社会保険労務士川口正倫のブログ

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新型コロナの影響に伴う休業による健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額の特例改定の延長

新型コロナの影響に伴う休業による健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額の特例改定の延長

2021年(令和3年)4月から2021年(令和3年)7月までの間に、新型コロナウイルス感染症の影響により休業した方で、報酬が著しく下がった方のうち、一定の条件に該当する場合は、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額を、通常の随時改定(4か月目に改定)によらず、特例により翌月から改定可能です。
(なお、2021年(令和3年)1月から3月までの間に休業により報酬が著しく下がった方についても、2021年(令和3年)5月末まで申請が可能です)

対象となる方

新たに休業により報酬が著しく低下した方の特例(次のすべてに該当する方が対象)
新型コロナウイルス感染症の影響による休業(時間単位を含む)があったことにより、2021年(令和3年)4月から2021年(令和3年)7月までの間に、報酬が著しく低下した月が生じた方
・著しく報酬が低下した月に支払われた報酬の総額(1か月分)が、既に設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がった方※固定的賃金(基本給、日給等単価等)の変動がない場合も対象となります。
・本特例措置による改定内容に本人が書面により同意している
※被保険者本人の十分な理解に基づく事前の同意が必要となります。
(改定後の標準報酬月額に基づき、傷病手当金、出産手当金及び年金の額が算出されることへの同意を含みます。)
標準報酬月額が下がると、傷病手当金、出産手当金及び年金の額が下がります。

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対象となる保険料

休業により報酬等が急減した月の翌月以降の保険料が対象となります。
※2020年(令和3年)9月末日までに届出があったものが対象となります。それまでの間は遡及して申請が可能ですが、給与事務の複雑化や年末調整等への影響を最小限とするため、改定をしようとする場合はできるだけ速やかに提出することをお勧めします。

申請手続について

月額変更届(特例改定用)に申立書を添付し管轄の年金事務所に申請してくだい。

 申請期限:2021年(令和3年)9月30日(必着)
※管轄の年金事務所へ郵送してください。(窓口へのご提出も可能です。)
※届書及び申立書については日本年金機構ホームページからダウンロードできます。
※本特例措置は、同一の被保険者について複数回申請を行うことはできません。
※令和3年1月から3月までの間に休業により報酬が下がった方についても、令和3年5月末まで申請を受け付けています。

標準報酬月額の特例改定の延長等に係るQ&A

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2020/0930.files/QA.pdf

【制度等について】

Q1 令和2年8月から令和3年7月までを急減月とした特例改定は、どのような要件に該当した方が対象になりますか。令和2年4月から7月までを急減月とした特例改定から変更はありますか。

A1 令和2年4月から7月までを急減月とした特例改定の対象と同様に、次のいずれにも該当する健康保険・厚生年金保険被保険者及び厚生年金保険70歳以上被用者が対象となります。(急減月または改定月が資格喪失した月に該当する方は対象に含まれません。)
① 事業主が新型コロナウイルス感染症の影響により休業させたことにより、報酬が著しく下がった月(急減月)が生じた方であること。
② 急減月に支払われた報酬の総額に該当する標準報酬月額が、既に設定されている標準報酬月額に比べて、2等級以上下がっている方(※)であること。
③ 本特例改定による改定を行うことについて、本人が書面で同意している方であること。
なお、通常の随時改定の場合とは異なり、急減月に固定的賃金(日給等の単価)の変動があったか否かは問いません。また、給与計算の基礎日数(17日以上)についても、事業主からの休業命令や自宅待機指示などがあり、その間、使用関係が継続していれば、賃金の支払状況にかかわらず、休業した日を報酬支払の基礎となった日数として取り扱って差し支えありません。

※ 2等級以上下がった方には、次の場合も含みます。
(令和2年8月を急減月とする場合)
・ 健康保険第50級または厚生年金保険第31級の標準報酬月額にある方の報酬月額(健康保険にあっては報酬月額が141万5,000円以上、厚生年金保険にあっては報酬月額が63万5,000円以上である場合に限る。)が降給したことにより、その算定月額が健康保険第49級または厚生年金保険第30級以下の標準報酬月額に該当することとなった場合。
・ 第2級の標準報酬月額にある方の報酬月額が降給したことにより、その算定月額が健康保険にあっては5万3,000円未満、厚生年金保険にあっては8万3,000円未満となった場合。

(令和2年9月から令和3年7月までを急減月とする場合)
・ 健康保険第50級または厚生年金保険第32級の標準報酬月額にある方の報酬月額(健康保険にあっては報酬月額が141万5,000円以上、厚生年金保険にあっては報酬月額が66万5,000円以上である場合に限る。)が降給したことにより、その算定月額が健康保険第49級または厚生年金保険第31級以下の標準報酬月額に該当することとなった場合。
・ 第2級の標準報酬月額にある方の報酬月額が降給したことにより、その算定月額が健康保険にあっては5万3,000 円未満、厚生年金保険にあっては8万3,000 円未満となった場合。
※ 急減月に、報酬が全く支払われていない方については、第1級の標準報酬月額として取り扱うこととなります。
また、令和2年4月または5月を急減月として特例改定を既に受けた方のうち、次のいずれにも該当する健康保険・厚生年金保険被保険者及び厚生年金保険70 歳以上被用者については、令和2年8月の報酬総額により定時決定における保険者算定の特例の対象となります。(令和2年8月または9月が資格喪失した月に該当する方は対象に含まれません。)

① 令和2年4月または5月を急減月として特例措置による改定を受けた方であること。
② 令和2年8月に支払われた報酬の総額に該当する標準報酬月額が、令和2年9月の定時決定において決定される標準報酬月額に比べて、2等級以上低い方であること。
③ 定時決定における保険者算定の特例を行うことについて、本人が書面で同意している方であること。


Q2 「急減月」の考え方に変更はありますか。

A2 急減月の考え方に変更はなく、令和2年8月から令和3年7月までの間の1 か月であって、休業により報酬が著しく下がった月として事業主が届け出た月を指します。


Q3 新型コロナウイルス感染症の影響により「休業があった者」が対象となっていますが、考え方に前回の特例改定から変更はありますか。

A3 「休業があった者」の考え方に変更はありません。
休業とは、労働者が事業所において、労働契約、就業規則労働協約等で定められた所定労働日に労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、当該所定労働日の全1日にわたり労働することができない状態または当該所定労働日の労働時間内において1時間以上労働することができない状態をいいます。
このため、事業主からの休業命令や自宅待機指示などにより休業状態にあった方(1か月のうちに1時間でも休業のあった方)が、本特例改定における「休業があった者」となります。
また、日給や時間給の方が、事業主からの命令や指示等により、通常の勤務やシフトによる日数や時間を短縮し、短時間休業が行われることとなった場合も、
本特例改定における「休業があった者」として差し支えありません。


Q4 「休業が回復した月」の考え方について変更はありますか。

A4 「休業が回復した月(※1及び※2)」の考え方に変更はありません。
特例改定の原因となった休業が生じた月と比べて、休業状態にある日数または1日当たりの休業時間の減少が生じるなど、休業状況に何らか改善が見られ、報酬支払の基礎となった日が17 日以上となった場合が休業が回復した場合に当たり、休業が回復した月(報酬の支払の基礎となった日数が17日以上でなければなりません。)に受けた報酬の総額が、その方の標準報酬月額(本特例改定による改定後の標準報酬月額)に比べて2等級以上上がった場合(※3)に、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、届出を行うこととしています。
このため、例えば、休業があっても、実際に何らかの報酬が支払われ、その報酬の支払の基礎となる日数が17日以上あれば、休業が回復したものとして取り扱われますので、ご注意ください。
なお、特例改定においては、事業主からの休業命令や自宅待機指示などがあり、その間、使用関係が継続していれば、当該休業した日について支払われた報酬の有無にかかわらず、報酬支払の基礎となった日数に該当するものとして取り扱いますが、「休業が回復した月」の判断における報酬支払の基礎となった日数の計算においては、報酬支払がなかった日は含めない取扱いとします。
また、休業回復による届出を行うことが必要とされる月額変更届の取扱いは、令和3年の定時決定まで(令和3年8月の随時改定まで)の取扱いとなります。(令和3年7月または8月に本特例措置による改定を行った場合は、令和4年の定時決定まで(令和4年8月の随時改定まで)の取扱いとなります。)
※1 休業が回復した月とは、急減月の翌月以降の月を指します。
※2 休業が回復した月とは、報酬支払の基礎となった日が17 日以上であることとしていますが、これは、休業状況が何らか改善していることを前提として、休業が回復した場合の改定を行う起算月となる基準を示したものであり、休業状況が何ら改善していない(特例改定の原因となった休業が生じた月と比べて、休業状態にある日数または時間が変わっていないまたは増加している)月を休業が回復した月とするということを意味するものではありません。
※3 休業が回復した月に受けた報酬に該当する標準報酬月額が2等級以上上がったという条件を最初に満たした場合のみが対象となります。


Q5 休業の状況に変わりはありませんが、その他の手当(住居手当等)の変動により標準報酬月額が2等級以上上がった場合、休業が回復した際の随時改定の対象になりますか。

A5 休業の状況に変わりがないのであれば、休業が回復した場合の随時改定の対象にはなりません。


Q6 休業状況から段階的に回復している場合、最初の休業が回復した場合の随時改定以降の随時改定は、通常の随時改定と同様の要件となりますか。

A6 休業状況から段階的に回復した場合、最初に休業が回復した場合の随時改定は、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、休業が回復した月の翌月から標準報酬月額が改定されます。なお、それ以降は、通常の随時改定と同様の取扱いとなります。


Q7 休業が回復した月に、基本給が昇給(または降給)した場合、休業が回復した場合の随時改定の他に、固定的賃金の変動による通常の随時改定の届出が必要になりますか。

A7 休業が回復した月に受けた報酬の総額を基にした標準報酬月額が、令和2年8月から令和3年7月までを急減月とした特例改定後の標準報酬月額に比べて2等級以上上がった場合には、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、随時改定の届出が必要となり、休業が回復した月の翌月から標準報酬月額が改定されます。
また、休業が回復した月に、固定的賃金の変動があった場合(※)には、休業が回復した月(固定的賃金の変動があった月)から3か月間に支給された報酬の平均が、休業回復による随時改定後の標準報酬月額に比べて、2等級以上変動している場合には、通常の随時改定の届出が必要になります。
※ なお、一時帰休の状況が継続している間に固定的賃金が変動した場合は、一時帰休に伴う休業手当等が支払われなくなった月から起算して3か月の報酬を平均することによって、随時改定を行います。


Q8 令和2年8月から令和3年7月までを急減月とした特例改定により標準報酬月額の改定を行いました。その後、休業手当の給付割合の変更により、標準報酬月額を下げる随時改定を行いました。この場合、休業が回復した場合の随時改定の届出は必要でしょうか。必要な場合、直近の標準報酬月額と比較して2等級以上上がった場合が対象になりますか。

A8 令和2年8月から令和3年7月までを急減月とした特例改定による標準報酬月額の改定以降、さらに休業手当の給付割合変更により標準報酬月額が下がる通常の随時改定を行った場合でも、休業が回復した際の随時改定は行われることとなります。この場合、休業が回復した月に受けた報酬の総額を基にした標準報酬月額が、通常の随時改定後の標準報酬月額と比べて、2等級以上上がった場合には、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、休業回復による随時改定の届出が必要になります。


Q9 令和2年8月から令和3年7月までを急減月とした特例改定後、令和3年8 月まで休業状態が回復しなかった場合であって、令和3年4月から6月までの全ての月の支払の基礎となった日数が17 日未満の場合、令和3年の定時決定は、いつ時点の報酬で決定されますか。

A9 令和3年4月から6月までのいずれの月も支払基礎日数が17 日未満の場合は、定時決定以降に支給されると見込まれる報酬で決定する必要があることから、令和2年8月から令和3年7月までを急減月とした特例改定前(令和2年4月から7月までを急減月とした特例改定が行われている場合は、当該改定の前)の標準報酬月額により決定することとなります。なお、令和3年7月または8月に本特例措置による改定が行われた場合は、令和3年の定時決定は適用されません。


Q10 令和2年7月または8月に特例改定を行った後、休業が回復する前に、さらに令和2年8月から令和3年7月までを急減月とする特例改定に該当した場合、休業が回復した場合の随時改定は、どのように届出を行うことになりますか。

A10 休業回復前に、令和2年8月から令和3年7月までを急減月とした特例改定が行われた場合は、令和2年7月または8月の特例改定に対する休業回復による随時改定の届出は要しません。休業が回復した月に受けた報酬の総額を基にした標準報酬月額が、令和2年8月から令和3年7月までを急減月とする特例改定後の標準報酬月額に比べて2等級以上上がった場合に、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、随時改定の届出が必要になり、休業が回復した月の翌月から標準報酬月額が改定されます。

【申請について】

Q11 令和2年8月から令和3年7月までを急減月とした特例改定について、届出期限はありますか。また、遡及して届出は行えますか。

A11 令和2年8月から12 月までを急減月とした特例改定については、令和3年2月末日まで、令和3年1月から3月までを急減月とした特例改定については、令和3年5月末まで、令和3年4月から7月までを急減月とした特例改定については、令和3年9月末までを受付期間としており、それまでの間に、届出を行っていただければ、急減月の翌月の標準報酬月額を遡及して改定が可能です。
なお、令和3年2月末日が休日に当たることから、翌営業日である令和3年3 月1日までに受け付けた届出が対象となります。


Q12 令和2年8月から令和3年7月までを急減月とした特例改定後の標準報酬月額は、いつまで有効ですか。

A12 令和2年8月から令和3年7月までを急減月とした特例改定後の標準報酬月額は、令和3年における定時決定の前月となる令和3年8月分保険料(令和3年7月または8月に本特例措置による改定を行った場合は令和4年8月分保険料)までが対象となります。
ただし、休業が回復した月に受けた報酬の総額を基にした標準報酬月額が、特例改定後の標準報酬月額に比べて2等級以上上がった場合には、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、随時改定の届出により、休業が回復した月の翌月から改定されることとなります。


Q13 令和2年8月の給与で標準報酬月額が2等級以上下がったため、8月を急減月として9月の特例改定を行いました。その後、9月の給与で更に標準報酬月額が2等級以上下がった場合、改定月を10月に訂正することはできますか。

A13 特例改定による届出は、同一の被保険者について複数回行うことや、届出後に急減月の選択等を変更すること等はできません。
このため、休業に伴う報酬の低下が段階的に生じた場合または生じる可能性がある場合は、どの月を改定月として届出を行うかについて、事業主と被保険者の間でよくご相談の上、ご本人の同意を得てください。

Q14 令和2年4月から7月までを急減月とした特例改定により、既に標準報酬月額の改定を行ったのですが、令和2年8月から令和3年7月までを急減月とした特定改定の届出はできますか。

A14 令和2年4月から7月までを急減月とした特例改定を行った方であっても、令和2年8月から令和3年7月までを急減月とした特例改定の届出は可能です。


Q15 令和2年8月から12月までを急減月とした特例改定により、既に標準報酬月額の改定を行ったのですが、令和3年1月から令和3年7月までを急減月とした特例改定の届出はできますか。

A15 本特例改定による届出は、保険料の賦課や給付、給与事務の繁雑化、不安定化等を防ぐため、同一の被保険者について複数回行うことはできない取扱いとしています。
このため、令和2年8月から令和3年7月までを急減月とした特例改定の届出は1回までとしています。


Q16 届出方法は、以前実施した令和2年4月から7月までを急減月とした特例改定と同様でしょうか。

A16 令和2年8月から令和3年7月までを急減月とした特例改定の届出については、以前実施した特例改定の手続と同様に、以下により行ってください。
① 特例改定用の届書により提出してください。
② 届出の際には、申立書の添付が必要です。
③ 特例改定では、年金事務所の窓口でも受け付けますが、届書と申立書を管轄の年金事務所へ郵送により提出してください。また、e-Gov からの電子申請(PDF またはJPEG 形式のファイルによる電子添付)も可能となっています。
※ 通常の月額変更届・算定基礎届と提出先が異なりますので、事務センターへ郵送しないようご注意ください。

【様式・記入方法・添付書類】

Q17 令和2年4月から7月までを急減月とした特例改定の届書と申立書の様式を使用して届出できますか。

A17 届書及び申立書については、いずれも令和2年4月から7月までを急減月とした特例改定において使用する様式とは異なる様式を使用いただくことになります。
特に、届書については、「令和2年8月~令和3年7月を急減月とする場合」、「8月報酬による定時決定の場合」及び「休業が回復した場合」で備考欄の記載が異なるため、それぞれの様式をお示ししています。
また、ご本人に記載いただく同意書(参考様式)についても、一部記載内容を変更しています。
いずれも、新たに日本年金機構ホームページからダウンロードの上、ご利用ください。


Q18 休業が回復した場合の随時改定は、どのような要件に該当する場合に届出が必要になりますか。

A18 休業が回復した場合の随時改定は、休業が回復した月に受けた報酬の総額を基にした標準報酬月額が、令和2年8月から令和3年7月までを急減月とした特例改定後の標準報酬月額に比べて2等級以上上がった場合に、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、届出が必要になります。
この場合、休業が回復した月の翌月から標準報酬月額が改定されることとなります。


Q19 休業が回復したことによる随時改定の届出を行うことになりますが、その場合、通常の月額変更届の様式で届出できますか。また、休業が回復したことを確認できる書類の添付は必要でしょうか。

A19 休業が回復したことによる随時改定の届出にあたっては、通常の月額変更届の様式によらず、特例改定用の届書(休業が回復した場合)を使用いただくことになりますので、日本年金機構ホームページからダウンロードの上、ご利用ください。
また、届出にあたり、休業が回復したことを確認できる書類の添付は必要ありません。

【令和2年定時決定】

※2020年(令和2年)の定時決定です。

Q20 令和2年4月または5月を急減月とした特例改定を行った場合で、令和2年8月の報酬の総額に基づく標準報酬月額による定時決定の特例を申請する場合、令和2年8月を急減月とした特例改定の際と同様の届書や申立書の様式を使用すればよいですか。

A20 令和2年8月の報酬の総額に基づく定時決定の特例を届出いただく場合と、令和2年8月から令和3年7月までを急減月とした特例改定を届出いただく場合は、申立書は同じ様式となりますが、届書の様式が異なります。
いずれも、日本年金機構ホームページからダウンロードの上、ご利用ください。


Q21 令和2年4月または5月を急減月として特例改定を行った場合であって、定時決定による標準報酬月額と比較して、令和2年8月における報酬の総額に基づく標準報酬月額が2等級以上低いときは、必ず定時決定の特例の届出を行う必要がありますか。

A21 令和2年8月の報酬の総額に基づく定時決定の特例は、ご本人が同意した上で届出いただくことになりますので、要件に該当する場合であっても、必ず届出を行っていただく必要はありません。


Q22 令和2年8月の報酬の総額に基づく定時決定の特例により標準報酬月額の決定を行った場合に、令和2年9月以降、さらに休業による報酬の低下があった際には、当該月を急減月とした特例改定の届出ができますか。

A22 今般の特例措置は、保険料の賦課や給付、給与事務の複雑化、不安定化等を防ぐため、同一の被保険者について複数回の特例措置を行うことはできない取扱いとしています。
令和2年8月の報酬の総額に基づく定時決定の特例は、令和2年8月から令和3年7月までを急減月とした特例改定とともに設けた特例措置の一つであり、当該定時決定の特例を行った場合、それ以降に、特例改定の届出を行うことはできません。


Q23 令和2年4月を急減月とした特例改定に該当しましたが、6月に休業が回復し、6~8月の報酬の平均が2等級以上上がったため、9月改定の随時改定を提出しました。この場合、8月における報酬の総額に基づく標準報酬月額が、9月改定の随時改定で決定した標準報酬月額と比べて2等級以上低い場合、8月の報酬の総額に基づく定時決定の特例を行うことはできますか。

A23 令和2年6月に休業が回復し、令和2年9月改定の随時改定が行われる場合は、法律上、その年の定時決定は行わないことから、本事例の場合、定時決定の特例の要件には該当しないこととなりますので、届出を行うことはできません。

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(令和3年4月1日版)標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集

(令和3年4月1日版)標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210405T0110.pdf


2021年(令和3年)4月1日版が公表されました。
2020年版からの変更は、「在宅勤務・テレワークにおける交通費及び在宅勤務手当の取扱いについて」が追加されたのみです。

テレワーク中の用事でオフィスに出社する場合は、通常の移動費のように算定基礎の対象にはなりませんが、オフィスで仕事するために出勤する場合は通勤手当として算定基礎の対象となります。
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在宅勤務手当は、名目は実費弁償(例えば、電気代や通信料金)であっても、渡しきりで精算しないようなものは、算定基礎の対象となります。

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210405T0110.pdf

報酬・賞与の範囲について

問 「報酬」・「賞与」にはどのようなものが含まれるか。

(答)「報酬」及び「賞与」(以下「報酬等」という。)は、健康保険法第3条第5項及び第6項(厚生年金保険法第3条第1項第3号及び第4号)において「労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの」と規定されており、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計に充てられるすべてのものを包含するものである(『健康保険法の解釈と運用』(法研)より)。

具体的事例
① 現実に提供された労働に対する対価に加え、給与規程等に基づいて使用者が経常的(定期的)に被用者に支払うものは、「報酬等」に該当する。労働の提供と対償の支払が時間的に一致する必要はなく、将来の労働に対するものや、病気欠勤中や休業中に支払われる手当であっても労働の対償となり、「報酬等」に該当する。また、雇用契約を前提として事業主から食事、住宅等の提供を受けている場合(現物給与)も「報酬等」に含まれる。
【例】賃金、給料、俸給、賞与、インセンティブ通勤手当、扶養手当、管理職手当、勤務地手当、休職手当、休業手当、待命手当

② 労働の対償として受けるものでないものは、「報酬等」に該当しない。
【例】傷病手当金労働者災害補償保険法に基づく休業補償、解雇予告手当、退職手当、内職収入、財産収入、適用事業所以外から受ける収入
(注)退職手当は、毎月の給与や賞与に上乗せして前払いされる場合、被保険者の通常の生計に充てられる経常収入と扱うことが妥当であり、「報酬等」に該当する。

③事業主が負担すべきものを被保険者が立て替え、その実費弁償を受ける場合、労働の対償とは認められないため、「報酬等」に該当しない。
【例】出張旅費、赴任旅費

④事業主が恩恵的に支給するものは労働の対償とは認められないため、原則として「報酬等」に該当しない。
【例】見舞金、結婚祝い金、餞別金

⑤恩恵的に支給するものであっても、労働協約等に基づいて支給されるもので、経常的(定期的)に支払われる場合は、「報酬等」に該当する。
【例】傷病手当金と給与の差額補填を目的とした見舞金

⑥労働の対償として支給されるものであっても、被保険者が常態として受ける報酬以外のものは、「報酬等」に含まれない(支給事由の発生、支給条件、支給額等が不確定で、経常的に受けるものではないものは、被保険者の通常の生計に充てられるものとは言えないため)。ただし、これに該当するものは極めて限定的である。

【例】大入袋
※ここで挙げた【例】は一般的な場合を想定しており、その名称だけでなく、実態に合わせて「報酬等」に該当するかどうか判断を行うものとする。

※在宅勤務・テレワークにおける交通費等の取扱いについては後述。

定時決定について

問1 支払基礎日数について、例えば夜勤労働者で日をまたぐ勤務を行っている場合はどのように計算すべきか。

(答)夜勤労働者で日をまたいで労務に就いている場合は、以下のように取り扱う。
①夜勤勤務者が月給で給与の支払いを受けている場合
→各月の暦日数を支払基礎日数とする。

②夜勤勤務者が日給で給与の支払いを受けている場合
→給与支払いの基礎となる出勤回数を支払基礎日数とする。ただし、変形労働時間制を導入している場合は、下記の③に準じて取り扱う。

③夜勤勤務者が時給で給与の支払を受けている場合
→各月の総労働時間をその事業所における所定労働時間で除して得られた日数を支払基礎日数とする。なお、勤務中に仮眠時間等が設けられている場合、これを労働時間に含めるか否かは、その事業所の業務の実態、契約内容、就業規則等によって仮眠時間等が給与支払いの対象となる時間に含まれているかどうかを確認することで判断されたい。

問2 給与の締め日が変更になった場合、変更月では支払基礎日数が通常の月よりも増減することになるが、定時決定の際にはどのように取り扱うべきか。

(答)給与締め日が変更になった場合は、以下のように取扱う。

①支払基礎日数が増加する場合
支払基礎日数が暦日を超えて増加した場合、通常受ける報酬以外の報酬を受けることとなるため、超過分の報酬を除外した上で、その他の月の報酬との平均を算出し、標準報酬月額を保険者算定する。
(例)給与締め日が20日から25日に変更された場合
締め日を変更した月のみ給与計算期間が前月21日~当月25日となるため、前月21日~前月25日の給与を除外し、締め日変更後の給与制度で計算すべき期間(前月26日~当月25日)で算出された報酬をその月の報酬とする。

②支払基礎日数が減少した場合
給与締め日の変更によって給与支給日数が減少した場合であっても、支払基礎日数が17日以上であれば、通常の定時決定の方法によって標準報酬月額を算定する。給与締め日の変更によって給与支給日数が減少し、支払基礎日数が17日未満となった場合には、その月を除外した上で報酬の平均を算出し、標準報酬月額を算定する。

問3 基本給や諸手当の支払月が変更となった結果、通常の月よりも給与額が増減する場合があるが、定時決定の際にはどのように取り扱うべきか。

(答)給与や諸手当の支払い月が変更になった場合は、以下のように取扱う。

①翌月払いの給与や諸手当が当月払いに変更された場合
翌月払いの給与もしくは諸手当が当月払いに変更された場合は、変更月に支給される給与等に重複分が発生するが、制度変更後の給与等がその月に受けるべき給与であるとみなし、変更前の給与は除外した上で4,5,6月の平均を算出し、標準報酬月額を算定する。
(例)4月支給の給与より、「25日締め翌月末払い」の給与が「25日締め当月末払い」に変更された場合
制度の変更に伴い、4月支給の給与は2月26日~3月25日分と、3月26日~4月25日分の給与となるが、制度変更後の給与が本来その月に受けるべき給与であるとみなし、2月26日~3月25日の給与を除外し、支払日変更後の給与制度で計算すべき期間(3月26日~4月25日)により算出した報酬を4月の報酬とする。

②当月払いの諸手当が翌月払いに変更された場合
当月払いの諸手当が翌月払いに変更された場合は、変更月には諸手当が支給されないこととなるが、その月は算定の対象から除き、残りの月に支払われた報酬で定時決定を行う。

問4 4~6月の3か月のうち、遡って降給が行われた結果、差額調整によって本来受けるべき報酬より低額の報酬が支払われた月がある場合、保険者算定によって定時決定を行うことはできるか。

(答)保険者算定の対象として差し支えない。この場合、4~6月の報酬から控除された差額調整分を計算に含まず、差額調整前の報酬額で定時決定を行う。

被保険者資格取得時の標準報酬月額の決定について

問1 被保険者資格を取得した際の標準報酬月額の決定について、例えば残業代が当初の見込みよりも増減した場合に、標準報酬月額の訂正を行うことができるか。

(答)被保険者資格を取得した際の標準報酬月額については、固定的賃金の算定誤り等があった場合に訂正を行うことはできるが、残業代のような非固定的賃金について、その見込みが当初の算定額より増減した場合は、訂正することはできない。

問2 一つの適用事業所に勤務している被保険者が、別の適用事業所に勤務(同時に2つの事業所に勤務)することとなって新たな適用事業所において被保険者資格を取得した場合、どの時点から標準報酬月額を改定するのか。

(答)新たに別の適用事業所で被保険者資格を取得した場合、その事業所における報酬月額を健康保険法第42条(厚生年金保険法第22条)に従って算定し、健康保険法第44条第3項(厚生年金保険法第24条第2項)の規定に基づいて合計額としての報酬月額を算定する。その際、既に被保険者資格を取得している側の事業所においては、既に決定されている標準報酬月額の基礎となった報酬月額を用いる。
また、健康保険法施行規則第1条、第2条及び第37条(厚生年金保険法施行規則第1条及び第2条)において、同時に2以上の適用事業所に使用されることとなった日から10日以内に、管掌保険者の選択とそれに伴う届出を行うこととされており、新たに別の適用事業所に使用されることとなった月から標準報酬月額を決定する。

随時改定について

問1 固定的賃金の変動が発生した後、3か月以内に再度固定的賃金が変動した場合には、それぞれの固定的賃金変動を随時改定の対象とするか。

(答)それぞれの固定的賃金変動を随時改定の契機として取り扱う。仮に固定的賃金変動が毎月発生した場合には、それぞれの月の賃金変動を契機として、その都度2等級以上の差が生じているかを確認し、随時改定の可否について判断する。
なお、2等級以上の差を判断するに当たっては、固定的賃金のみならず、非固定的賃金を含めた報酬月額全体で比較を行う。

問1-2 (従業員から役員 になるなど)身分変更が行われた結果、基本給が上がり(又は下がり)、超過勤務手当が廃止(又は新設)された場合で、各々の固定的賃金の変動が実際に支給される給与への反映月が異なる場合において、起算月はどのように取り扱うのか。

(答)身分変更が行われた結果、複数の固定的賃金の変動が生じ、各々の固定的賃金の変動が実際に支給される給与へ反映する月が異なる場合は、変動後の各々の固定的賃金が給与に実績として反映された月をそれぞれ起算月とする。

(例)役員昇格による昇給と役員昇格による残業手当の廃止(昇給月の翌月反映)
⇒昇給に係る随時改定は昇給月が起算月となり、手当廃止による随時改定は反映月(昇給月の翌月)を起算月として別の随時改定としてとらえる。

問1-3

基本給(時間給)に変更は無いが、勤務体系(契約時間)が変更になる場合、随時改定の対象となるか。

(例)
基本給  : 1H 2,000円 ⇒  2,000円(変更なし)
契約時間: 1日 8時間  ⇒ 6.5時間(変更あり)
      : 1月  20日 ⇒ 20日(変更なし)

(答)時給単価の変動はないが、契約時間が変わった場合、 固定的賃金の変動に該当するため、随時改定の対象となる。

問2 超過勤務手当の支給単価(支給割合)が変更された場合は、随時改定の対象となるか。

(答)超過勤務手当については、個々人や月々の稼働状況によって時間数が不確定であるため、単に時間の増減があった場合は随時改定の対象とはならないが、支給単価(支給割合)が変更となった場合は随時改定の対象となる。

問3 超過勤務手当等の非固定的手当が廃止された場合、随時改定の対象となるか。

(答)非固定的手当であっても、その廃止は賃金体系の変更に当たるため、随時改定の対象となる。

問4 固定的賃金が上昇したものの、超過勤務手当等の非固定的賃金が減額したために結果的に2等級以上報酬月額が下がった場合、随時改定の対象となるか。

(答)固定的賃金の増額・減額と、実際の平均報酬月額の増額・減額が一致しない場合、随時改定の対象とはならない。

問5 同一月に固定的賃金の増額と減額が同時に発生した場合(手当の廃止と創設等)、増額改定と減額改定のどちらの対象となるか。

(答)同時に複数の固定的賃金の増減要因が発生した場合、それらの影響によって固定的賃金の総額が増額するのか減額するのかを確認し、増額改定・減額改定いずれの対象となるかを判断する。
例えば、定額の手当が廃止され、その手当と同額の手当が新たに創設された場合など、固定的賃金に変更が生じないケースについては、随時改定の対象とならない。
なお、変動的な手当の廃止と創設が同時に発生した場合等については、手当額の増減と報酬額の増減の関連が明確に確認できないため、3か月の平均報酬月額が増額した場合・減額した場合のどちらも随時改定の対象となる。

問6 給与計算期間の途中で昇給した場合、どの時点を起算月として随時改定の判断を行うのか。

例:当月末締め翌月末払いの給与で、当月15日以降の給与単価が上昇した場合。

(答)昇給・降給した給与が実績として1か月分確保された月を固定的賃金変動が報酬に反映された月として扱い、それ以後3か月間に受けた報酬を計算の基礎として随時改定の判断を行う。
例示の場合であれば、給与単価が上昇した翌月支払の給与は単価上昇の実績を1か月分確保できていないため、翌々月を3か月の起算点として随時改定の可否を判断する。

問7 固定的賃金の変動の翌月に給与支払い締め日変更があった場合、随時改定はどのような取扱いとなるか。

例:9月支給分の給与から固定的賃金変動が反映されたが、10月支給の給与から、「月末締め翌月15日払い」→「15日締め翌月15日払い」に変更。
  9月15日支給の給与(8/1日~8/31日分)
 10月15日支給の給与(9/1日~9/15日分)
 11月15日支給の給与(9/16日~10/15日分)

(答)
固定的賃金に変動が発生した後の3か月以内に、給与締め日の変更によって例示のように支払基礎日数が17日を下回る月がある場合には、随時改定の対象とならない。
なお、例示の場合、問6とは異なり、9月支給分の給与から固定的賃金変動が報酬に反映(1か月分確保)されているため、11月を起算月として随時改定を行うことはできない。問7-2非固定的賃金が新設された月に、非固定的賃金が支払われる条件が達成されなかったために初回の支払が0円となったが、次月以降は実際に支払いが生じたような場合、起算月の取扱いはどのようになるか。
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問8 休職によって通常受けられる報酬よりも低額な休職給を受けることとなったが、休職中に固定的賃金の増減があった場合、随時改定の対象となるか。

(答)
随時改定では、固定的賃金の変動が報酬に反映された月を起算月として扱うこととしているが、休職に伴う低額な休職給を受けている間に固定的賃金の増減があった場合、休職給はその固定的賃金の変動を適切に反映しているとは言えないため、休職が終了して通常の給与支払いに戻った月以降3か月の平均報酬月額によって随時改定の可否を判断する。

問8-2 産休又は育休取得中の無給期間において昇給等があった場合、起算月はいつになるか。

(答)産休等の無給期間中に固定的賃金に変動があった場合には、実際に変動後の報酬を受けた月を起算月として改定することとなる。
また、昇給等による固定的賃金の変動後に、給与計算期間の途中で休業に入ったこと、又は給与計算期間の途中で復帰したことにより、変動が反映された報酬が支払われているものの、継続した3月間のうちに支払基礎日数17日未満となる月がある場合については、随時改定の対象とはならない。
なお、これらは育児休業等を終了した際の改定を妨げるものではない。

問9 固定的賃金に変動が生じた月(起算月)の次月以降、随時改定の算定対象月内に、休職によって通常受けられる報酬よりも低額な休職給を受けることとなった場合、随時改定の対象となるか。

(答)随時改定は固定的賃金の変動が報酬に反映された月を起算として、それ以後継続した3か月間(いずれの月も支払基礎日数が17日以上)に受けた報酬を計算の基礎とすることから、随時改定の算定対象月内に低額な休職給を受けた場合であっても、随時改定の対象とする。

問10 遡って昇給が発生した場合、保険者算定による随時改定の対象となるが、遡って降給が発生した場合も同様の取扱いが可能か。

(答)
遡って昇給が発生した場合、その変動が反映された月(差額調整が行われた月)を起算月として、それ以後継続した3か月間(いずれの月も支払基礎日数が17日以上)に受けた報酬を基礎として、保険者算定による随時改定を行うこととなるが、遡って降給が発生した場合についても、遡って昇給が発生した場合と同様に取り扱うものとする。
なお、超過支給分の報酬がその後の報酬から差額調整された場合、調整対象月の報酬は本来受けるべき報酬よりも低額となるため、調整対象月に控除された降給差額分を含まず、差額調整前の報酬額で随時改定を行う。

問11 基本給の減給制裁があった場合、随時改定はどのようになるか。また、同月に役職手当等の付与による固定的賃金の変動(増額)がある場合、随時改定の取扱いはどのようになるか。

(答)
減給制裁は固定的賃金の変動には当たらないため、随時改定の対象とはならない。
また、同月に固定的賃金の変動(増額)があった場合は、変動した固定的賃金の支給実績があった月を起算月として、減給制裁と役職手当等を併せた報酬全体で2等級以上の差が生じれば、随時改定に該当する。(起算月をずらしたり、減給が無かった場合の金額で算定したりすることはできない。)

問12 現物給与の標準価額が告示により改正された場合は、随時改定の対象になるか。

(答)
告示改正による単価の変更は、固定的賃金の変動に該当することから、随時改定の対象となる。
なお、現物給与の価額に関して規約で別段の定めをしている健康保険組合が管掌する被保険者については、当該規約の定めによる価額の変更がなければ、随時改定の対象にはならない。

問13 自動車通勤者に対してガソリン単価を設定して通勤手当を算定している事業所において、ガソリン単価の見直しが月単位で行われ、その結果、毎月ガソリン単価を変更し通勤手当を支給している場合、固定的賃金の変動に該当するか。

(答)単価の変動が月ごとに生じる場合でも、固定的賃金の変動として取扱うこととなる 。

問14 産前・産後休業期間について、基本給等は休業前と同様に支給するが、通勤手当については支給しないこととしている。この場合は、賃金体系の変更による随時改定の対象となるか。

(答)産休等により通勤手当が不支給となっている事例において、通勤の実績がないことにより不支給となっている場合には、手当自体が廃止された訳ではないことから、賃金体系の変更にはあたらず、随時改定の対象とはならない。

一時帰休における 標準報酬 月額の 決定・改定について

(1)定時決定について

問1 一時帰休による休業手当等が支払われた日は、支払基礎日数に含まれるのか。

(答)一時帰休による休業手当等が支払われた日も、支払基礎日数に含まれる。

問2 定時決定の算定対象月に休業手当等が支払われた月があり、標準報酬月額の決定の際に一時帰休の状態が解消していない場合、休業手当等が支払われた月のみで標準報酬月額を決定するのか。

(答)休業手当等が支払われた月のみで決定するわけではない。
例えば、定時決定の対象月である4・5・6月のうち、4・5月は通常の給与の支払を受けて6月のみ一時帰休による休業手当等が支払われた場合には、6月分は休業手当等を含めて報酬月額を算定した上で、4・5・6月の報酬月額を平均して標準報酬月額を決定する。
なお、標準報酬月額決定の際に一時帰休の状態が解消している場合の取扱いについては、問7を参照のこと。

問3 定時決定の算定対象月に休業手当等が支払われた月がある場合、標準報酬月額の決定に当たって、一時帰休の状態が解消しているかどうかを判断する必要があるが、どの時点で一時帰休解消を判断することになるのか。

(答)7月1日時点で判断する。

問4 どのような場合が一時帰休が解消している状態にあたるのか。

(答)7月1日の時点で、現に低額な休業手当等の支払いが行われておらず、その後も低額な休業手当等が支払われる見込みがない場合をいう。
一時帰休が解消しているか否かの判断に当たっては、算定基礎届の備考欄に一時帰休が解消した旨を記載させるとともに、公共職業安定所への休業計画の提出の有無や、労使間での一時帰休解消に関する合意の有無等を確認する。

問5 標準報酬月額の決定にあたって、一時帰休が解消していたために休業手当等を含まない報酬で定時決定を行ったが、その後、結果的に9月までの間に再び一時帰休の状態となって休業手当等が支給された場合、定時決定の内容を訂正することができるか。

(答)標準報酬月額の決定後に再び一時帰休の状態となって休業手当等が支払われたとしても、定時決定の訂正は認められない。
なお、このようなケースについては、再び休業手当等が支払われることとなった月から起算して、随時改定に該当するか否かを判断する。

問6 標準報酬月額の決定にあたって、一時帰休が解消していなかったために休業手当等を含んだ報酬で定時決定を行ったが、その後、結果的に一時帰休が解消した場合は、どのように取り扱うべきか。

(答)休業手当等をもって標準報酬月額の決定又は改定が行われた後、結果的に一時帰休が解消した場合は、通常の報酬の支払を受けることとなった月から起算して、随時改定に該当するか否かを判断する。

問7 「9月以降において受けるべき報酬」とは、どのように算出するのか。

(答)7月1日の時点で一時帰休の状況が解消している場合の定時決定では、休業手当等を除いて標準報酬月額を決定する必要があることから、通常の給与を受けた月における報酬の平均により、標準報酬月額を算出する。
例えば4・5月に通常の給与を受けて6月に休業手当等を受けた場合、4・5月の報酬の平均を「9月以降において受けるべき報酬」として定時決定を行う。
同様に4月に通常の給与をうけて5・6月に休業手当を受けた場合、4月の報酬を「9月以降において受けるべき報酬」とする。
なお、4・5・6月の全てにおいて休業手当等を受けた場合は、休業手当等を含まずに決定又は改定された直近の標準報酬月額により、定時決定を行う。

(2)随時改定について

問1 一時帰休に伴う随時改定について、1か月の全てについて休業手当等の支払を受けている場合が対象となるのか。それとも、1か月のうちの1日でも休業手当等の支払いを受けていれば対象となるのか。

(答)1か月のうち、一時帰休に伴って固定的賃金が減額支給される日が1日でもあれば、随時改定の対象となる。

問2 一時帰休に伴う随時改定は、低額な休業手当等の支払いが継続して3か月を超える場合に行うこととなるが、いつの時点から3か月を起算するのか。

(答)3か月は暦日ではなく、月単位で計算する。例えば、月末締め月末払いの事業所において一時帰休の開始日を2月10日とした場合は、5月1日をもって「3か月を超える場合」に該当し、2・3・4月の報酬を平均して2等級以上の差が生じていれば、5月以降の標準報酬月額から随時改定する。
なお、5月1日時点で一時帰休の状況が解消している場合には、3か月を超えないため、随時改定は行わない。

問3 一時帰休期間中に休業手当等の支給割合が変更した場合は、随時改定の対象となるのか。

(答)随時改定の対象となる。

問4 一時帰休期間中に休業日数が変更となった場合は、随時改定の対象となるのか。

(答)単に休業の日数が変更となった場合は、随時改定の対象とならない。

問5 「一時帰休の状況が解消したとき」とは、どのような状態をいうのか。また、どのような場合に随時改定の対象となるのか。

(答)「一時帰休の状況が解消したとき」とは、固定的賃金が減額されず、その後も低額な休業手当等が支払われる見込みがない状態をいう。
また、低額な休業手当等が支払われないことが明確でなくても、現実に固定的賃金が減額されない状況が継続して3か月を超え、2等級以上の差を生じた場合は、一時帰休が解消したものとして随時改定の対象とする。

問6 一時帰休の状況が継続している間に固定的賃金が変動した場合は、随時改定の対象となるか。

(答)随時改定は、固定的賃金の変動が報酬に反映された月を起算月として扱うこととしているが、一時帰休に伴う休業手当等が支払われた月に固定的賃金が変動した場合、その固定的賃金の変動が正確に報酬月額に反映されないため、一時帰休に伴う休業手当等が支払われなくなった月から起算して3か月の報酬を平均することによって、随時改定を行う。

問7 通常の給与で標準報酬月額の決定又は改定が行われている者について、固定的賃金の変動があった月の翌月に一時帰休による休業手当等が支払われた場合、随時改定の対象となるか。

(答)随時改定は、固定的賃金の変動が報酬に反映された月を起算として、それ以後継続した3か月間(いずれの月も支払基礎日数が17日以上)に受けた報酬を計算の基礎とすることから、随時改定の算定対象月内に休業手当等を受けることとなった場合であっても、随時改定の対象とする。

短時間労働者の標準報酬月額の決定・改定について

問1 標準報酬月額の決定・改定の算定の対象となる期間の月の途中に、被保険者の区分(短時間労働者であるかないか)の変更があった場合、当該月の支払基礎日数はどのように取り扱うのか。

(答)当該月の報酬の給与計算期間の末日における被保険者区分に応じた支払基礎日数により、当該月が算定の対象月となるかならないかを判断する。

問2 標準報酬月額の算定の対象となる期間に、 支払基礎日数(原則 17 日、短時間労働者は 11 日)を満たす月と満たさない月 が混在する場合、どのように標準報酬月額を決定するのか。

(答)算定の対象となる期間に被保険者区分の変更があった場合は、 区分の混在があっても、 原則、 一般の被保険者であるならば 17 日以上を、短時間労働者であるならば 11 日以上を算 定の対象とし、対象となった月の平均で報酬月額を決定する。 ただし、通常の労働者で は ないものの、4分の3基準を満たす者 (短時間就労者) については、 従前のとおり、 法定 された 支払基礎日数を満たす月がない場合、支払基礎日数が 15 日以上の月を算定の基礎とする。

在宅勤務・テレワークにおける交通費及び在宅勤務手当の取扱いについて

問1 在宅勤務・テレワークを導入し、被保険者が一時的に出社する際に要する交通費を事業主が負担する場合、当該交通費は「報酬等」に含まれるのか。

(答) 基本的に、当該労働日における労働契約上の労務の提供地が自宅か事業所かに応じて、それぞれ以下のように取扱う。
① 当該労働日における労働契約上の労務の提供地が自宅の場合
労働契約上、当該労働日の労務提供地が自宅とされており、業務命令により事業所等に一時的に出社し、その移動にかかる実費を事業主が負担する場合、当該費用は原則として実費弁償と認められ、「報酬等」には含まれない。
② 当該労働日における労働契約上の労務の提供地が事業所とされている場合
当該労働日は事業所での勤務となっていることから、自宅から当該事業所に出社するために要した費用を事業主が負担する場合、当該費用は、原則として通勤手当として「報酬等」に含まれる。
なお、在宅勤務・テレワークの導入に伴い、支給されていた通勤手当が支払われなくなる、支給方法が月額から日額単位に変更される等の固定的賃金に関する変動があった場合には、随時改定の対象となる。
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問2 在宅勤務・テレワークの実施に際し、在宅勤務手当が支給される場合、当該手当は「報酬等」に含まれるのか。

(答) 在宅勤務手当の取扱いについては、当該手当の内容が事業所毎に異なることから、その支給要件や、支給実態などを踏まえて個別に判断する必要がある。
基本的な考え方は以下の通り。
① 在宅勤務手当が労働の対償として支払われる性質のもの(実費弁償に当たらないもの)である場合
在宅勤務手当が、被保険者が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を事業主に返還する必要がないものであれば、「報酬等」に含まれる。
(例)事業主が被保険者に対して毎月5,000 円を渡し切りで支給するもの

② 在宅勤務手当が実費弁償に当たるようなものである場合
在宅勤務手当が、テレワークを実施するに当たり、業務に使用するパソコンの購入や通信に要する費用を事業主が被保険者に支払うようなものの場合、その手当が、業務遂行に必要な費用にかかる実費分に対応するものと認められるのであれば、当該手当は実費弁償に当たるものとして、「報酬等」に含まれない。
※ 実費弁償に当たるものの具体的な例については、末尾「別紙」Q2を参照。

問3 在宅勤務・テレワークの実施に際し、在宅勤務手当が支給される場合の随時改定の取扱いはどうなるのか。

(答) 在宅勤務・テレワークの導入に伴い、新たに実費弁償に当たらない在宅勤務手当が支払われることとなった場合は、固定的賃金の変動に該当し、随時改定の対象となる。
交通費の支給がなくなった月に新たに実費弁償に当たらない在宅勤務手当が支給される等、同時に複数の固定的賃金の増減要因が発生した場合、それらの影響によって固定的賃金の総額が増額するのか減額するのかを確認し、増額改定・減額改定のいずれの対象となるかを判断する。
なお、新たに変動的な在宅勤務手当の創設と変動的な手当の廃止が同時に発生した場合等において、創設・廃止される手当額の増減と報酬額の増減の関連が明確に確認できない場合は、3か月の平均報酬月額が増額した場合・減額した場合のどちらも随時改定の対象となる。
また、一つの手当において、実費弁償分であることが明確にされている部分とそれ以外の部分がある場合には、当該実費弁償分については「報酬等」に含める必要はなく、それ以外の部分は「報酬等」に含まれる。この場合、月々の実費弁償分の算定に伴い実費弁償以外の部分の金額に変動があったとしても、固定的賃金の変動に該当しないことから、随時改定の対象とはならない。

別紙 社会保険料等の算定基礎に係る在宅勤務における交通費及び在宅勤務手当の取扱について

Q1 テレワークを導入した際の交通費や在宅勤務手当は社会保険料労働保険料等の算定基礎に含めるべきでしょうか?

(回答)
テレワークに要する費用負担の取扱いについては、あらかじめ労使で十分に話し合い、企業ごとの状況に応じたルールを定め、就業規則等において規定しておくことが望ましいとされています。
テレワークを実施するに当たり新たに発生する費用等について企業が負担する場合、これら費用等を社会保険料労働保険料等の算定基礎に含めるか否かについては、以下の内容を参考に、適切に取り扱っていただく必要があります。
なお、社会保険料労働保険料等の算定基礎となる「報酬及び賞与(以下「報酬等」という。)」や「賃金」は、法律上(健康保険法、厚生年金保険法及び労働保険徴収法)、賃金、給料、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受ける全てのものであるとされています。
また、事業主が負担すべきものを労働者が立て替え、その実費弁償を受ける場合、 労働の対償とは認められないため、報酬等・賃金に該当しないこととされています。

(1)テレワーク対象者が一時的に出社する際に要する交通費(実費)について
基本的に、当該労働日における労働契約上の労務提供地が自宅か企業かで、以下のとおり、当該交通費を社会保険料労働保険料等の算定基礎に含めるか否かの取扱いが変わります。

イ)当該労働日における労働契約上の労務の提供地が自宅の場合
労働契約上、当該労働日の労務提供地が自宅とされており、業務命令により企業等に一時的に出社し、その移動にかかる実費を企業が負担する場合、当該費用は原則として実費弁償と認められ、社会保険料労働保険料等の算定基礎となる報酬等・賃金には含まれません。

ロ)当該労働日における労働契約上の労務の提供地が企業とされている場合
当該労働日は企業での勤務となっていることから、自宅から当該企業に出社するた
めに要した費用を企業が負担する場合、当該費用は、原則として通勤手当として報酬等・賃金に含まれるため、社会保険料労働保険料等の算定基礎に含まれます。

(2)在宅勤務手当について
企業がテレワーク対象者に対し「在宅勤務手当」を支払う場合、当該在宅勤務手当を社会保険料労働保険料等の算定基礎に含めるか否かの取扱いについては、当該在宅勤務手当の内容が企業毎に異なることから、その支給要件や、支給実態などを踏まえて判断する
必要がありますが、基本的な考え方は下記のとおりです。
イ)在宅勤務手当が労働の対償として支払われる性質のもの(実費弁償に当たらないもの)である場合
在宅勤務手当が、労働者が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を企業に返還する必要がないもの(例えば、企業が労働者に対して毎月5,000 円を渡し切りで支給するもの)であれば、社会保険料労働保険料等の算定基礎となる報酬等・賃金に含まれると考えられます。

ロ)在宅勤務手当が実費弁償に当たるようなものである場合
在宅勤務手当が、テレワークを実施するに当たり、業務に使用するパソコンの購入や通信に要する費用を企業がテレワーク対象者に支払うようなものの場合、その手当が、業務遂行に必要な費用にかかる実費分に対応するものと認められるのであれば、当該手当は実費弁償に当たるものとして、社会保険料労働保険料等の算定基礎となる報酬等・賃金に含まれないと考えられます。

Q2 在宅勤務手当のうち実費弁償に当たるようなものである場合は社会保険料労働保険料等の算定基礎に含める必要はないとのことですが、どのようなものが該当するのでしょうか?

(回答)
在宅勤務手当のうち、社会保険料労働保険料等の算定における実費弁償に当たるものは次のようなものが考えられます。
なお、一つの手当において、実費弁償分であることが明確にされている部分とそれ以外の部分がある場合には、当該実費弁償分については社会保険料労働保険料等の算定基礎に含める必要はなく、それ以外の部分は社会保険料労働保険料等の算定基礎に含まれます。
また、労働者が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を企業に返還する必要がないもの(例えば、企業が労働者に対して毎月5,000 円を渡し切りで支給するもの)であれば、社会保険料労働保険料等の算定の基礎に含まれると考えられます。

(1)労働者へ貸与する事務用品等の購入(注1)
労働者へ貸与する事務用品等の購入については、以下のような場合が実費弁償に当たると考えられます。

① 企業が労働者に対して、在宅勤務に通常必要な費用として金銭を仮払いした後、
労働者が業務のために使用する事務用品等を購入し、その領収証等を企業に提出
してその購入費用を精算(仮払金額が購入費用を超過する場合には、その超過部分を企業に返還(注2))する場合
② 労働者が業務のために使用する事務用品等を立替払いにより購入した後、その
購入に係る領収証等を企業に提出してその購入費用を精算(購入費用を企業から受領)する場合

(2)通信費・電気料金
通信費・電気料金については、以下のような場合が実費弁償に当たると考えられます。

① 企業が労働者に対して、在宅勤務に通常必要な費用として金銭を仮払いした後、
労働者が業務のために使用した通信費・電気料金を精算(仮払金額が業務に使用した部分の金額を超過する場合には、その超過部分を企業に返還(注2))する場合
② 労働者が業務のために使用した通信費・電気料金を立替払いにより負担した後、
その明細書等を企業に提出して通信費・電気料金を精算(業務に使用した部分を企
業から受領)する場合
なお、通信費・電気料金については、例えば、通話明細書等により業務のための通話に係る料金が確認できる通話料のようなもののみではなく、業務に要した費用と生活に要した費用が一括で請求される電気料金のようなものが含まれます。
このようなものについては、就業規則、給与規定、賃金台帳等において、実費弁償分の算出方法が明示され、実費弁償に当たるものであることが明らかである場合には、当該実費弁償部分については社会保険料労働保険料等の算定基礎に含める必要はありません。
業務に要した費用と生活に要した費用が一括で請求される費用の実費弁償分の算出方法としては、業務のために使用した部分を合理的に計算し、当該部分を実費弁償分とする方法(国税庁における「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)(URL:
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0020012-080.pdf
)で示されている計算方法等)などが考えられます。

(注1) 事務用品等については、企業がその所有権を有し労働者に貸与するものを前提としています。事務用品等を労働者に貸与するのではなく支給する場合(事務用品等の所有権が労働者に移転する場合)には、労働者に対する現物給与として社会保険料労働保険料等の算定基礎に含める必要があります。
なお、例えば、企業が労働者に専ら業務に使用する目的で事務用品等を「支給」という形で配布し、その配布を受けた事務用品等を従業員が自由に処分できず、業務に使用しなくなったときは返却を要する場合も、「貸与」とみて差し支えありません。

(注2) 企業が労働者に支給した在宅勤務手当のうち、購入費用や業務に使用した部分の金額を超過した部分を労働者が企業に返還しなかったとしても、その購入費用や業務に使用した部分の金額については労働者に対する報酬等・賃金として社会保険料労働保険料等の算定基礎に含める必要はありませんが、その超過分は労働者に対する報酬等・賃金として社会保険料労働保険料等の算定基礎に含める必要があります。
(3)レンタルオフィスの利用料金
労働者が、事業主が業務上必要であると認め勤務時間内に自宅近くのレンタルオフ
ィス等を利用して在宅勤務を行った場合、①労働者が在宅勤務に通常必要な費用としてレンタルオフィス代等を立替え払いし、かつ、②業務のために利用したものとして領収証等を企業に提出してその代金が精算されているものについては、社会保険料労働保険料等の算定の基礎には含まれません(企業が労働者に金銭を仮払いし、労働者がレンタルオフィス代等に係る領収証等を企業に提出し精算した場合も同じです。)。

高年齢者雇用対策の推進について(令和3年3月26日職発0326第10号)

高年齢者雇用対策の推進について(令和3年3月26日職発0326第10号)


65歳までの雇用確保措置(再雇用制度など)を行わない場合は、企業名の公表、ハローワークでの求人票の不受理や助成金の不支給等がされるようです。最近、見かけなくなりましたけど、60歳定年の会社は根絶されそうですね。

今年の4月から70歳までの雇用確保措置が努力義務なりましたが、遠くない将来には70歳までの雇用確保措置が義務付けられると思われます。

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46 年法律第68 号。以下「法」という。)については、雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14 号)により改正(以下「令和2年改正」という。)され、本年4月1日から施行されるところである。その施行については、令和2年4月1日付け基発0401 第17 号及び職発0401 第17 号「雇用保険法等の一部を改正する法律等について」をもって貴職あて通達したところであるが、これに基づく高年齢者雇用対策の推進については、下記のとおり示すので、これらに留意の上、業務の運営に遺漏なきよう特段の御配意をお願いする。
なお、本通知をもって平成25 年4月1日付け職発0401 第3号「高年齢者雇用対策の推進について」は廃止する。

Ⅰ.高年齢者の雇用及び就業確保に関する基本的な考え方等

少子高齢化が進む中で我が国の経済社会の活力を維持するためには、年齢にかかわりなく働ける企業の普及を図り、高年齢者の雇用の場の拡大に努めること等により、高年齢者の就業の機会を確保し、生涯現役社会の実現を図ることが必要である。
特に、人生100 年時代を迎える中、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境整備を図っていくことが重要である。
このような中、令和2年第201 回通常国会において、70 歳までの就業機会の確保を事業主の努力義務とすること等を内容とする法改正が行われた。また、令和3年度から令和7年度までの5年間を対象期間として、高年齢者等職業安定対策基本方針(令和2年厚生労働省告示第350 号。以下「基本方針」という。)の改正等が行われたところである。
この基本方針は、高年齢者の雇用・就業についての目標及び施策の基本的な考え方、事業主が行うべき諸条件の整備等に関する指針を示すこと等により、高年齢者の雇用の安定の確保、再就職の促進及び多様な就業機会の確保を図ることを定めたものである。

第1 高年齢者の就業の機会の増大に関する目標

基本方針の第2においては、高年齢者の就業の機会の増大の目標について、成長戦略実行計画(令和元年6月21 日閣議決定)で示された2025 年までの目標である65~69 歳の就業率を51.6%以上とすることを目指すこととされている。
この目標の達成に向けて、国は、次に掲げる事項に取り組むこととされている。

イ 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律(平成24年法律第78 号。以下「平成24 年改正法」という。)による改正後の法に基づき、希望者全員の65 歳までの高年齢者雇用確保措置(以下「雇用確保措置」という。)が全ての企業において講じられるよう取り組む。
ロ 令和2年改正後の法に基づき、70 歳までの高年齢者就業確保措置(以下「就業確保措置」という。)が適切に企業において講じられるよう取り組む。
ハ 高年齢者の雇用対策については、その知識、経験等を活かした安定した雇用の確保が基本となるが、それが困難な場合にあっては、在職中からの再就職支援等により、円滑な企業間の労働移動を行うことができるよう、また、有期契約労働者を含め離職する労働者については、その早期の再就職が可能となるよう再就職促進対策の強化を行う。
ニ 高齢期には、個々の労働者の意欲、体力等個人差が拡大し、その雇用・就業ニーズも雇用就業形態、労働時間等において多様化することから、このような多様なニーズに対応した雇用・就業機会の確保を図る。

第2 事業主が行うべき諸条件の整備に関する指針の基本的考え方

基本方針の第3の1において、事業主が行うべき諸条件の整備に関する指針が示されたところであるが、これは、法第4条第1項において、事業主の責務として、職業能力の開発及び向上並びに作業施設の改善その他の諸条件の整備を行う
ことにより、その雇用する高年齢者についてその意欲及び能力に応じてその者のための雇用の機会の確保等が図られるよう努める旨が規定されていることを踏まえ、事業主がこれら諸条件の整備等を実施する際に、当該取組が円滑に行われるようにするために指針を示したものである。
事業主は、当該指針の内容を参考に、労働者の年齢構成の高齢化や年金制度の状況等も踏まえ、労使間で十分な協議を行いつつ、当該企業における高年齢者の意欲及び能力に応じた雇用機会の確保等のために必要な諸条件の整備を行うことが求められるものである。

Ⅱ.高年齢者雇用確保措置及び高年齢者就業確保措置の推進等に係る指導について

第1 60 歳未満の定年の定めをしている企業に対する指導

1.60 歳を下回る定年の定めの禁止に関する基本的考え方

(1) 規定の意義
「定年」とは、労働者が所定の年齢に達したことを理由として自動的に又は解雇の意思表示によってその地位を失わせる制度であって就業規則労働協約又は労働契約に定められたものにおける当該年齢をいうものである。
当該制度の内容は労働基準法(昭和22 年法律第49 号)第89 条第1項第3号にいう「退職に関する事項」として、就業規則の絶対的必要記載事項(就業規則に必ず定めをしなければならない事項)に該当するため、当該制度が就業規則又は労働協約ではなく労働契約に定められることは、労働基準法上、就業規則の作成が義務付けられていない、常時使用する労働者が10 人未満の事業所においてしかあり得ないことであるので留意すること。
なお、単なる慣行として一定年齢における退職が定着している場合等は定年に含まれないものであり、また、いわゆる選択定年制のように早期の退職を優遇する制度における当該早期の退職年齢はここでいう定年ではないこと。

(2) 法的効果
法第8条の内容は、事業主が定年の定めをする場合には、当該定年は60 歳を下回ることができないこととするものであり、これは新たに定年の定めをする場合に限らず、既に定年の定めをしている場合も含むものであること。
法第8条に反して定められた60 歳を下回る定年は民事上無効であり、事業主は、当該年齢を根拠に労働者を退職させることはできないと解されるものであること。また、この場合、当該定年は60 歳と定めたものとみなされるのではなく、定年の定めがないものとみなされると解されるものであること。
なお、定年の定めをしていない事業主は、法第8条との関係で何ら問題となるものではないこと。

(3) 適用除外
イ 法第8条においては、高年齢者が従事することが困難な業務として省令で定める業務に従事する労働者については60 歳定年の義務化の適用除外としており、この業務は、具体的には,鉱業における坑内作業の実態に鑑み、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則(昭和46 年労働省令第24号。以下「則」という。)第4条の2において、鉱業法(昭和25 年法律第289 号)第4条に規定する事業における坑内作業の業務とされていること。
なお、「鉱業法第4条に規定する事業」とは、鉱物の試掘、採掘及びこれに付属する選鉱、精錬その他の事業をいうものであること。
ロ 事業主は、法第8条の規定にかかわらず、鉱業法第4条に規定する事業における坑内作業の業務に従事する労働者については60 歳を下回る定年を定めることができるものであること。
ただし、「鉱業法第4条に規定する事業における坑内作業の業務に従事する」とは、当該業務に常時従事することをいうものであり、事業主は、臨時的に当該業務に従事することがあるだけの者について60 歳を下回る定年を定めることはできないものであること。

第2 高年齢者雇用確保措置の実施に係る指導

1.高年齢者の雇用確保に関する指導に関する方針

65 歳未満定年の定めのある企業において、65 歳までの雇用確保措置の速やかな実施、希望者全員の65 歳までの安定した雇用の確保に関する自主的かつ計画的な取組が促進されるよう、下記2の指針の内容について周知徹底を図るとともに、都道府県労働局(以下「労働局」という。)及び公共職業安定所(以下「安定所」という。)においては、全ての企業において雇用確保措置が講じられるよう、周知の徹底や企業の実情に応じた指導等に積極的に取り組むこと。
また、雇用確保措置の実施に係る指導を繰り返し行ったにもかかわらず何ら具体的な取組を行わない企業には勧告書を発出し、勧告に従わない場合には企業名の公表を行い、各種法令等に基づき、安定所での求人の不受理・紹介保留、助成金の不支給等の措置を講じること。
なお、企業が賃金・人事処遇制度の見直し等を行う場合において、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構都道府県支部高齢・障害者業務課(以下「都道府県支部」という。)に配置されている65 歳超雇用推進プランナー及び高年齢者雇用アドバイザー(以下「65 歳超雇用推進プランナー等」という。)が専門的・技術的支援を有効に行えるよう、安定所は、適切な役割分担の下、都道府県支部と密接な連携を図ることとしており、こうした方針に基づき、雇用確保措置に係る指導等を行うこととする。

2.高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針の基本的考え方

法第9条第3項に基づく「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針」(平成24 年厚生労働省告示第560 号)は、65 歳未満の定年の定めをしている事業主が、労使間で十分な協議を行いつつ、雇用確保措置の適切かつ有効な実施を図るための指針であり、継続雇用制度について以下の内容を示している。
事業主は、継続雇用制度を導入する場合には、希望者全員を対象とする制度とすること。この場合において法第9条第2項に規定する特殊関係事業主(当該事業主の経営を実質的に支配することが可能となる関係にある事業主その他の当該事業主と特殊の関係のある事業主として則第4条の3に規定する事業主)により雇用を確保しようとするときは、事業主は、その雇用する高年齢者を当該特殊関係事業主が引き続いて雇用することを約する契約を、当該特殊関係事業主との間で締結する必要があることに留意すること。特殊関係事業主の要件については、契約の相手方たる要件である以上、まず契約を締結する時点で、その要件を満たす必要があり、加えて、法律上、契約の内容として「特殊関係事業主が引き続い
て雇用すること」が求められていることから、労働者が特殊関係事業主において雇用され始める時点でも特殊関係事業主たる要件を満たす必要があること。
心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く。以下同じ。)に該当する場合には、継続雇用しないことができること。就業規則に定める解雇事由又は退職事由と同一の事由を、継続雇用しないことができる事由として、解雇や退職の規定とは別に、就業規則に定めることもできること。
また、当該同一の事由について、継続雇用制度の円滑な実施のため、労使が協定を締結することができること。なお、解雇事由又は退職事由とは異なる運営基準を設けることは平成24 年改正法の趣旨を没却するおそれがあることに留意すること。
ただし、継続雇用しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられることに留意すること。

第3 高年齢者就業確保措置の実施に係る指導

1.高年齢者の就業確保に関する指導等に関する方針

就業確保措置は、令和2年改正により新たに設けられた努力義務であり、また、雇用確保措置とは異なる創業支援等措置を新たな選択肢として規定していることから、まずは制度の趣旨や内容の周知徹底を主眼とする啓発及び指導を行うこと。
また、70 歳までの就業確保措置の実施に向けた自主的かつ計画的な取組が促進されるよう定めた下記2の指針についても周知徹底を図ること。
雇用時における業務と内容及び働き方が同様の業務を創業支援等措置と称して行わせるなど、令和2年改正の趣旨に反する措置を講ずる事業主に対しては、措置の改善等のための指導等を行うこと。
労働局及び安定所における積極的な周知とあわせて、企業が賃金・人事処遇制度の見直し等を行う場合において65 歳超雇用推進プランナー等が専門的・技術的支援を有効に行えるよう、安定所は、適切な役割分担の下、都道府県支部と密接な連携を図ることとしており、こうした方針に基づき、就業確保措置に係る助言等を行うこととする。

2.高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針の基本的考え方

法第10 条の2第4項の規定に基づく「高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針」(令和2年厚生労働省告示第351 号)は、65 歳以上70 歳未満の定年の定めをしている事業主等が、労使間で十分な協議を行いつつ、就業確保措置
の適切かつ有効な実施を図るための指針であり、以下の内容を示している。
70 歳までの就業確保措置については努力義務であることから、事業主は、措置の対象となる高年齢者に係る基準を定めることも可能であるが、このような対象者基準の設定に当たっては、労使間で十分に協議の上、各企業の実情に応じて定められることを想定しており、その内容は原則として労使に委ねられるものであり、当該対象者基準を設ける際には、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいこと。
継続雇用制度を導入する場合、法第9条第2項に規定する特殊関係事業主又は令和2年改正後の法第10 条の2第3項の規定に基づいて他の事業主(65 歳以上の継続雇用制度を導入する場合に限る。以下同じ。)により雇用を確保しようとするときは、事業主は、その雇用する高年齢者を当該特殊関係事業主又は当該他の事業主が引き続いて雇用することを約する契約を、当該特殊関係事業主又は当該他の事業主との間で締結する必要があることに留意すること。なお、他の事業主において雇用される場合、労働契約法(平成19 年法律第128 号)に基づく無期転換ルールに係る特例を規定する専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法(平成26 年法律第137 号)が適用されず、無期転換申込権が発生すること。
心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由又は退職事由に該当する場合には、継続雇用しないことができること。就業規則に定める解雇事由又は退職事由と同一の事由を、継続雇用しないことができる事由として、解雇や退職の規定とは別に、就業規則に定めることもできること。
ただし、継続雇用しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられることに留意すること。
創業支援等措置を導入する場合には、則第4条の5第1項に規定する創業支援等措置の実施に関する計画(以下「実施計画」という。)を作成し、過半数労働組合等の同意を得る必要があるが、その際に、創業支援等措置による就業は労働関係法令による労働者保護が及ばないことから、実施計画に記載する事項を定めるものであること及び当該措置を選択する理由を十分に説明すること。また、創業支援等措置における個々の高年齢者の働き方について、業務の委託を行う事業主が指揮監督を行わず、業務依頼や業務従事の指示等に対する高年齢者の諾否の自由を拘束しない等、労働者性が認められるような働き方とならないよう留意すること。
心身の故障のため業務に耐えられないと認められること、業務の状況が著しく不良で引き続き業務を果たし得ないこと等実施計画に定める契約解除事由又は契約を更新しない事由(年齢に係るものを除く。)に該当する場合には、契約を継
続しないことができること。
創業支援等措置のうち、令和2年改正後の法第10 条の2第2項第2号ロ又はハの規定に基づく事業主が委託、出資等する者が行う社会貢献事業に係る措置を講じようとするときは、事業主は、社会貢献事業を実施する者との間で、当該者が当該措置の対象となる高年齢者に対して当該事業に従事する機会を提供することを約する契約を締結する必要があることに留意すること。

第4 高年齢者雇用状況等報告書の様式

1.高年齢者雇用状況等報告書の様式

則第33 条に規定する高年齢者雇用状況等報告書(様式第2号)の様式については、別添のとおりであること。

2.報告の主体

高年齢者雇用状況等報告書については、原則として全ての事業主に報告を求めうるものであること。

3.報告の手続

高年齢者雇用状況等報告書は、企業単位で求めるものであり、管轄安定所に対し提出させるものであること。

Ⅲ 高年齢者等の再就職の促進・援助について

解雇等により離職することとなっている高年齢者等(以下「離職予定高年齢者」という。)が希望するときは、その円滑な再就職を促進するため、法第15 条において再就職の援助に関する措置を講ずる努力義務、法第16 条において多数離職の届出に係る義務及び法第17 条において求職活動支援書の作成・交付に係る義務を定めている。

1.再就職援助措置

再就職援助措置の具体的な内容については、例えば、下記の援助を必要に応じて行うよう努めることとされていること。(基本方針第3の2(1))。
イ 教育訓練の受講、資格試験の受験等求職活動のための休暇の付与
ロ イの休暇日についての賃金の支給、教育訓練等の実費相当額の支給等在職中の求職活動に対する経済的な支援
ハ 求人の開拓、求人情報の収集・提供、関連企業等への再就職のあっせん
ニ 再就職に資する教育訓練、カウンセリング等の実施、受講等のあっせん
ホ 事業主間で連携した再就職の支援体制の整備
労働局及び安定所においては、離職予定高年齢者に対する在職中の求職活動の援助等に関する自主的な取組が促進されるよう、3の求職活動支援書とともに再就職援助措置について、企業に対して周知徹底を図ること。その際、離職予定高年齢者の再就職に係る支援を行う事業主への助成制度についても周知を行い、その活用を促すこと。

2.多数離職届

再就職援助措置の対象となる高年齢者が、解雇や就業確保措置の上限年齢に達する等により1ヶ月以内に5人以上離職する場合は、多数離職届の提出が事業主に義務づけられていることについての十分な周知徹底を図ること。

3.求職活動支援書

離職予定高年齢者については、事業主は、求職活動支援書の交付希望の有無を確認し、希望があるときは、その能力、希望等に十分配慮して、速やかに作成・交付することとされていること。また、交付が義務付けられていない定年退職者等についても、希望があるときは、求職活動支援書を作成・交付するよう努めることとされていること。
求職活動支援書を作成するときは、事業主は、あらかじめ再就職援助に係る基本的事項について、過半数労働組合等と十分な協議を行うとともに、交付を希望する離職予定高年齢者から再就職及び在職中の求職活動に関する希望を十分聴取することとされていること(基本方針第3の2(2))。
なお、事業主は、求職活動支援書の作成その他の再就職援助等の措置を講ずるに当たって、必要に応じ安定所に対して、情報提供その他の助言・援助を求めることとしており、安定所は当該事業主の求めに応じて、必要な支援を行うこと。
また、義務の対象となる離職予定高年齢者の希望があるにもかかわらず、求職活動支援書の作成等を行わない事業主に対しては、法に基づき指導を行うこと。
安定所においては、求職活動支援書の提示を受けたときは、記載内容を十分に参酌しつつ、可能な限り早期に再就職できるよう、的確な職業指導・職業紹介等を実施すること。また、「生涯現役支援窓口」においては、特に65 歳以上の高年齢求職者に対して、職業生活の再設計に係る支援やチームによるきめ細かな就職支援を重点的に実施すること。

キャリアアップ助成金の令和3年4月1日以降変更点概要

キャリアアップ助成金の令和3年4月1日以降変更点概要

2021年(令和3年)4月1日からのキャリアアップ助成金の変更点の概要が公表されました。
なお、この変更は2021年(令和3年)4月1日以降の取組みに対して適用されます。

「キャリアアップ助成金」は、非正規雇用労働者の方の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化などの取り組みを実施した事業主に対して助成金を支給する制度です。

令和3年度以降、以下のとおり、制度見直しに伴う内容変更が行われました。
https://www.rosei.jp/lawdb/common/data/pamphlet/file/000112254_file1.pdf

1.正社員化コース(有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換、または直接雇用した場合に助成)

現行制度の概要

■支給額(1人当たり、中小企業の場合)
① 有期→ 正規:57万円 ② 有期→ 無期または③ 無期→ 正規:28万5,000円
<①~③合わせて、1年度1事業所当たりの支給申請上限人数は20人まで>

■各種加算措置(1人当たり、中小企業の場合)
(1) 派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者として直接雇用した場合 28万5,000円
(2) 母子家庭の母等または父子家庭の父を転換等した場合 95,000円
(3) 若者雇用促進法に基づく認定事業主が35歳未満の者を転換等した場合 95,000円
(4) 勤務地・職務限定正社員制度を新たに規定し、有期雇用労働者等を当該雇用区分に転換または直接雇用した場合<1事業所当たり1回のみ>  95,000円

支給要件の変更

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加算措置の変更

上記加算措置のうち、(3)を廃止
(4)の対象として新たに短時間正社員制度が追加されました。

2.障害者正社員化コース(障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等へ転換した事業主に対して助成)

新設(障害者雇用安定助成金からの移管)

障害者雇用安定助成金の令和2年度末での廃止に伴い、障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)の「正規・無期転換」措置を、キャリアアップ助成金の「障害者正社員化コース」に移管されました。

障害者正社員化コースの概要

■概要
障害者の雇用促進と職場定着を図るために、次の①または②のいずれかの措置を講じた場合に助成されます。
①有期雇用労働者を正規雇用労働者または無期雇用労働者に転換すること
②無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換すること
■支給額
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3.健康診断制度コース(有期雇用労働者等を対象とする「法定外の健康診断制度」を新たに規定し、延べ4人以上実施した場合に助成)

本コースは、令和3年度から諸手当制度等共通化コースに統合されます。

4.諸手当制度等共通化コース(有期雇用労働者等に関して正規雇用労働者と共通の諸手当制度を新たに設け、適用した場合、または有期雇用労働者等を対象とする「法定外の健康診断制度」を新たに規定し、延べ4人以上実施した場合に助成)

現行制度の概要

■支給額(1事業所当たり、中小企業の場合)38万円<1事業所当たり1回のみ>

■各種加算措置
(1) 共通化した対象労働者(2人目以降)について、助成額を加算
・対象労働者1人当たり 15,000円<上限20人まで>
(2) 同時に共通化した諸手当(2つ目以降)について、助成額を加算
・諸手当の数1つ当たり 16万円<上限10手当まで>

支給要件の変更

令和3年度から、対象となる手当等を下記の通り変更されます。
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健康診断制度に関する支給要件の注意点:コース統合に伴い、定期健康診断等の受診日の前日から起算して3か月以上前の日から受診後6か月以上の期間継続して、支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者等であることが必要となります。(下線部が新要件部分)
※これに伴い、支給申請期間も、健康診断制度を有期雇用労働者等に延べ4人以上実施した日を含む月以降6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内となります。

※ 有期雇用労働者等を対象とする「法定外の健康診断制度」および有期雇用労働者等に関する正規雇用労働者との共通の諸手当制度の規定が令和3年3月31日以前の場合は、当該規定に基づく健康診断の実施日または諸手当等の適用日が同年4月以降となる場合であっても従前の制度が適用されます。

5.選択的適用拡大導入時処遇改善コース(労使合意に基づく社会保険の適用拡大の措置の導入に伴い、その雇用する有期雇用労働者等について、働き方の意向を適切に把握し、被用者保険の適用と働き方の見直しに反映させるための取り組みを実施し、当該措置により新たに被保険者とした場合に助成)

時限措置の延長

令和2年度限りとしていた措置を、令和4年9月末まで延長されます。
従業員が100人を超える事業主は、一部の加算措置を除き令和3年9月末まで
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6.短時間労働者労働時間延長コース(有期雇用労働者等の週所定労働時間を延長し、新たに社会保険を適用した場合に助成)

時限措置の延長

令和2年度限りとしていた措置を、令和4年9月末まで延長されます。

・短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長し新たに社会保険に適用した場合  1人当たり22万5,000円(※)←上乗せ前の額:19万円
・労働者の手取り収入が減少しないように週所定労働時間を1~4時間延長するとともに基本給を昇給し、新たに社会保険に適用させた場合(※)
1人当たり45,000円~ 18万円
<1年度1事業所当たり支給申請上限人数は45人まで(※)←従前は15人まで>
※は現時点で令和3年3月31日までの暫定措置。

※大企業の場合は、上記の約75%の額が助成されます。
※生産性要件を満たしている場合は、上記の約125%の額が助成されます。
※事前にキャリアアップ計画の提出が必要です。
※すでにキャリアアップ計画を提出している事業主の方が当初の計画とは異なるコースを利用する等の場合、事前にキャリアアップ計画変更届の提出が必要となります。キャリアアップ計画変更届は厚生労働省HPにも掲載されています。
厚生労働省HP「キャリアアップ助成金
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

小学校休業等対応助成金「個人申請分」等の運用が開始等について

小学校休業等対応助成金「個人申請分」等の運用が開始されました

厚生労働省で、「小学校休業等対応助成金」(※)に関する相談に対応するため、「小学校休業等対応助成金に係る特別相談窓口]
を、2020年(令和2年)11月24日から2021年(令和3年)年3月31日までの期間、全国の都道府県労働局に設置されていますが、その設置設置期間の延長とともに、小学校休業等対応助成金の申請期限の一部の延長および小学校休業等対応助成金「個人申請分」等の運用開始がされることになりました。
※制度の対象となる休暇の取得期間は2020年(令和2年)2月27日~2021年(令和3年)3月31日です。


概要を抜粋いたします。
詳細はリンクをご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17628.html

1.特別相談窓口の設置期間の延長

特別相談窓口の設置期間を、2021年(令和3年)6月30日まで延長します。

2.小学校休業等対応助成金の申請期限

2020年(令和2年)9月30日までの休暇分は申請期限を経過しており、2020年(令和2年)10月1日~同年12月31日の休暇分の申請期限は2021年(令和3年)3 月31日ですが、次のⅠ、Ⅱの場合は、申請期限経過後(2021年(令和3年) 6月30日まで)に申請することが可能です。

Ⅰ. 労働者からの特別相談窓口への「(企業に)この助成金を利用してもらいたい」等のご相談に基づき、労働局が事業主への助成金活用の働きかけを行い、これを受けて事業主が申請を行う場合
Ⅱ. 労働者が特別相談窓口へ相談し、労働局から助言等を受けて、労働者自らが事業主に働きかけ、事業主が申請を行う場合

3.小学校休業等対応助成金「個人申請分」等の運用開始

労働局からの本助成金の活用の働きかけに事業主が応じていただけない場合に、
 ① 令和2年2月27日~同年3月31日の休みについては、本助成金を労働者が直接申請(個人申請分)
 ② 令和2年4月1日~令和3年3月31日の休みについては、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金
の仕組みにより労働者が直接申請により給付する運用を、本日(3月26日)より開始します申請期限は令和3年6月30日です)。

【対象】
以下を満たすことを前提に、上記①②の期間に応じて、各制度の支給要件を満たす場合に、各制度の支給対象となります。

助成金について労働局に労働者から相談があり、労働局から事業主に助成金活用・有給の休暇付与の働きかけを行ったものの、事業主がそれに応じなかったこと。
小学校等の臨時休業等のために仕事を休み、その休んだ日時について、通常通りの賃金等が支払われていない部分があること。
小学校休業等対応助成金(個人申請分)及び新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の申請に当たって、事業主記載欄の記載や証明書類の提供について、事業主の協力が得られること。また、②の期間の休業支援金・給付金の申請に当たっては、当該労働者を休業させたとする扱いに事業主が同意すること


【申請先】
都道府県労働局「小学校休業等対応助成金に係る特別相談窓口」
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個人申請分等についてのQ&A

Q  どのような場合に、小学校休業等対応助成金の個人申請分や休業支援金・給付金の対象となりますか?

A 以下を満たすことを前提に、各制度の支給要件を満たす場合に、各制度の対象となります。
① 労働者が労働局に小学校休業等対応助成金の相談を行い、労働局が事業主に助成金活用・有給の休暇付与の働きかけを行ったものの、事業主がそれに応じなかったこと
新型コロナウイルス感染症への対応としての小学校等の臨時休業等のために仕事を休み(※1、2)、その休んだ日時について、通常通りの賃金等が支払われていない(※3)部分があること
※1 保育所等の利用を控える依頼への対応のためや、新型コロナウイルスに感染したおそれのある子どもの世話をするために休んだ場合を含みます。
※2 休むことを事業主に連絡しておらず、当該休みを事業主が事後的にも正当なものとして認めていない場合(いわゆる「無断欠勤」)は対象になりません。
※3 年次有給休暇を取得した部分は通常通りの賃金等が支払われているものと扱います。

③ 小学校休業等対応助成金の個人申請分および新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の申請に当たって、事業主記載欄の記載や当該労働者への証明書類の提供について、事業主の協力が得られること。また、令和2年4月以降分の休暇に係る新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の申請に当たっては、当該労働者を休業させたとする扱いに事業主が同意すること。


Q  どこに申請すればよいですか?申請期限はいつですか?

A まずは、勤務先の事業所の所在地を管轄する都道府県労働局「小学校休業等対応助成金に関する特別相談窓口」にご相談ください。申請期限(特別相談窓口の設置期限)は令和3年6月30日です。

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「労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則等に規定する届書等の様式について」の改正について(令3.3.29基発0329第23号)

労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則等に規定する届書等の様式について」の改正について(令3.3.29基発0329第23号)

今年の年度更新もこの書式になるものと思われます。
捺印欄がなくなりました。
アクセスコードを知るためにクライアントからわざわざ申告用紙を取り寄せる必要があるため、社労士としては、電子申請する際のアクセスコードも廃止にしてくれると助かるんですけど・・・

それから、今年の年度更新の提出期限を早く公表してもらいたいです。

算定基礎は9月からの社会保険料に反映させる必要があるため、提出期限の延長は難しいでしょうが、年度更新だけでも延ばしてくれると助かります。


https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210330K0020.pdf


労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則(昭和47 年労働省令第8号。以下「徴収則」という。)及び厚生労働省関係石綿による健康被害の救済に関する法律施行規則(平成18 年厚生労働省令第39 号)に規定する届書等の様式(以下「通達様式」という。)については、令和2年12 月25 日付け基発1225第1号「押印を求める手続の見直し等のための厚生労働省関係省令の一部を改正する省令等の施行等について」により取り扱われてきたところであるが、通達様式の一部について、別紙の通り改めることとした。その内容は下記の通りであるので、その運用に遺漏なきを期されたい。


              記

1.改正の内容
(1)徴収則関係様式について
令和2年度から高年齢免除措置が廃止されたことに伴い、徴収則関係様式第6号(甲)について、高年齢免除に係る所要の改正を行ったこと。

(2)石綿則関係様式について
令和2年度から高年齢免除措置が廃止されたことに伴い、石綿則関係様式第1号(甲)について、高年齢免除に係る所要の改正を行ったこと。

(3)その他文言の適正化等の改正を行ったこと。


2.その他
本通達は、令和3年4月1日から施行すること。


様式第1号:https://drive.google.com/file/d/1_aXu37WFsFGSlKI2QNIZ9ffbWKXQTp12/view?usp=sharing
様式第6号:https://drive.google.com/file/d/1ZRSUlXJrC2CgoDeFkCK3caNkrq6ktvD7/view?usp=sharing

令和3年4月1日施行|芸能関係作業従事者やアニメーション制作作業従事者など労災保険の「特別加入」の対象が拡大

令和3年4月1日施行|芸能関係作業従事者やアニメーション制作作業従事者など労災保険の「特別加入」の対象が拡大

2021年(令和3年)4月1日から、以下の方について新たに特別加入制度の対象となります。
なお、今回新たに特別加入制度の対象となるのは、労働者ではない方(いわゆる、一人親方フリーランス)で、労働者を雇っていない方です。労働者を雇っている場合は、中小事業主等に該当すれば従前どおり事業主も特別加入が可能です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/kanyu_r3.4.1.html


芸能関係作業従事者
アニメーション制作作業従事者
柔道整復師
創業支援等措置に基づき事業を行う方

1.特別加入制度とは

労災保険は、労働者が仕事または通勤によって被った災害に対して、補償する制度です。労働者以外の方でも、一定の要件を満たす場合に任意加入でき、補償を受けることができます。これを「特別加入制度」といいます。

2.特別加入のメリット

労災保険に特別加入することにより 、仕事中や通勤中のケガ、病気、 障害または死亡等をした 場合、補償を受けられます。

3.給付内容

労災保険給付では、 ケガ等の治療費などの療養費や、ケガ等で休業する際の休業期間の給付、治療後に障害が残った場合の給付、お亡くなりになった場合の遺族への給付等が支給されます。

4.対象者

①芸能関係作業従事者

労働者以外の方であって、【放送番組(広告放送を含む。)、映画、寄席、劇場等における音楽、演芸その他の芸能の提供の作業又はその演出若しくは企画の作業】を行う方について、新たに特別加入の対象となりました。
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※私が大好きな浜崎あゆみさんもこちらで加入できます。

②アニメーション制作作業従事者

労働者以外の方であって、【アニメーションの制作の作業】を行う方について、新たに特別加入の対象となりました。
声優の方については芸能関係作業従事者として特別加入することが可能です。
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柔道整復師

労働者以外の方で、【柔道整復師法第2条に規定する柔道整復師が行う事業】を、労働者を使用しないで行われる方(一人親方)や、一人親方が行う事業に従事される方について、新たに特別加入の対象となりました。
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④創業支援等措置に基づき事業を行う方

労働者以外の方で、【雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)の改正により新設された、高年齢者の雇用の安定等に関する法律第10条の2第2項に規定する創業支援等措置に基づき、同項第1号に規定する委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が新たに開始する事業又は同項第2号に規定する社会貢献事業に係る委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が行う事業】を、労働者を使用しないで行われる方(一人親方)や、一人親方が行う事業に従事される方について、新たに特別加入の対象となりました。

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5.加入について

加入については、最寄りの社会保険労務士、労働保険事務組合、労働基準監督署または都道府県労働局にお尋ねください。

青少年雇用対策基本方針(厚生労働省告示第百十四号)

青少年雇用対策基本方針(厚生労働省告示第百十四号)

厚生労働省より、今後5年間にわたる青少年の適職の選択ならびに職業能力の開発や向上に関する施策の基本となる方針を示した「青少年雇用対策基本方針※」が公表されました。 ※「青少年雇用対策基本方針」とは、青少年の雇用の促進等に関する法律第8条第1項の規定に基づくものです。

https://www.mhlw.go.jp/content/11804000/000759745.pdf

【青少年雇用対策基本方針のポイント】 今後の若年者雇用施策の柱の一つとして以下の点を位置づける。 ・ 様々な事由により早期に離転職する場合でも長期的・安定的に職業人生を歩めることが重要であることから、入職後早期に離転職する青少年に対するキャリア自律に向けた支援

・ 青少年の主体的なキャリア形成を促進する必要があるため、キャリア形成サポートセンターやオンラインの活用によるキャリアコンサルティングをより身近に受けられる環境整備  など

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響も含め、経済社会情勢の変化などに伴い、新たな施策が必要な場合には、本基本方針の趣旨などを踏まえて機動的に対応する。

今後の基本方針の概要だけででなく、現在の雇用の状況をざっと把握することができ、一読に値する方針であると考え全文抜粋いたしました。

*はじめに 青少年雇用対策基本方針(以下「本方針」という。)では、青少年の職業生活に関する動向を明らかにするとともに、経済・社会の変化、少子高齢化の進行や青少年に求められる社会の期待等を踏まえ、青少年が、仕事・人・社会への積極的な関わりを通じて自信と意欲を備え、適職の選択並びに職業能力の開発及び向上を通じて継続的なキャリア形成を図り、社会の構成員として自立して健全に成長することを促すため、また、これを支える関係機関の連携による社会的ネットワークの整備を図るため、施策の基本となるべき事項を示すこととする。 本方針において「青少年」とは、35歳未満の者をいう。ただし、個々の施策・事業の運用状況等に応じて、おおむね「45歳未満」の者についても、その対象とすることは妨げないものとする。 また、青少年の雇用の促進等に関する法律(昭和45年法律第98号。以下「法」という。)第2条及び第3条に規定するとおり、青少年雇用対策は、青少年が、その意欲や能力に応じて、有為な職業人として成育するよう、就職支援、職業生活における自立促進等の必要な支援を行うこととしている。なお、法第3条の「青少年である労働者」は、現に働いている者に限らず、求職者やいわゆるニート等の青少年も含まれるものである。 本方針の運営期間は、令和3年度から令和7年度までの5か年とする。 なお、令和2年からの新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を含め、経済社会情勢の変化等に伴い、本方針の運営期間中に新たな施策が必要となる場合は、本方針の趣旨等を踏まえて機動的に対応するものとする。

*第1 青少年の職業生活の動向 **1 青少年を取り巻く環境の変化 我が国の経済・社会をめぐる環境は、Society5.0(必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会)の実現に向け、第4次産業革命を背景とする産業構造の急激な変化など、近年目まぐるしく変化しており、新型コロナウイルス感染症の影響の下で、社会全体のデジタルトランスフォーメーションの加速化が促進されるものとみられる。また、人生100年時代の到来による労働者の職業人生の長期化や働き方の多様化の進展を受け、新卒一括採用や長期雇用等に特徴付けられる日本型の雇用慣行も徐々に変化している。 このような経済・社会環境を前提として、青少年の雇用動向を見ると、青少年の人口が減少しているにもかかわらず、若年層の完全失業率は他の年齢層と比較しても高い水準にある。 こうした中、学校等の新規卒業予定者(以下「学校卒業見込者」という。)の就職環境はいわゆるリーマンショック後の不況に伴う悪化から回復し、いわゆるフリーターと呼ばれる不安定就労を繰り返す者が減少傾向にある一方で、いわゆるニートと呼ばれる若年無業者の数は高水準で推移しており、ニートの該当年齢層人口に対する比率(無業率)も高止まりしている。 また、高等学校卒業者の大学への進学率は、引き続き上昇傾向にあり、平成21年以降はおおむね50%を超える水準にある。その一方で、各学校段階での中途退学者が相当程度の頻度で発生し、これらの者がその後、いわゆる非正規雇用となる割合が高くなるとともに、就職先が決まらないまま卒業した者や卒業後に非正規雇用となる者も一定数存在しており、継続的なキャリア形成を実現することが困難な状況となっている。 以下、これらの青少年の職業生活の動向について、より具体的なデータに基づき概観する。

2 青少年等の現状 *⑴ 若年労働力人口の動向 少子化が進展する中で、15歳から34歳までの若年労働力人口は減少が続き、平成29年で1,711万人、総労働力人口に占める割合は25.5%となっている。労働参加が現状のままである等と仮定すると、令和22年には1,364万人(ピーク時(昭和43年)の57.4%)にまで減少することが見込まれている。このように、中長期的に社会の支え手である若年労働力人口の減少は避けられず、これに伴い、経済・社会システムの維持のための青少年1人当たりの負担はますます大きくなると見込まれる。

***⑵ 青少年をめぐる雇用情勢 青少年の完全失業率は、平成21年をピークに低下傾向にある。令和2年における全体の完全失業率は2.8%である一方で、若年層の完全失業率も15歳から24歳までは4.6%、25歳から34歳までは3.9%と、他の年齢層に比べてなお高水準にある。 また、学校卒業見込者の就職状況についても、リーマンショック後の不況に伴う悪化から回復したことに加え、人手不足も影響して大学・高等学校ともに学校卒業見込者の求人倍率や就職(内定)率が上昇し、令和2年3月卒業者の就職(内定)率は大学で98.0%と調査開始以降最高となったほか、高等学校でも98.1%と高水準となっている。 一方、学校等を卒業後、就職して3年以内に離職する者の割合は近年おおむね横ばいで推移しており、平成29年3月卒業者については、中学校卒業者で59.8%、高等学校卒業者で39.5%、大学卒業者で32.8%となっている。ただし、足下では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が青少年を取り巻く雇用情勢に大きな影響を与えており、今後も引き続き、その動向に注視が必要である。

***⑶ 就業構造の変化及び就業形態の多様化並びに自立に困難を抱える青少年の増大 青少年の就業状況について、産業別の就業者数の構成割合を見ると、令和2年では「卸売業、小売業」が17.1%と最も多く、次いで「製造業」が15.6%、近年労働市場における需要が高まっている「医療、福祉」が13.0%と続いている。同じく職業別の就業者数の構成割合を見ると、「専門的・技術的職業従事者」が21.3%と最も多く、次いで「事務従事者」が18.4%、「販売従事者」が15.7%、「サービス職業従事者」が14.8%と続いている。 学校卒業見込者の就職状況に改善が見られる一方で、学校等から職業生活への円滑な移行ができず、キャリア形成に課題を抱える青少年の存在が見られる。 就職を希望しつつも就職先が決まらないまま卒業した者を含め、卒業後に進学も就職もしない学校等の卒業者は、高等学校卒業者で約4万8千人、大学卒業者で約4万1千人(令和2年3月卒業者)となっている。また、非正規雇用労働者のうち、不本意ながら非正規雇用で働いている青少年の割合は11.2%(令和元年)となっている。 非正規雇用労働者の給与は、ほぼ全ての世代で正規雇用労働者の給与を下回り、年齢による変化がほとんどないことから、就業年数を重ねても増加することなく固定化していることがうかがえる。 フリーター数は、平成15年の217万人をピークに5年連続で減少した後、平成21年以降は180万人前後で推移していたが、平成26年以降は7年連続で減少し、令和2年は136万人となっている。フリーター期間が長くなるほど、正規雇用への移行が難しくなる傾向が見られる。 また、ニート数は、若年労働力人口が減少傾向にあるにもかかわらず、平成27年から令和元年まで50万人台と横ばいで推移し、令和2年には前年比で13万人増の69万人となっている。 高等学校・大学等の中途退学者については、高等学校で約4万3千人(令和元年度)、大学等で約7万9千人(平成24年度)となり、中途退学後に就職した者の就業状況を見ると、正規雇用の比率が各学校を卒業した者に比べて著しく低く、約6割(平成29年)がアルバイト・パートの形態で働いており、安定的な仕事に就くことが困難な状況が見られる。 このような状況の下で、キャリア形成の初期段階において基本的な職業能力の修得がなされないことにより、将来的に人的資本の質が低下し、労働力人口が減少する中での経済・社会への影響が懸念される。

***⑷ 働くことに関する青少年の意識 「新入社員「働くことの意識」調査」(平成31年)によると、青少年の働く目的については、「楽しい生活をしたい」とする者が39.6%と最も多く、「経済的に豊かになる」とする者が28.2%と高水準を維持する一方で、「社会に役立つ」とする者が9.3%と引き続き横ばいとなっており、経済的・物質的な豊かさだけでなく、楽しさ、やりがい等の精神的な豊かさを重視する傾向が見られる。 また、同調査によると、仕事と生活のバランスについては、「両立」を志向する者が約8割と大多数を占め、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を重視する傾向がうかがえる。 また、厚生労働省の「能力開発基本調査」(令和元年度)によると、職業生活設計について、会社に提示してもらうのではなく自分で考えていきたいとする20歳から29歳までの労働者は「正社員」では65.7%、「正社員以外」でも55.0%に達する。一方、職業生活を継続するため、職業に関する能力を自発的に開発し、向上させるための活動である自己啓発を行った20歳から29歳までの労働者は、「正社員」では43.2%であるのに対し、「正社員以外」では13.6%にとどまっている。 さらに、初めて勤務した会社の主な離職理由は「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」及び「人間関係がよくなかった」との回答が多く、次いで「賃金の条件がよくなかった」及び「仕事が自分に合わない」との回答が多くなっており、労働条件への不満、職場環境及び仕事内容が大きな要因となっていることがうかがえる。

*第2 青少年について適職の選択を可能とする環境の整備並びに職業能力の開発及び向上を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項等

**1 青少年雇用対策の方向性 若年期は、生涯にわたるキャリア形成のスタートとして重要な時期であり、青少年が安定した雇用の中で経験を積みながら職業能力を向上させていくことが必要である。 しかしながら、第1のとおり、学校等から職業生活への円滑な移行ができず、キャリア形成の初期の段階でつまづき、基本的な職業能力の修得に困難を抱える青少年が存在するなど、将来を担う青少年のキャリア形成に大きな課題が見られる。 青少年は心身ともに成長過程にあり、一般的に人生経験や職業経験が少ないため、自らの適性等を理解した上で適職の選択を行うことについても他の年齢層に比べて未熟な面があることから、マッチングの向上等のための積極的な支援が求められる。 具体的には、学校等から職業生活への移行を円滑にするために在学段階から職業意識の形成を行うとともに、就職活動段階においては、マッチングの向上等を図り、学校卒業見込者等が早期に離職することなく、最初の職場で集中的に職業経験を積んで、その後のキャリア形成のための基盤となる職業能力を培うことができるよう支援を行う。また、様々な事由により入職後早期に離職する青少年が早期に再就職し、その持てる能力を発揮できるようキャリア自律に向けた支援を行う。その際、青少年が多種多様な情報から必要な情報を取捨選択して判断することに課題が見られることから、情報面での支援に留意する。 また、中途退学や就職先が決まらないまま学校等を卒業したことにより、学校等とのつながりがなくなり、適切な就職支援が受けられずに不安定な就業を繰り返す者や就職への意欲を失ってニートとなる者が一定数存在するといった課題を踏まえ、個人の事情に配慮した支援を行う。 青少年雇用対策の推進に当たっては、事業主、学校等、地方公共団体、労働行政機関等関係行政機関、職業紹介事業者、募集情報提供事業者、職業訓練機関、地域の青少年支援機関等の関係者が連携・協力し、社会全体で取組を進めていくという観点が不可欠である。 以下、施策分野ごとに、重点的に取り組む事項を掲げることとする。

2 学校卒業見込者等の就職活動、マッチング、職場定着等に向けた支援 *⑴ 在学段階からの職業意識等の醸成 在学段階は、社会・職業生活への移行の前段階であり、職業人生における初期キャリアの形成に向け、勤労観、職業観等の職業意識といった将来の進路決定・就職に向けた基盤が形成される重要な時期である。 文部科学行政においても、「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(平成23年1月中央教育審議会答申)により、「キャリア教育は、キャリアが子ども・若者の発達の段階やその発達課題の達成と深くかかわりながら段階を追って発達していくことを踏まえ、幼児期の教育から高等教育に至るまで体系的に進めること」、「職業能力の開発・向上の促進等を担う厚生労働省や、企業やNPO等の民間主体の組織・人材の育成等を担う経済産業省等の関係府省間での連携・協力を図ること」等の方針が示されるとともに、大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)等が改正され、全ての大学等に社会的・職業的自立に関する指導等の実施のための体制整備が求められることとなった。 また、学校等の卒業者の早期離職や一定数の青少年がフリーター、ニート等になっていることなど、学校等から社会・職業生活への移行が必ずしも円滑に行われていない状況が見られる中、社会に出てから顕在化するこれらの問題に対する事後的な対応にとどまらず、未然に防止するための対策としても、在学段階から次の①から③まで等の体系的なキャリア形成支援の充実が求められる。

①キャリア教育の推進を通じた職業意識の形成支援 青少年が適職の選択を行うためには、自らの適性や興味・関心、職業との関わり等に対する理解が前提となることから、在学段階から職業意識の形成支援を行うことが重要である。 学校等におけるキャリア教育の推進に当たり、公共職業安定所は、職場体験・インターンシップの受入企業の開拓、地域の様々な産業で働いている社会人を講師とした職業講話、自己や仕事に関する理解を深める授業・ガイダンスの実施、青少年が希望する地域の職業情報・雇用情報の提供等、積極的な協力に努める。 なお、職場体験・インターンシップは、キャリア教育の一環として行われることが基本であり、その趣旨に沿った適正な形で実施されるよう、事業主等への周知徹底を図っていく。 キャリア教育の推進に当たっては、学生が、インターンシップ、キャリア教育等の状況、自らの目標等を記入するキャリア・プランニングのツールとしてジョブ・カードを活用することが求められている。このため、関係各府省と連携して、在学段階からジョブ・カードが活用されるよう、利用の促進・周知を図っていく。 ものづくり分野をはじめとする幅広い職業について理解を深め、就職前段階で適切な職業意識を持てるよう学校等と公共職業能力開発施設の連携により、学生、生徒等に対するものづくり体験、技能講習会等の実施を進める。 保護者に対しても、保護者が時代に合った職業観を持ち、学校等におけるキャリア教育や学生・生徒自身の主体的な職業意識の確立について理解・協力してもらうことが望まれる。

②関係者の連携によるキャリア教育推進の基盤整備 初等中等教育及び高等教育の各学校等による主体的な取組がより効果的に推進されるよう、その基盤として、各地域の地方公共団体、労使団体、企業、労働行政機関等関係機関の連携・協力が不可欠である。 その際、職業適性や興味に関する各種検査の活用、詳細な職場情報や地域の企業情報の提供、キャリアコンサルタント等の専門人材の活用、ジョブ・カードの普及等、労働行政機関の有するキャリア形成に資する資源や手法、人材等を広く提供し、活用の促進を図ることも重要である。

③労働関係法令に関する知識等の周知啓発 青少年の就職活動時や就職後のトラブルの防止のためには、労働関係法令に関する理解を深めることが重要であり、都道府県労働局等と学校等との連携・協力により、学生・生徒に対して労働関係法令に関する知識等の周知を図ることが求められる。 このため、法において、学生・生徒に対する職業生活において必要な労働に関する法令に関する知識の付与に係る国の努力義務を規定していることも踏まえ、国は、都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所による講師の派遣、労働関係法令に関する基礎的な知識をまとめた冊子の提供等を積極的に行うとともに、学校等に対しては、職場体験・インターンシップの実施の前後や学生・生徒の進路決定の際など、適切な機会を捉えた労働関係法令に関する知識等の付与に係る取組の周知を図る。 さらに、都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所は、労働に関するトラブルに適切に対処できるよう、都道府県労働局等に設置されている総合労働相談コーナー等の相談窓口を周知する。

***⑵マッチングの向上等による学校卒業見込者等の職業生活への円滑な移行、適職の選択、職場定着等のための支援 我が国の若年失業率は、国際的に見て相当低い水準にとどまっているが、その背景には、学校等の卒業前に就職先が決定し、企業で継続的に人材育成を行う学校卒業見込者の一括採用があると考えられる。この仕組みは、事業主にとっても学校卒業見込者にとってもメリットがあり、一定の合理性を持つ雇用慣行として我が国で広く定着してきたところである。 したがって、青少年の円滑なキャリア形成のためには、特に学校等の新規卒業時の職業選択が重要であり、次の①から⑥までの適職の選択を行うことができる環境の整備が必要である。

①学校等から職業生活への円滑な移行のための支援 学校等から職業生活への円滑な移行のため、公共職業安定所が学校等と連携・協力し、就職支援ナビゲーターによる大学等への出張相談、就職支援セミナー等、地域の学校等や学生・生徒等のニーズに応じた支援を行う。 特に、採用意欲が高く、青少年の雇用管理が優良な中小企業と、大企業志向の強い学校卒業見込者等との間にミスマッチが存在している状況等を踏まえ、青少年の募集等に関する取組の実施状況が優良である等の事業主を法の規定に基づき認定する制度(以下「ユースエール認定制度」という。)により、中小企業の情報発信を支援し、企業規模等にとらわれない職業選択を促す。その際、大企業や知名度の高い企業を子どもに推奨する傾向があると言われる保護者の意識への働きかけも求められる。 卒業間近になっても内定を得られていない学生・生徒に対しては、卒業までに内定を得られるよう、関係省庁との連携の下で、新卒応援ハローワーク等において毎年1月から3月までの期間に集中的に就職支援を行うとともに、就職先が決まらないまま卒業した者に対しても、新卒応援ハローワーク等において継続して就職支援を行う。 公共職業安定所は、学校卒業見込者等に対して就職支援を行う際に、トラブルに巻き込まれた際の相談窓口(都道府県労働局等に設置されている総合労働相談コーナー等)について周知啓発を図る。

既卒者の応募機会の拡大に向けた取組の促進 学校卒業見込者の一括採用の仕組みについては、事業主にとっては、職業経験のない学校卒業見込者を集団的かつ集中的に正規雇用労働者として採用し、長期雇用の下でOJT等の企業内での訓練を実施しながら必要な知識・技能を習得させていくこと等が効率的であること、学校卒業見込者にとっても、失業状態を経ることなく円滑に社会・職業生活に移行できること等のメリットがあり、一定の合理性を持つ雇用慣行として広く定着してきたところである。 一方、経済・社会環境及び労働市場の構造の変化の下、急激な雇用情勢の悪化等の影響により、就職先が決まらないまま卒業した者、次年度の就職活動のために学校等を留年した者、不本意ながら非正規雇用に就いた者、ミスマッチにより早期の離職を余儀なくされた者等が存在し、さらに、フリーター等の不安定な就業形態に就くことで、その後正規雇用に移行することがより困難となる状況が生じている。 こうしたことから、青少年の募集及び採用に当たって、卒業後の経過期間にとらわれることなく人物本位による正当な評価が行われるよう、法の規定に基づき厚生労働大臣が定める「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」(平成27年厚生労働省告示第406号)において、学校卒業見込者の採用枠について、既卒者が学校等を卒業後少なくとも3年間は応募できるものとすること、できる限り年齢の上限を設けないようにすること等を定めたところである。この指針を活用し、事業主への周知啓発、指導を着実に実施することにより、学校等を卒業後の一定期間は「新卒」扱いとする、通年採用を拡大するなど、既卒者が正規雇用に応募する機会を広げる取組を促す必要がある。

③マッチングの向上に資するための労働条件等の明示の徹底及び積極的な情報提供の促進 事業主から示される労働条件等は、学校卒業見込者等が就職先を決定する際の重要な情報であるが、募集時に示された労働条件等と労働契約の締結時に明示された労働条件等が異なるなど、労働条件等をめぐるトラブルが発生している現状に鑑み、職業安定法(昭和22年法律第141号)、労働基準法(昭和22年法律第49号)等の労働条件等の明示に関する規定等の周知徹底を図る。 また、労働条件等をめぐるトラブル等に対し、法令等に基づく行政指導を実施してもなお、個々の労働者と事業主との間の紛争が解決しない場合には、都道府県労働局による個別労働紛争解決制度等が利用できることを周知するとともに、公共職業安定所は必要に応じて相談等に適切に対応する。 さらに、マッチングの向上のためには、労働条件等に加えて、職場の就労実態に係る情報が提供される環境の整備が重要である。このため、法第13条及び第14条に規定する青少年雇用情報の提供について履行の確保を図るとともに、公共職業安定所が学校卒業見込者等求人(法第11条に規定する学校卒業見込者等求人をいう。以下同じ。)の申込みを受理するに当たっては、求人者に対し、青少年の雇用の促進等に関する法律施行規則(平成27年厚生労働省令第155号)第5条第1項に定める青少年雇用情報の全ての事項の提供を求めていく。 また、公共職業安定所においては、青少年雇用情報の求めを行ったことを理由とした不利益取扱いに係る相談への対応、学校卒業見込者等が具体的な情報の求めを行った場合の事業主への対応その他青少年雇用情報の提供の仕組みが学校卒業見込者等の適職の選択に有効に機能するために必要な取組を進める。 なお、青少年雇用情報の提供は、学校卒業見込者等の適職の選択のための措置であり、事業主及び学校卒業見込者等の双方に適正な対応が求められることについて周知を図っていく。

④労働関係法令違反が疑われる企業への対応 労働基準法等の労働関係法令違反が疑われる事業場については、労働基準監督機関等による監督指導等を行っていくほか、社会的に影響力の大きい企業において違法な長時間労働等が複数の事業場で認められた場合には、都道府県労働局長から経営トップに対し全社的な是正を図るよう指導を行うとともに、その事実を公表するなど、実効性のある取組を行っていく。 また、公共職業安定所において、労働基準監督機関等との連携の下、職業安定法第5条の5に規定する求人不受理の措置を着実に実施していく。

⑤就職後の職場適応・職場定着のための支援 公共職業安定所は、学校卒業見込者等について就職後においてもその状況把握に努め、職場適応のための相談対応等、職場定着に向けた支援を行うとともに、事業主に対し、個々の状況に応じて助言・指導等により雇用管理の改善を促していく。 青少年の早期離職の防止・職場定着の促進を図る観点からも、入職後早期におけるキャリアコンサルティングの機会の提供を行うとともに、メンタルヘルス不調の発生の防止、不調者への適切な対応、職場復帰の支援等、職場におけるメンタルヘルス対策の充実を図り、青少年が心身ともに充実した状態で意欲と能力を十分に発揮できる職場環境を整備していく。

⑥入職後早期に離転職する青少年に対するキャリア自律に向けた支援 様々な事由により早期に離転職する青少年もいることから、そのような場合であっても、長期的・安定的に職業人生をより豊かに送ることができるよう、新卒応援ハローワーク等における職業相談の実施に加え、入職後早期におけるキャリアコンサルティングの機会の提供等により、キャリア自律に向けた支援を行う。 また、ユースエール認定制度をはじめとした雇用管理の状況等が優良な企業の認定・表彰に関する状況や時間外労働の状況等の企業の職場情報を青少年がワンストップで閲覧できる職場情報総合サイト(しょくばらぼ)等を通じて、職場情報の見える化を促進する。 さらに、青少年が持つ職業スキルや経験等を生かした就職活動や企業の採用活動が行えるように職業情報の見える化を進めるため、職業情報提供サイト(日本版O-NET)において、広く求人企業・求職者等に職業情報を提供することにより、効果的なマッチングを図る。

**3 中途退学者・就職先が決まらないまま卒業した者に対する支援 学校等を中途退学し、又は就職先が決まらないまま卒業したこと等を理由として、学校等から社会・職業生活への円滑な移行ができなかった者等については、個々の事情に配慮しつつ、希望に応じた就職支援等を行っていくことが必要である。 中途退学者の中には安定的な就労に困難を抱える者が多い状況に鑑み、就職を希望する中途退学者に対しては、中途退学後に各支援機関の支援の谷間に陥ることのないよう、中途退学に際して、学校等、公共職業安定所、地域若者サポートステーション等が連携して、就職支援機関、職業訓練機関等に関する情報を提供し、継続的に支援を行っていく。 また、就職先が決まらないまま卒業した者については、卒業から就職までの期間が短いほど正規雇用労働者として就職する割合が高まる傾向がみられるなど、早期の就職実現が重要となっていることから、学校等、新卒応援ハローワーク等が連携し、公共職業安定所における個別支援や面接会の集中的な開催等により、卒業直後の支援の充実を図っていく。

**4 フリーターを含む非正規雇用で働く青少年の正規雇用化に向けた支援 非正規雇用労働者の現状等に関する情報を青少年に提供することも含め、主体的に職業選択やキャリア形成を行えるように支援していく。 不本意ながら非正規雇用で働いている青少年も多いことを踏まえ、わかものハローワーク等において、個々のニーズや課題に応じて、的確な就職支援を行うためのキャリアコンサルティング、就職活動の方法に関する助言・指導のほか、職業相談・職業紹介、職場定着、適切な職業訓練への誘導等の支援を行い、正規雇用への移行を促進していく。 また、地域のニーズに応じた多様な就職支援メニューをワンストップで提供する取組(ジョブカフェ)など、都道府県等が中心となって、地域の関係機関との連携の下で青少年が利用しやすいサービスの提供を推進していくことが期待される。 事業主に対しては、トライアル雇用、雇用型訓練、企業内での正規雇用への転換の取組等の青少年の正規雇用化に係る積極的な取組を促していく。

**5 企業における青少年の活躍促進に向けた取組に対する支援

***⑴ 青少年の雇用管理の改善に向けた支援 青少年の適切なキャリア形成の実現のためには、早期離職の防止の観点から入口段階でのマッチングの向上のための取組に加え、青少年の能力や経験に応じた適切な待遇を確保するなど、企業内での適切な雇用管理を促進することが課題となっている。 また、青少年にとって魅力のある職場となるよう、学校卒業見込者等募集(法第13条第1項に規定する学校卒業見込者等募集をいう。)及び学校卒業見込者等求人に当たって提供する青少年雇用情報の内容の充実やユースエール認定制度に係る認定の取得に向け、各企業において自主的に雇用管理の改善が図られることが期待される。

**⑵ 青少年の採用及び育成に積極的な中小企業の情報発信のための支援 青少年の雇用管理に積極的に取り組みながらも、知名度等の点から青少年の採用に課題を抱える中小企業の情報発信を支援するため、ユースエール認定制度等を推進し、公共職業安定所等において重点的にマッチングを行っていく。

**⑶ 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の改善、多様なニーズに対応した働き方の実現 青少年が働きがいを持ちながら、ライフステージに沿って、希望に応じた働き方を選べるような環境づくりに取り組んでいくことが必要である。 具体的には、時間外・休日労働の削減、年次有給休暇育児休業の取得の促進、自己啓発のための時間の確保への配慮等、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の改善に向けた企業における自主的な取組を促していくとともに、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)のとれた働き方の円滑な導入の促進を図っていく。

6 職業能力の開発及び向上の促進 *⑴ 職業訓練の推進 公共職業訓練として実施している日本版デュアルシステム等の主として青少年を対象とした訓練メニューや、企業内での実習と教育訓練機関等での座学等を組み合わせて実施する雇用型訓練を引き続き推進する。また、産業界や地域のニーズを踏まえて産学官による地域コンソーシアムを構築し、就職の可能性をより高めるための職業訓練コースの開発・検証を行い、不安定な就労を繰り返す青少年の安定的な就職の実現等にも活用する。 また、離職後、相当な期間が経過した青少年や一度も就労したことのない青少年等雇用保険を受給できない青少年に対しては、求職者支援訓練により早期の就業に向け引き続き支援する。 職業訓練の実施に当たっては、対象となる青少年が職業経験の不足等により、職業能力が十分に形成されていない現状にあることに鑑み、訓練の受講前にキャリアコンサルティングを行うことにより、職業能力開発の課題や目標を明確にした上で適切な訓練へ誘導することが重要である。また、訓練中についても、コミュニケーション能力の不足、人間関係への不安、仕事への理解不足等、最近の青少年の特徴や抱える課題等を踏まえ、社会人・職業人として必要な基礎的能力の習得や職業意識の醸成を図りつつ、きめ細かな職業指導等を併せて行う。 さらに、企業内の青少年の育成については、景気の動向、企業の業績等に関わらず、事業主が中長期的な視点で人材への投資を行うことができるよう、引き続き、助成金、認定職業訓練制度等により必要な支援等を行う。

***⑵ 職業能力検定の活用の促進 職業に関する知識や職歴がない青少年にとって、技能検定を中心とした職業能力検定は、目指すべき職業能力開発の明確な指標となるものであり、また、いわゆるキャリアラダー(職務やこれに応じた職業能力をレベルごとに応じて階層化することにより、労働者がはしごを昇るように着実に職業能力を高め、キャリアの向上を図る道筋としての役割を果たすものをいう。)としての機能も有する。 また、青少年の職業能力の見える化を進めることは、青少年の実践的な職業能力が適正かつ客観的に評価されることにつながり、円滑なマッチングに資するものである。 このため、技能検定制度について、青少年のモチベーションの向上やキャリアアップに資するよう、青少年を主な対象とした技能検定3級の対象職種の拡大など、積極的にその設定を進めるとともに、学校教育等との連携を通じた青少年に対する技能検定の積極的な活用促進を図っていく。 また、今後も雇用吸収力の増大が見込まれ、青少年のキャリア形成上の課題がより顕在化している対人サービス分野等に重点を置いて、業界内共通の職業能力を評価する技能検定の職種の整備等を進める。

***⑶ 職業人生を通じたキャリア形成支援 青少年の主体的なキャリア形成を図ることは、職業能力開発に対する意欲を高め、豊かな職業人生をもたらす等の効果がある。このため、青少年自身が将来の経済及び社会を担う者としての自覚を持ち、職業人生を通じてキャリア形成に取り組むことが必要である。 しかしながら、青少年の中には、職業経験が少ないなど、独力でキャリア形成を図ることが困難な者も少なからず存在する。こうした者のキャリア形成を支援するため、入職後早期のうちから企業内外を問わず必要な時にキャリアコンサルティングを受けられるよう、キャリア形成サポートセンターやオンラインを活用し、キャリアコンサルティングをより身近に受けられる環境の整備に取り組む。 また、青少年のキャリアプランの作成及びこれに基づく職業能力開発の支援を行うため、職業人生の節目において定期的にキャリアコンサルティングを受ける機会を企業内に設けるセルフ・キャリアドックの導入並びにキャリア・プランニング及び職業能力証明のツールであるジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングを推進する。 さらに、青少年の主体的なキャリア形成の意識の醸成を図るとともに、これら一連の取組の普及を進めることが重要である。これらの取組を通じて、青少年自身が仕事へのやりがいをより感じられるようになることのほか、生産性が向上すること、職場定着が図られること等が期待される。 これらは、企業にとっても有益であることから、企業自身がキャリアコンサルタントを配置するなどにより青少年の自律的なキャリア形成ができる環境を整えることが重要である。

**7 ニート等の青少年に対する職業生活における自立促進のための支援 将来の労働力を確保する等の観点から、就業、通学及び職業訓練の受講のいずれもしていない青少年であって、職業生活を円滑に営む上での困難を抱えるニート等と呼ばれる青少年に対し、その特性に応じた適職の選択等の職業生活に関する相談の機会の提供、職業生活における自立を支援するための施設の整備等の必要な質の高い支援を継続的に提供する。 具体的には、ニート等の青少年の支援の拠点である地域若者サポートステーションにおいて、公共職業安定所地方公共団体等の関係機関との連携を通じた情報提供等や職場体験の充実を図ることにより就職に向けた支援を行うとともに、就職した者に対する職場定着支援等を実施する。 また、各地域若者サポートステーションが有するノウハウや経験の普及、研修体制の整備、好事例の周知、支援を行う専門人材の育成等に努める。

**8 地域における青少年の活躍促進 青少年が希望する地域において就職することができるよう、国、地方公共団体、事業主、大学等が連携し、地域の募集・求人情報の収集、提供等の必要な取組を進めることにより、いわゆるUIJターン就職を積極的に支援していく。 なお、支援の際には、地域における良質な雇用機会の確保のほか、青少年自身による起業等も含めた多様な選択肢があり得ることに留意することが必要である。

**9 青少年福祉施策の実施 青少年が自律的に職業生活設計を行い、仕事に対する意識改革に取り組み、充実した職業生活を送ることができるよう地域の関係者の意識啓発等を行っていくことは、引き続き重要である。 こうしたことから、地方公共団体、勤労青少年福祉に係る支援機関等が中心となって、地域の実情を踏まえた青少年の福祉の増進に係る事業を実施していくことが期待される。

フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドラインが公表されました!!

フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドラインが公表されました!!

フリーランスについては、成長戦略実行計画(令和2年7月17日閣議決定)において、フリーランスとして安心して働ける環境を整備するため、事業者とフリーランスとの取引について、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律下請代金支払遅延等防止法、労働関係法令の適用関係を明らかにするとともに、これらの法令に基づく問題行為を明確化するため、実効性があり、一覧性のあるガイドラインを策定することとされています。
これを踏まえ、、内閣官房公正取引委員会中小企業庁厚生労働省の連名で同ガイドラインが策定されました。

概要を抜粋しました。
詳細はリンクをご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000759477.pdf

策定の目的

事業者とフリーランスとの取引について、独占禁止法下請代金支払遅延等防止法、労働関係法令の適用関係を明らかにするとともに、これらの法令に基づく問題行為を明確化するため、実効性があり、一覧性のあるガイドラインについて、内閣官房公正取引委員会中小企業庁厚生労働省連名で策定し、フリーランスとして安心して働ける環境を整備。

第1 フリーランスの定義

○本ガイドラインにおける「フリーランス」とは、実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者。

第2 独禁法、下請法、労働関係法令との適用関係

独占禁止法は、取引の発注者が事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることからら、事業者とフリーランス全般との取引に適用。
○下請法は、取引の発注者が資本金1000万円超の法人の事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることから、一定の事業者とフリーランス全般との取引に適用。
〇これらの法律の適用に加えて、フリーランスとして業務を行っていても、実質的に発注事業者の指揮命令を受けていると判断される場合など、現行法上「雇用」に該当する場合には、労働関係法令が適用。

第3 フリーランスと取引を行う事業者が遵守すべき事項

1.フリーランスとの取引に係る優越的地位の濫用規制についての基本的な考え方

〇自己の取引上の地位がフリーランスに優越している発注事業者が、フリーランスに対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、優越的地位の濫用として、独占禁止法により規制される。

2.発注時の取引条件を明確にする書面の交付に係る基本的な考え方

〇優越的地位の濫用となる行為を誘発する原因とも考えられ、発注事業者が発注時の取引条件を明確にする書面をフリーランスに交付しない場合は、独占禁止法上不適切。
〇下請法の規制の対象となる場合で、発注事業者が書面をフリーランスに交付しない場合は、下請法第3条で定める書面の交付義務違反となる。

3.独占禁止法(優越的地位の濫用)・下請法上問題となる行為類型

〇優越的地位の濫用につながり得る行為について、行為類型ごとに下請法の規制の対象となり得るものも含め、その考え方を明確化。
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第4 仲介事業者が遵守すべき事項

1.仲介事業者とフリーランスとの取引について

○仲介事業者は、フリーランスが役務等を提供する機会を獲得・拡大することや、発注事業者や消費者が、フリーランスから良質廉価な役務等を受けることに貢献。
○一方で、今後フリーランスと仲介事業者との取引の増加により、仲介事業者が取引上優越した地位に立ち、フリーランスに対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合も考えられる。

2.規約の変更による取引条件の一方的な変更

〇規約の変更を一方的に行うことにより、自己の取引上の地位がフリーランスに優越している仲介事業者が、フリーランスに対して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなるときは、優越的地位の濫用として問題となる。

第5 現行法上「雇用」に該当する場合の判断基準

1.フリーランスに労働関係法令が適用される場合

フリーランスとして請負契約や準委任契約などの契約で仕事をする場合であっても、労働関係法令の適用に当たっては、契約の形式や名称にかかわらず、個々の働き方の実態に基づいて、「労働者」かどうか判断。
労基法上の「労働者」と認められる場合は、労働基準法の労働時間や賃金等に関するルールが適用される。
〇労組法上の「労働者」と認められる場合は、団体交渉を正当な理由なく拒んだりすること等が禁止される。

2・3 労働基準法における「労働者性」の判断基準とその具体的な考え方

(1)「使用従属性」に関する判断基準
① 「指揮監督下の労働」であること(労働が他人の指揮監督下において行われているか)
② 「報酬の労務対償性」があること(報酬が「指揮監督下における労働」の対価として支払われているか)

(2)「労働者性」の判断を補強する要素
① 事業者性の有無(仕事に必要な機械等を発注者等と受注者のどちらが負担しているか等)
② 専属性の程度(特定の発注者等への専属性が高いと認められるか。)

4・5労働組合法における「労働者性」の判断要素とその具体的な考え方

(1)基本的判断要素
①事業組織への組み入れ(業務の遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に確保されているか)
②契約内容の一方的・定型的決定(労働条件や労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定しているか)
③報酬の労務対価性(労務供給者の報酬が労務供給に対する対価などとしての性格を有するか)
(2)補充的判断要素
④業務の依頼に応ずべき関係(相手方からの個々の業務の依頼に対し、基本的に応ずべき関係にあるか)
⑤広い意味での指揮監督下の労務提供(労務供給者が、相手方の指揮監督の下に労務の提供を行っている
と広い意味で解することができるか等)

(3)消極的判断要素(この要素が肯定される場合には、労働組合法上の労働者性が弱まる場合がある)
⑥顕著な事業者性(恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し自らリスクを引き受けて事業を行う者か)

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新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の申請期限が延長されました!!

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の申請期限が延長されました!!

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(以下「休業支援金」という。)について、中小企業のシフト制労働者等の令和2年4月から9月までの休業に関する申請期限が、令和3年3月末から下記のとおり延長されました。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17588.html


余談ですが、雇用調整助成金を申請する際に、シフト制の従業員の所定労働時間をどう定めるか少し悩みましたが、次のような2通りの方法を取り、いずれも問題なく受給できています。

・休業開始直前の賃金計算期間三期について、シフトの出勤日の平均を所定労働日数とし、その旨を記載した疎明書を添付して申請

・休業中についても、平常どおり営業されたものと仮定してシフトを作成してもらい、シフトに定められた出勤日を所定労働日数として申請
※直近3か月ぐらいの賃金と比較して、不相応に出勤日が多く設定されていないかは確認しました。

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①令和2年10月30日公表のリーフレットの対象となる方(下記のいずれかに該当する方)
・いわゆるシフト制、日々雇用、登録型派遣で働かれている方
・ショッピングセンターの休館に起因するような外的な事業運営環境の変化に起因する休業の場合
・上記以外の方で労働条件通知書等により所定労働日が明確(「週〇日勤務」など)であり、かつ、労働者の都合による休業ではないにもかかわらず、労使で休業の事実について認識が一致しない場合
②労働契約上、労働日が明確でない方(シフト制、日々雇用、登録型派遣)

なお、本支援金・給付金は休業手当をもらえなかった労働者が受給できるものです。休業手当を支給されている場合は、受給対象となりませんのでご注意ください。

その他の詳しい情報については、厚生労働省の休業支援金のHPをご覧下さい。
(参考)休業支援金・給付金HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html