合は、自宅勤務を解除する。ただし、②の検査を実施する場合にあっては、当該検査の結果が陰性であった場合に自宅勤務を解除する。
② 感染拡大地域において、事業所内で最初に検査結果が陽性となった者が患者と診断された場合には、上記及び保健所の取扱いに基づき、事業所側で検査の対象者を決めて保健所に対象者リストを提出し、保健所の了承を得た上で、「接触者」に対してPCR検査等を速やかに実施する。自宅勤務している従業員に対しては唾液検査キットを送付するなどして行う。このPCR検査等は行政検査として取り扱う。(別紙2の事務連絡参照)

2.事業所内に診療所が所在しない場合(職場での検査実施の場合)

(1) 職場での検査実施に当たっての基本的な考え方

・職場での抗原簡易キットの使用は、医療機関の受診に代わるものではなく、抗原簡易キットの使用によって受診が遅れることがないようにする。
・出勤後、健康観察アプリ等を通じて具合の悪い従業員が見出された場合、医療機関を受診することが基本となるが、直ちに受診をすることができない場合には、以下の手順に従い、職場において被検者本人の同意を得て抗原簡易キットを使用することが可能。ただし、従業員の具合が悪い場合は検査結果にかかわらず医療機関を受診するなど必要な対応をとること。
・抗原簡易キットは、体外診断用医薬品であり、抗原簡易キットを使用した検査のための検体採取や結果の判定についても可能な限り医療従事者の管理下で実施することが望ましい。

(2) 利用に向けた事前準備

・連携医療機関新型コロナウイルス感染症の診療・検査及び患者の診断を行うところに限る。)と事業所とが連携し、検査実施のための体制・環境を予め整備しておく。連携医療機関がない場合は新たに地域の医療機関と連携して対応する。
・抗原簡易キットの選定・保管・使用に当たり、あらかじめ連携医療機関から技術的助言を受けておく必要がある。
・出勤前に既に症状を自覚している場合には、出勤せずに医療機関を受診することとし、また、事業所内の有症状者が、その場で検査を実施せずとも直ちに医療機関を受診できる場合には、検査の実施を待たずに速やかに受診する。
・事業者は、本人の同意を得た上で検査を管理する従業員(※)を定め、抗原簡易キット等による新型コロナウイルス感染症の抗原定性検査を実施するに当たって必要な検体の採取、判定の方法、その他の注意事項に関する研修を受けさせ、研修の受講を確認し、その名簿を作成し、保存する。なお、職場に医療関係資格を有する者がいる場合には、当該従事者により検査の管理を行うことを検討する。

新型コロナウイルス感染症の検査に関する研修資料】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00270.html

(上記ページの中にある「医療従事者の不在時における新型コロナウイルス抗原定性検査のガイドライン」及び「理解度確認テスト」参照。なお同ガイドラインは職場での検査を含め、医療従事者の不在時における新型コロナウイルス抗原定性検査全般に関するガイドラインとなっている。)
(※)「検査を管理する従業員」とは、検査の実施に関して必要な事項・注意点を理解し、実際に検査を行う際に被検者への指示や検査結果の判定等を行う従業員のことをいう。
・事業者は、検査を管理する従業員がいることや連携医療機関の名称などについての確認書(別紙3)を医薬品卸売販売業者に提出し、抗原簡易キット(別紙4参照)を入手する。
抗原簡易キットは事業所において適切な保管・管理を行いつつ、事業所内及び管轄保健所との対応フローを整理する。
・事業所は、各職場の取組状況等に応じ、毎日の健康状態を把握するための健康観察アプリの導入を検討(1.(1)参照)したうえで、利用するアプリを選定し、従業員に対して、毎日の利用を要請。
・従業員は端末に各自アプリをインストール・活用するなどし、健康情報を毎日登録する。

(3) キットを利用した検査の実施

・出勤後、健康観察アプリ等を通じて具合の悪い従業員が見出された場合、または従業員が発熱、せき、のどの痛み等軽度の体調不良を訴えた場合は、あらかじめ検査に関する研修を受けた従業員の管理下で検査を実施すること。
・飛沫の飛散などにより検査を管理する従業員やその他の従業員への感染の拡大を生じさせないような設備環境を整えた上で、抗原定性検査の実施に関する研修で示されている手順に従い適切に検査を実施すること。(詳細については上記(2)にリンクのある研修資料を参照のこと)

(4-1) 陽性判明時

・検査結果が陽性だった場合には、事業所の責任者が被検者に連携医療機関を紹介する。
・連携医療機関の医師が診療・診断を行い、患者と診断されれば、当該医療機関から保健所に届出する。
・いずれの場合でも、当該陽性判明者は帰宅・出勤停止し、医師による診断で感染性がないとされ、症状が軽快するまで療養を行う。

(4-2) 陰性判明時

偽陰性の可能性もあることから、医療機関の受診を促す。また、症状が軽快するまで自宅待機とし、その後医師の判断で解除するなど、偽陰性だった場合を考慮した感染拡大防止措置を講じる。

(5) 陽性判明時:接触者の特定から隔離・検査

・所属部局が中心となって、検査結果の判定から確定診断までに時間を要する場合にはその後の確定診断を待たず、同時並行で、当該従業員の「初動対応における接触者」を自主的に特定する。特定に当たっての基準は別紙1のとおりとする。
・上記「初動対応における接触者」に対し、感染拡大防止の観点から、以下のとおり感染拡大防止策を講じる。
① 速やかに帰宅させたうえで、自宅勤務を指示する(発症日2日前又は最終接触日の遅い方から2週間を目安)。事業所内で最初に検査結果が陽性となった者が医師の診断により感染していないとされた場合又は保健所から濃厚接触者として特定されなかった場合は、自宅勤務を解除する。ただし、②の検査を実施する場合にあっては、当該検査の結果が陰性であった場合に自宅勤務を解除する。
② 感染拡大地域において、事業所内で最初に検査結果が陽性となった者が患者と診断された場合には、上記及び保健所の取扱いに基づき、事業所側で検査の対象者を決めて保健所に対象者リストを提出し、保健所の了承を得た上で、「接触者」に対してPCR検査等を速やかに実施する。自宅勤務している従業員に対しては唾液検査キットを送付するなどして行う。このPCR検査等は行政検査として取り扱う。(別紙2の事務連絡参照)

3.事業所内に診療所が所在しない場合(連携医療機関での検査実施の場合)

(1) 利用に向けた事前準備

・連携医療機関新型コロナウイルス感染症の診療・検査並びに患者の診断及び保健所への
届出を行うところに限る。)と事業所とが連携し、検査実施のための体制・環境を予め整
備しておく。連携医療機関がない場合は新たに地域の医療機関と連携して対応する。
・体調が悪い場合には出勤せず、自宅療養する社内ルールを徹底する。
・連携医療機関が、民間流通により抗原簡易検査キットを購入する。連携医療機関において適切な保管・管理を行いつつ、事業所内及び管轄保健所との対応フローを整理する。
・事業所は、各職場の取組状況等に応じ、毎日の健康状態を把握するための健康観察アプリの導入(1.(1)参照)を検討したうえで、利用するアプリを選定し、従業員に対して、毎日の利用を要請。
・従業員は端末に各自アプリをインストール・活用するなどし、健康情報を毎日登録する。

(2) 検査の実施

・出勤後、健康観察アプリ等を通じて具合の悪い従業員が見出された場合、または従業員が発熱、せき、のどの痛み等軽度の体調不良を訴えた場合は、連携医療機関を受診し、抗原定性検査等(※)を受ける。
※検査方式はPCR検査でも可能。

(3) 陽性判明時

・連携医療機関の医師が確定診断を行う。患者と診断されれば、保健所に届出を行う。
・当該陽性判明者は帰宅・出勤停止し、医師による診断で感染性がないとされ、症状が軽快するまで療養を行う。
・更に、その後の積極的疫学調査の円滑な実施に資するよう、事業所で行動歴を把握する。

(3-2) 陰性判明時

・医師による診断で感染性がないとされ、症状が軽快するまで療養を行う。

(4) 陽性判明時:接触者の特定から隔離・検査

・所属部局が中心となって、確定診断までに時間を要する場合には確定診断を待たず、同時並行で、当該従業員の「初動対応における接触者」を自主的に特定する。特定に当たっての基準は別紙1のとおりとする。
・上記「初動対応における接触者」に対し、感染拡大防止の観点から、以下のとおり感染拡大防止策を講じる。
① 速やかに帰宅させたうえで、自宅勤務を指示する(発症日2日前又は最終接触日の遅い方から2週間を目安)。事業所内で最初に検査結果が陽性となった者が医師の診断により感染していないとされた場合又は保健所から濃厚接触者として特定されなかった
場合は、自宅勤務を解除する。ただし、②の検査を実施する場合にあっては、当該検査の結果が陰性であった場合に自宅勤務を解除する。
② 感染拡大地域において、事業所内で最初に検査結果が陽性となった者が患者と診断された場合には、上記及び保健所の取扱いに基づき、事業所側で検査の対象者を決めて保健所に対象者リストを提出し、保健所の了承を得た上で、「接触者」に対してPCR検査等を速やかに実施する。自宅勤務している従業員に対しては唾液検査キットを送付するなどして行う。このPCR検査等は行政検査として取り扱う。(別紙2の事務連絡参照)

別紙1

「初動対応における接触者」の自主的な特定の基準
「初動対応における接触者」については、抗原簡易キットの結果が陽性となった者(以下「陽性者」という。)の濃厚接触者又は陽性者の周辺の検査対象者の候補とし、その範囲は、陽性者が患者として確定診断された場合(以下「感染者」という。)又は陽性者が患者であったとした場合において、その感染可能期間(※1)のうち当該陽性者又は感染者が入院、宿泊療養又は自宅療養を開始するまでの期間において、以下のいずれかに該当する者とします。
※1 感染可能期間は、発症2日前(無症状病原体保有者の場合は、陽性確定に係る検体採取日の2日前)から退院又は宿泊療養・自宅療養の解除の基準を満たすまでの期間とされている。

【濃厚接触者の候補】
・ 陽性者又は感染者と同居していた者
・ 適切な感染防護なしに患者を診察、看護若しくは介護していた者
・ 陽性者又は感染者の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
・ 手で触れることの出来る距離(目安として1 メートル)で、必要な感染予防策なし※2で、陽性者と15 分以上の接触があった者
※2 必要な感染予防策については、単にマスクを着用していたかのみならず、いわゆる鼻出しマスクや顎マスク等、マスクの着用が不適切な状態になかったかについても確認する。

【陽性者の周辺の検査対象者の候補】
いわゆる「三つの密(密閉、密集、密着)」となりやすい環境や、集団活動を行うなど濃厚接触が生じやすい環境、同一環境から複数の感染者が発生している事例において、
・ 陽性者又は感染者からの物理的な距離が近い(部屋が同一、座席が近いなど)者
・ 物理的な距離が離れていても接触頻度が高い者
・ 寮などで陽性者又は感染者と食事の場や洗面浴室等の場を共有する生活を送っている者
・ 換気が不十分、三つの密、共用設備(食堂、休憩室、更衣室、喫煙室など)の感染対策が不十分などの環境で陽性者又は感染者と接触した者

別紙2

感染拡大地域の積極的疫学調査における濃厚接触者の特定等について
保健所業務については、地域の感染状況等によって、優先的に取り組むべき業務が異なることがあります。例えば、緊急事態宣言対象地域やまん延防止等重点措置区域など感染が大きく拡大している地域においては、陽性者の増加に伴う保健所業務の逼迫により、自宅・宿泊療養者の健康観察や濃厚接触者の特定を含む積極的疫学調査の実施が遅延したり、十分に行えなくなったりするおそれがあります。
このため、必要な行政検査が迅速に行われることを目的として、緊急事態宣言対象地域、又はまん延防止等重点措置区域であって、保健所業務の逼迫等により積極的疫学調査を行うことが困難である場合、これら地(区)域に指定されている期間中に限り、濃厚接触者の特定を含む疫学調査の実施について、保健所自らが聞き取りによりその範囲の特定を行わずとも、陽性者が確認された事業所が、保健所業務の補助として、本人の同意を得た上で一定の基準(別添参照)に基づき濃厚接触者やその周辺の検査対象となる者(以下「濃厚接触者等」という)の候補範囲を特定し、濃厚接触者等の候補者リストを保健所に提示することにより、保健所が適切と認定した場合(範囲)において、行政検査として必要な検査を実施することも可能です。地域の感染拡大防止のために保健所自らが行うべき業務、効率化できる業務等を総合的に判断した上で、適切に取り組んでください。
また、この場合において、保健所が認定した濃厚接触者を含む検査対象者に対する行政検査については、保健所があらかじめ委託契約を結んでいる検査機関や医療機関に対して、保健所が認定したことがわかる検査対象者リストを事業所が送付するなどにより、事業所から直接、当該行政検査を依頼することも差し支えありません。その際には、委託先となる検査機関等の確保に加え、事業所にも必要な情報(行政検査を依頼できる検査機関リスト、検査を依頼する際の手順など)が適切に伝わるよう必要な体制整備を事前に行ってください。
なお、積極的疫学調査は、本来保健所が行うべき業務であり、かつ上記の対応は臨時的なものであることに鑑み、緊急事態宣言対象地域又はまん延防止等重点措置区域の指定から外れた場合には、地域の感染拡大を防止するために必要な検査を保健所が主体的に行えるよう、直ちに保健所内の業務体制を見直すようお願いいたします。

【参考】
上記に関連した事例として、緊急事態宣言対象地域、又はまん延防止等重点措置区域において、あらかじめ地域の医師会や医療機関との間で濃厚接触者の判断に関する聞き取りを医療機関に委託する旨合意し体制を構築した上で、医療機関が聞き取りを行っている自治体もあります。なお、このような仕組みで濃厚接触者の判断に関する聞き取りを行った者についても、医療機関からその情報を保健所に共有の上、保健所は、濃厚接触者の認定を含め必要な対応を行ってください。

(事例)
・ 無症状の受診者から、同居者や同僚に陽性者が確認されたため濃厚接触者の可能性があるとして検査や受診の申し出があった場合に、医療機関と保健所の事前の取り決めに基づき、医療機関が当該受診者について保健所に代わって濃厚接触者の判断に関する聞き取りを行い、検査を実施する場合

(別添)事業所に対して濃厚接触者等の候補となる範囲を示す場合の例

患者の濃厚接触者の候補及び患者周辺の検査対象者の候補の範囲は、患者の感染可能期間のうち当該患者が入院、宿泊療養又は自宅療養を開始するまでの期間※1において、以下のいずれかに該当する者とする。
※1 感染可能期間は、発症2日前(無症状病原体保有者の場合は、陽性確定に係る検体採取日の2日前)から退院又は宿泊療養・自宅療養の解除の基準を満たすまでの期間とされている。

【濃厚接触者の候補】
・ 患者と同居していた者
・ 適切な感染防護なしに患者を診察、看護若しくは介護していた者
・ 患者の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
・ 手で触れることの出来る距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策なし※2で、患者と15分以上の接触があった者
※2 必要な感染予防策については、単にマスクを着用していたかのみならず、いわゆる鼻出しマスクや顎マスク等、マスクの着用が不適切な状態になかったかについても確認する。

【患者周辺の検査対象者の候補】
いわゆる「三つの密(密閉、密集、密着)」となりやすい環境や、集団活動を行うなど濃厚接触が生じやすい環境、同一環境から複数の感染者が発生している事例において、
・ 感染者からの物理的な距離が近い(部屋が同一、座席が近いなど)者
・ 物理的な距離が離れていても接触頻度が高い者
・ 寮などで感染者と食事の場や洗面浴室等の場を共有する生活を送っている者
・ 換気が不十分、三つの密、共用設備(食堂、休憩室、更衣室、喫煙室など)の感染対策が不十分などの環境で感染者と接触した者

【同一労働同一賃金】トーカロ事件(東京高判令3.2.25労経速2445号3頁)

同一労働同一賃金】トーカロ事件(東京高判令3.2.25労経速2445号3頁)

1.事件の概要

本件は、金属等の表面処理加工業を業とするY社との間で有期労働契約を締結した嘱託社員である✕が、基本給及び賞与が正社員よりも低額であること、地域手当を支給されなかったことが労働契約法20条に違反すると主張して、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求する事案である。
Y社においては、業務の範囲に限定がなく、製造や生産技術、品質管理、研究開発から営業、管理に至るまで幅広い業務を担当する可能性のあるDコース正社員、一部を除きDコース正社員の補助的業務を担当するAコース正社員、さらにAコース正社員よりも限定された範囲で、正社員の補助的業務を行う嘱託社員という雇用管理区分・雇用形態が設けられいた。
そして、Aコース正社員と嘱託社員との間には、担当業務の範囲が限定され、役職への就任及び管理職への昇任が予定されていないなどの共通点があったが、上記記載のように担当業務の範囲に相違があった。またAコース正社員には職能資格制度が採用され、同制度を通じた職務遂行能力の向上、教育、評価等が予定されているのに対し、嘱託社員には同制度が採用されていないという点でも相違があり、人事評価の対象、項目及び評価方法並びに採用手続も異なっていた。
原審は、基本給、賞与、地域手当について、いずれの相違も不合理ではないとして✕の請求を棄却したため、✕はこれを不服として控訴するとともに、平成28年2月から令和2年4月までの期間について損害賠償の請求を拡張した。

2.判決の概要

当裁判所も、当審において拡張された請求も含めて、✕の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり原判決を補正し、次項のとおり当審における✕及びY社の補充主張に対する判断を付加するほか、原判決の「事実及び理由」の欄の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるからこれを引用する。

①比較対照(対象)者

✕は、✕と比較対照されるべき労働者について、Aコース正社員であるP1ら4名の労働者であると主張するのに対し、Y社は、労契法20条は同一の使用者との間で労働契約を締結する有期契約労働者一般と無期契約労働者一般との間の労働条件の格差を問題とする規定であり、特定の有期契約労働者と特定の無期契約労働者との間の労働条件の相違を問題とする規定ではないから、同条の適用に当たり比較対照すべき無期雇用労働者は、原則として、無期契約労働者一般と解すべきであり、人事施策上、コースやグループ等の区分がある場合において、コースやグループ間の変更が予定されていないときは、例外的に、担当業務や異動等の範囲が類似する無期契約労働者と比較対照すべきであると主張する。
そこで検討するに、同条は、有期労働契約を締結した労働者と無期労働契約を締結した労働者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ、有期労働契約を締結した労働者の公正な処遇を図るため、その労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものであり、その趣旨は、有期労働契約を締結した労働者に対する一切の不合理な差別を防止しようとするものであって、同条の文言を見ても、比較対照する者を一定の範囲の者に限定すべき根拠は見出し難い。そうすると、比較対照すべき無期雇用労働者は、当該有期雇用労働者と同一の使用者との間で労働契約を締結した通常の無期契約労働者の全部又は一部と解するのが相当である。そして、実際の民事手続においては、無期契約労働者との関係で自己の労働条件の適正さに不満をもつ有期契約労働者が、職務の内容、職務内容と配置の変更範囲、その他の事情という判断要素に照らして自己が同じ労働条件を享受すべきと考える無期契約労働者の範囲(グループ)を選択して本条の適用を主張することを踏まえれば、当該有期契約労働者によって労働条件の相違が不合理であると主張される無期契約労働者(本件ではP1ら4名)との間において、その主張の当否を検討することになるものと解される。ただし、その際には、労契法20条所定の考慮要素に関連する人事上の施策等を含む諸事情を幅広く総合的に考慮し(例えば、職務の責任の程度は、当該労働者にどのような役割が期待されているかという当該事業者の人事上の施策の内容の差異と表裏の関係にある。)、当該労働条件の相違が、当該事業者の経営又は人事上の施策として不合理なものか否かを判断するのが相当である。

②職務の内容の相違

✕は、嘱託社員として、平成24年4月にQ1工場の営業部から製造業務を担当する製造部に所属が変更となり、P1に対し、営業部の業務を引き継ぎ、P4から製造部の業務の引継ぎを受けた。
しかし、そもそも、担当業務を引き継いだ一時点において、職務の内容が共通するものが相応に見られたとしても、担当する職務の内容は、時の経過に伴い変化するものであり、現に、既に指摘したとおり、✕が関与した営業部及び製造部の事務の内容も時の経過に伴い、一部とはいえ、その内容が変化していったことも考慮すると、自己の事務について、Aコース正社員に引き継ぎ、また、Aコース正社員から引き継いだからといって、そのことをもって自己の職務の内容とAコース正社員の職務の内容が同一であると認めることは困難である。
加えて、Y社のAコース正社員は、人事制度に基づき、昇任、昇格等による担当業務の変更があり得るとされ、その変更の可能性があることを前提に労働条件が規定され、実際にもそのような運用がされているのであるから、ある特定の時点においてAコース正社員と✕の担当業務に共通するものが含まれていたからといって、労契法20条の適用において、そのことのみをもって職務の内容が同一であると認めることは困難であるといわざるを得ない。
以上によれば、Y社において、P1ら4名を含むAコース正社員と嘱託社員である✕の職務の内容が同一であるとまで認めることができない。

③基本給について

Y社においては、正社員について、職務遂行上の能力向上意欲を持たせるとともに、正社員の能力向上に結び付く教育制度を設け、配置転換を実施するため、正社員の能力を質的に分類し、それぞれの分類における能力の進展態様を明らかにすることにより、広く人事管理の合理的運用に資することを目的として、職能資格制度が採用されている。職能資格等級は、Dコース正社員については9段階に、Aコース正社員については5段階に分かれており、能力の有無等に応じ昇格、降格されることがあるほか、職能資格等級と役職との間には対応関係があり、Dコース正社員は、職能資格等級の上昇に伴い、班長や主任といった役職を経験した後、管理職へ昇任し、マネージャー、次長、部長等へと役割及び職責が大きくなっていくことが予定されており、また、Aコース正社員は、到達し得る職能資格等級が限定されており、役職への就任及び管理職への昇任は予定されていないが、Aコースにおける最高の職能資格等級であるA1に該当するAコース正社員は、S2に該当するDコース正社員と同様の専門的知識及び能力が求められている。そのための人事評価については、いずれのコースの正社員とも、業績のみならず、いずれ業績に貢献することが予想される中間成果や行動も評価の対象となる。
このような人事上の施策の下で、一般職正社員に支給される本人給は生活給的なものであり、職能給は割り当てられた職務の複雑さ及び責任の度合並びに本人の勤務態度及び保有能力に応じ決定されるものであって、Y社において採用されたこのような本人給及び職能給からなる一般正社員の賃金体系は、Y社における上記昇任昇格や人事評価の仕組みを実効的なものとするため、長期間の雇用が制度上予定され、雇用期間を通じた能力及び役割の向上が期待されている正社員について、年齢に応じた処遇により長期雇用に対する動機付けを図るとともに、能力等に応じた処遇により意欲、能力等の向上を促すためのものということができる。
そして、労契法20条所定の「職務の内容等」をみると、業務の内容については、嘱託社員である✕はAコース正社員よりもさらに限定された範囲において正社員の補助的業務を行うことが予定されているのに対し、✕と同年齢の一般正社員にはDコース正社員もおり、同正社員にはY社における全業務を行うこととされていて、その内容は大きく異なるといえる。他方、P1ら4名が所属し又は所属していたAコース正社員の業務と嘱託社員の業務には共通する部分がある上、✕が平成24年4月にQ1工場の製造部に所属が変更となり、P1に対し営業部の業務を引き継ぎ、P4から製造部の業務の引継ぎを受けたとの事実からすると、同条の施行後である平成25年4月以降、Q1工場において実際に両者が行っていた業務の内容についても共通する部分が相応にあったということができる。他方、責任の程度については、✕と同年齢の一般正社員やP1ら4名と嘱託社員である✕との間で業務の責任の程度に差がないといった事情は見当たらず、かえって、平成24年2月の配置換え以降のP1において、また、配置換え以前のP4においても、自らの担当業務についてそれぞれ積極的に改善を行っていたことが認められるところ、かかる事実からすれば、同人らを始めとするAコース正社員には、事務の効率化や改善の提案を行うことが役割として期待され、その責任を負っていたものと推認することができる。そうすると、上記のとおり、✕とP1ら4名との間においては、期待される役割との関係で責任の程度に違いがあったと認められる。
さらに、嘱託社員である✕については、本件有期就業規則5条1項は「有期雇用契約者が従事すべき業務の内容は、会社が採用の際に書面によって明示する。」と、同就業規則7条は「有期雇用契約者は、採用にあたって会社が指示した事業所において、業務に従事するものとする。」と定められているほか、証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば、正社員と異なり、嘱託社員が転勤及び配置転換を命じられることはないなど、両者には「配置の変更の範囲」に少なからぬ相違があったものと認められる。
また、Y社においては、有期雇用社員への正社員への登用制度が存在し、同制度が実際にも機能しており、嘱託社員には同制度によって正社員との相違を解消する機会が与えられていること、本件給与規程によれば、一般正社員の基本給のうち、本人給は50歳に達した日以降に初めて到来した4月1日をもって、職能給は55歳に達した日より前に到来した直近の4月1日をもって、それぞれ昇給が停止するのに対し、嘱託社員の場合にはそのような制限はなく、✕の基本給は実際にY社が50歳に達した以降も増額改定されていたことなどの事情も、労契法20条所定の「職務の内容等」として考慮することが相当である。
そうすると、Y社において賃金体系が採用された趣旨や目的も踏まえて、✕、✕と同年齢の一般正社員又はP1ら4名との間で✕が主張するような基本給の差額が生じているとしても、本人給における✕と✕と同年齢の一般職正社員との条件の相違が不合理であると評価することはできないというべきであるし、職能給における✕とP1ら4名との条件の相違が不合理であると評価することもできないというべきである。

④賞与について

✕と正社員であるP1ら4名との間には、実際に行われていた業務の内容に共通する点が相応にみられるものの、責任の程度や配置の変更の範囲には一定の相違があったことが認められる。また、嘱託社員である✕には正社員への登用制度により正社員であるP1ら4名との間の相違を解消する機会が与えられている。さらに、✕には本件労働契約に基づき、1年間に基本給の3か月分相当の賞与が間断なく支給されていた事実が認められ、これらの事情は、労契法20条所定の「職務の内容等」として考慮するのが相当である。
そうすると、Y社における正社員に対する賞与の性質やこれを支給する目的を踏まえて、嘱託社員である✕と正社員であるP1ら4名の「職務の内容等」の事情を考慮すれば、両者の賞与の実際の支給額に関する相違は、不合理であるとまで評価することはできない。

⑤地域手当について

地域手当導入の趣旨を踏まえ、同手当が廃止された経緯等の情報を労契法20条所定の「職務の内容等」として考慮すると、Y社において、嘱託社員である✕と関東地区に居住する正社員との間に地域手当の支給に関し差異が生じていることは、不合理であると評価することができない。

3.解説

比較対象者について、「実際の民事手続においては、無期契約労働者との関係で自己の労働条件の適正さに不満をもつ有期契約労働者が、・・・労働条件の相違が不合理であると主張される無期契約労働者(本件ではP1ら4名)との間において、その主張の当否を検討することになる。」としています、比較対象者は原告の選択によって検討することとしています※。その一方で、「労契法20条所定の考慮要素に関連する人事上の施策等を含む諸事情を幅広く総合的に考慮し、当該労働条件の相違が、当該事業者の経営又は人事上の施策として不合理なものか否かを判断する。」としており、例えば、比較対象者が同様の仕事をしていたとしても、人事上の施策等を含む諸事情(例えば、ジョブローテーション等)でたまたまた同じであっただけである場合は、それらの事情も考慮して、労働条件の相違の不合理性を判断するとしています。
これは、大阪医科薬科大学事件及びメトロコマース事件と同様の論法であると考えられます。(いずれも、原告が主張する類似した業務内容の比較対象者との比較で不合理性を判断していますが、責任の程度や配置転換の有無等を理由に不合理でないとしています。)
そして、人事上の施策等を含む諸事情を具体的に見ていくと、不合理でないという結論が、かなり説得力をもって導出されています。
裁判は、主張とそれに対する証拠の評価で決まるため、実際のところどうだったのかは単なる想像ですが、現在は義務化されている「待遇差に対する説明責任」を会社が適切に行っていれば裁判にまではならなかったかも知れません。

厚生労働省ガイドラインでは、比較対象者は全ての労働者とされています。裁判では、主張したことが争われるため、実際の民事手続においては、全ての労働者の中から原告が選択した対象者について判断することになります。

当ブログが1000ページを超えましたのでアクセス解析等を公開

当ブログが1000ページを超えましたのでアクセス解析等を公開

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当ブログは、多くの人と社会保険労務士の業務に関する知識を共有したいと考え、プログラマが利用している「Qiita」のイメージで備忘録を公開する感じで、2年半程前に書き始めたのですが、いつの間にか情報発信のような形になり、気付けば1000ページを超えていました。

1000ページを超えるブログはあまりないでしょうから、せっかくなのでアクセス解析等を公表いたします。

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1000ページあってもアクセス数はあまり多くなく、1日に200PVから300PV程度です。
特徴としては、平日にアクセスが集中しており、土日は100PVにも達していません。

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そして、時間帯を見てみると昼間にアクセスが集中していることがわかります。

つまり、ウィークデーの昼間に集中していることから、閲覧してくださっている方の多くは、同業者か一般企業の人事や総務系の方で、仕事中に情報収集等の目的で利用しているものと推測できます。

私が意図したとおり、多くの人と社会保険労務士の業務に関する知識を共有するブログになっているものと思われ、これは非常にうれしい限りです。まあ、記載している内容からすれば、休日や余暇に読むような内容ではありませんが・・・

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なお、どの検索エンジンから流入が多いか見てみると、「Bing」が最も多くなっています。恐らく、本ブログは無料のはてなブログを利用しているため、広告等で重たくなっており、Google検索エンジンで避止されているものと思われます。
有料プランに変更すべきか悩ましいところです。

今後とも、積極的に記事の記載や情報発信をおこなっていきますので、よろしくお願いいたします。

「年金復活プラン」の年間計画表作成エクセルシート公開について

「年金復活プラン」の年間計画表作成エクセルシート公開について

「年金復活プラン」の年間計画表作成エクセルシートをGithub上に公開しましたので、ご自由にご活用ください。
なお、十分に注意して作成していますが、計算の間違い等があったとしても、作成者は一切の責任を負いませんので、検算等をしながら利用してください。

ダウンロード先
https://github.com/Mkawaguti/book_zaisyokunennkin

使い方はこちらのKindle本をご購入下さいと言いたいところですが、概要を説明します(笑)

1.シートの構成

Excelファイルは、次の3つのシートから構成されています。

①「最初に入力」
 計画表の期間、社会保険料率や老齢厚生年金の比例報酬部分等を最初に入力するシートです。

②「年間計画表」
 各月の役員報酬や標準報酬月額等及び役員賞与の支給月や支給額等を入力するシートです。

③「効果検証」
 年間計画表による効果を表示するシートです。年間の社会保険料の削減や老齢厚生年金受給額等が表示されます。また、年間計画表の期間を暦年の1年とみなした所得税額や年末調整の還付・徴収額等も表示されます。

2.Excelファイルを利用する際の注意

① 役員賞与は年間1回のみの支給しか対応していません。
社会保険料率は「最初に入力」シートで入力した数値を用いて計算されます。
源泉徴収税額表や所得税率等は2021年のものを用いています。
④ 健康保険の標準賞与の限度額は、1回当たり573万円で計算しており、年度単位で 役員賞与が2回以上ある場合は、社会保険料源泉徴収額が正しく計算されません。
⑤ シートの保護とブックの保護を行っていますが、シートの保護にはパスワードを設定していません。④のように、本シートで正確に計算することができない場合は、必要に応じて関数を変更して利用してください。
⑥ 65歳未満の年間計画表が2022年4月以降にかかる場合は、法改正に対応した計算が行われます(自動的に65歳以上と同じ計算が行われます)。
⑦ 計算の間違い等があったとしても、作成者は一切の責任を負いませんので、検算をしながら利用してください。

3.使用方法

65歳以上のシートを例にして説明します。

ダウンロードの方法

Excelファイルは、こちらのURLからダウンロードできます。
https://github.com/Mkawaguti/book_zaisyokunennkin

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65歳以上用と65歳未満用がありますので、必要な方をクリックしてダウンロードして利用してください。
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「最初に入力」シート

「最初に入力」シートは図7.1のようになっています。ピンク色のセルが、利用者が入力する部分になります。
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各項目は、次のようになっています。

① 計画表の期間
計画の開始年月:作成しようとする年間計画の最初の月を入力します。
計画の終了年月:年間計画の最後の年月が自動表示されます。


② 社会保険の保険料率
※65歳未満の場合は、介護保険料率の入力欄もあります。

健康保険保険料率:適用される健康保険の保険料率を入力します。
※事業主負担分も含む料率を入力します。

厚生年金保険保険料率:適用される健康保険の保険料率を入力します。
※事業主負担分も含む料率を入力します。


③ 厚生年金の額
※65歳未満の場合は、経過的加算と加給年金の入力欄はありません。

厚生年金比例報酬部分:老齢厚生年金の比例報酬部分を年額で入力します。
基金代行部分がある場合は、その年額も加算して入力します。

経過的加算:経過的加算の年額を入力します。
※経過的加算の金額が不明な場合は、入力しなくも構いません(経過的加算が実際にあった場合は、計画は保守的な内容になります)

加給年金:加給年金の年額を入力します。


④ 前年の役員賞与の支給
※主に2年目以降の計画表の作成の際に利用します。
支給月:計画の開始年月から1年以内に役員賞与の支給がある場合に、その支給月を入力します。
※1年以内に2回以上の役員賞与がある場合には対応していません。

支給金額:計画の開始年月から1年以内に役員賞与の支給がある場合に、その支給額を入力します。

「年間計画」シート

「年間計画」シートの上部は、図7.2のようになっています。オレンジ色のセルが、利用者が入力する部分になります。
f:id:sr-memorandum:20210630221732p:plain

各月の役員報酬支給額と標準報酬月額及び扶養親族等の数を入力すれば、各月の社会保険料等や源泉所得税等が自動的に計算されます。
また、各月の老齢厚生年金受給額も自動計算されますが、役員賞与支給月以降はシート下部で役員賞与についての情報を入力しないと、正しい金額が計算されません。

「年間計画」シートの下部は図7.3のようになっています。毎月の役員報酬の入力内容は上部と同じです。
f:id:sr-memorandum:20210630221820p:plain

賞与については、支給月、支給額及び扶養親族等の数を入力するだけですが、賞与支給前月の情報を別途入力する必要があります。
利用者にはお手数をおかけするところですが、賞与の源泉所得税を自動計算するため、「賞与支給額の情報」の欄に、賞与支給月の前月の役員報酬、健康保険保険料、厚生年金保険料及び源泉徴収の額を入力してください。

「効果検証」の使用方法

「年間計画」シートの上部は、図7.4のようになっています。前年の年間の報酬額や社会保険料額等、オレンジ色のセルが、利用者が入力する部分になります。1年目の計画表を作成する場合であれば、役員報酬を減額より前の月の役員報酬社会保険料等の額に12を乗じた額を入力すれば、効果を検証することができます。
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令和2年度「能力開発基本調査」の結果について

令和2年度「能力開発基本調査」の結果について

厚生労働省より、令和2年度「能力開発基本調査」の結果が公表されています。
能力開発基本調査は、国内の企業・事業所と労働者の能力開発の実態を明らかにし、今後の人材育成施策の在り方を検討するための基礎資料とすることを目的に、平成13年度から毎年実施されています。

概要を抜粋いたしますので、詳細はリンクをご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/11801500/000796024.pdf


(結果の概要)

【企業調査】

1.教育訓練費用(OFF-JT費用や自己啓発支援費用)を支出した企業は49.7%(前回57.5%)。
2.事業内職業能力開発計画の作成を行っている企業は22.1%(前回22.9%)。
  職業能力開発推進者の選任を行っている企業は18.8%(前回19.8%)。
3.教育訓練休暇制度を導入している企業は8.8%(前回8.5%)。
  教育訓練短時間勤務制度を導入している企業は6.7%(前回6.4%)。

【事業所調査】

1.計画的なOJTについて、正社員に対して実施した事業所は56.5%(前回64.3%)、正社員以外に対して実施した事業所は22.3%(前回26.5%)
2.能力開発や人材育成に関して、何らかの問題があるとする事業所は74.9%(前回76.5%)。
3.キャリアコンサルティングを行うしくみを、正社員に対して導入している事業所は37.8%(前回39.4%)、正社員以外に対して導入している事 業所は24.9%(前回27.0%)。

【個人調査】

1.OFF-JTを受講した労働者は29.9%(前回35.3%)。
・雇用形態別では「正社員」(37.7%)が「正社員以外」(16.3%)より高い。
・性別では「男性」(36.6%)が「女性」(22.7%)よりも高い。
・最終学歴別では「中学・高等学校・中等教育学校」(24.2%)が最も低く、「大学院(理系)」(50.0%)が最も高い。

2.自己啓発を実施した労働者は32.2%(前回29.8%)。
・雇用形態別では「正社員」(41.4%)が「正社員以外」(16.2%)より高い。
・性別では「男性」(40.0%)が「女性」(23.6%)よりも高い。
・最終学歴別では「中学・高等学校・中等教育学校」(21.8%)が最も低く、「大学院(理系)」(67.6%)が最も高い。

令和2年度「個別労働紛争解決制度の施行状況」について

令和2年度「個別労働紛争解決制度の施行状況」について

厚生労働省より、「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が公表されています。。
「個別労働紛争解決制度」は、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルを未然に防止し、早期に解決を図るための制度で、「総合労働相談※1」、都道府県労働局長による「助言・指導※2」、紛争調整委員会による「あっせん※3」の3つの方法あります。世の中ではあまり知られていないようですが、「あっせん」については、私のような特定社会保険労務士代理人となって行うことができます。

概要を抜粋いたしますので、詳細はリンクをご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_19430.html

概要

1.総合労働相談件数は前年度より増加。助言・指導申出の件数、あっせん申請の件数は前年度より減少。総合労働相談件数は129万782件で、13年連続で100万件を超え、高止まり。
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2.民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導の申出件数、あっせんの申請件数の全項目で、「いじめ・嫌がらせ」の件数が引き続き最多※5
・民事上の個別労働紛争の相談件数では、79,190件(前年度比9.6%減)で9年連続最多。
・助言・指導の申出では、1,831件(同29.4%減)で8年連続最多。
・あっせんの申請では、1,261件(同31.4%減)で7年連続最多。


※1 「総合労働相談」
都道府県労働局、各労働基準監督署内、駅近隣の建物など379か所(令和3年4月1日現在)に、あらゆる労働問題に関する相談にワンストップで対応するための総合労働相談コーナーを設置し、専門の相談員が対応。
なお、平成28年度から、都道府県労働局の組織見直しにより「雇用環境・均等(部)室」が設置され、これまで「雇用均等室」で対応していた男女雇用機会均等法等に関しても一体的に労働相談として対応することになったため、それらの相談件数も計上されている。
※2 「助言・指導」
民事上の個別労働紛争について、都道府県労働局長が、紛争当事者に対して解決の方向を示すことで、紛争当事者の自主的な解決を促進する制度。助言は、当事者の話し合いを促進するよう口頭または文書で行うものであり、指導は、当事者のいずれかに問題がある場合に問題点を指摘し、解決の方向性を文書で示すもの。
※3 「あっせん」
都道府県労働局に設置されている紛争調整委員会のあっせん委員(弁護士や大学教授など労働問題の専門家)が紛争当事者の間に入って話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度。
※4 「民事上の個別労働紛争」
労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争(労働基準法等の違反に関するものを除く)。
※5 令和2年6月、労働施策総合推進法が施行され、大企業の職場におけるパワーハラスメントに関する個別労働紛争は同法に基づき対応することとなったため、同法施行以降の大企業の当該紛争に関するものはいじめ・嫌がらせに計上していない。なお、同法違反の疑いのある相談は「労働基準法等の違反の疑いがあるもの」として計上している(以下、本資料において同じ。)。
<参考>
同法に関する相談件数:18,363件
同法に基づく紛争解決の援助申立件数:308件
同法に基づく調停申請受理件数:126件

「顔認識・撮影を用いた勤怠管理ツールによる労働時間把握について」グレーゾーン解消制度における照会

「勤怠管理ツールによる労働時間把握について」グレーゾーン解消制度における照会

「グレーゾーン解消制度」とは

産業競争力強化法に基づく制度で、事業に対する規制の適用の有無を、事業者が照会することができる制度です。
事業者が新事業活動を行うに先立ち、あらかじめ規制の適用の有無について、政府に照会し、その新事業活動に対する規制の適用の有無について、回答するものです。
なお、本制度における回答は、あくまで該当法令における取り扱いについてのみ判断したものであり、他の法令等における判断を示すものではありません。当然、司法機関の判断ではありません。

照会の内容

https://www.meti.go.jp/press/2021/06/20210625008/20210625008-1.pdf
労働安全衛生法及び同規則は、面接指導を実施するため、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録等の客観的な方法その他の適切な方法により、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない旨を定めています。
本件は、顔認証による出退勤管理が「客観的な方法その他の適切な方法」に当たるかを照会したものです。
結論としては、「客観的な方法その他の適切な方法」に該当するとされており、近い将来、顔認証による勤怠管理が実現されるかも知れません。

1.確認の求めを行った年月日

令和3年5月25日

2.回答を行った年月日

令和3年6月25日

3.新事業活動に係る事業の概要

申請者は、労働者が始業・終業の際に通過する出入口等の場所に撮影機器を設置し、顔認識・撮影がなされた時刻を客観的な記録として用いる勤怠管理ツールを提供するサービスを検討している。
本サービスの具体的な手続きの流れは以下のとおりである。
① あらかじめ労働者の顔を撮影して本サービス上で登録し、労働者が始業・終業の際に通過する出入口等の場所に撮影機器を設置する。
② 管理者は、各労働者の予定始業時刻及び予定終業時刻(以下「予定時刻」という。)を、本サービス上に登録する。
③ 出勤日において、労働者ごとに、出勤・退勤の際に当該撮影機器の前を通過したときに、顔認識・撮影がなされ、その時刻(以下「撮影時刻」という。)が記録される。
④ 出勤日の翌日、各労働者に予定時刻及び撮影時刻が通知される。各労働者は、撮影時刻を始業時刻・終業時刻とすることでよいか確認し、確認した旨を管理者に通知する。
この時、撮影時刻が実態の始業時刻・終業時刻と異なる場合など、やむを得ない場合には、修正理由を付記した上で、各労働者本人が修正の申告をする。
⑤ 管理者が、予定時刻及び撮影時刻(又は上記④により修正申告された時刻)を確認し、撮影時刻(又は修正申告時刻)を承認する。これにより、承認した時刻が、各労働者の労働時間(始業時刻及び終業時刻)として確定する。
※ なお、上記においては、客観的な記録に基づくことを原則としつつ、自己申告制を併用しており、“労働者による自己申告”の性質があるため、労働安全衛生法に基づく「労働時間の状況」の把握について、平成30年12月28日基発1228第16号(平成31年3月29日改正)の「第2 面接指導等(労働安全衛生法令関係)」の答12において掲げられている各種措置に準じた措置を、顧客が適切に講じていることを前提とする。

4.確認の求めの内容

顧客が、本サービスによって行う、その雇用する労働者の労働時間の把握が、労働安全衛生法に基づく「労働時間の状況」の把握方法として適切なものであることを確認したい。

5.確認の求めに対する回答の内容

労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「安衛法」という。)第66条の8の3及び労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第52条の7の3第1項の規定により、事業者は、安衛法第66条の8第1項又は安衛法第66条の8の2第1項の規定による面接指導を実施するため、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録等の客観的な方法その他の適切な方法により、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない。
働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について」(平成30年12月28日付け基発1228第16号(平成31年3月29日改正)。以下「解釈通達」という。)において、「その他の適切な方法」としては、やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合において、労働者の自己申告による把握が考えられるが、その場合には、事業者は、自己申告により把握した労働時間の状況が実際の労働時間の状況と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の状況の補正をするなどの措置を講じる必要があるとされている。
なお、「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」としては、例えば、労働者が事業場外において行う業務に直行又は直帰する場合など、事業者の現認を含め、労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合があり、この場合に該当するかは、当該労働者の働き方の実態や安衛法の趣旨を踏まえ、適切な方法を個別に判断することとされている。
ただし、労働者が事業場外において行う業務に直行又は直帰する場合などにおいても、例えば、事業場外から社内システムにアクセスすることが可能であり、客観的な方法による労働時間の状況を把握できる場合もあるため、直行又は直帰であることのみを理由として、自己申告により労働時間の状況を把握することは、認められない。
また、タイムカードによる出退勤時刻や入退室時刻の記録やパーソナルコンピュータの使用時間の記録などのデータを有する場合や事業者の現認により当該労働者の労働時間を把握できる場合にもかかわらず、自己申告による把握のみにより労働時間の状況を把握することは、認められない。
本サービスは、客観的な記録を基礎としつつ、やむを得ない場合に限り、労働者が自らの労働時間の状況を自己申告するものであり、解釈通達に記載の所要の措置が講じられていることを前提とするものである。したがって、本サービスによって把握された労働時間の状況は、解釈通達に記載の内容を満たすものであり、安衛法の違反はない。